再びシノミヤさんの証言 1
しかし、彼女が強引に引っ張り出してくれた車という情報は役に立つでしょう。
なにせ殺人犯の動機がひき逃げだとすれば、犯人は車を使えたことになります。もちろん、そうなれば先ほど蛇足だと思われていた証言に意味が出てくるはず。
「シノミヤさんに聞けばいいんじゃないかな。もし殺人犯がひき逃げ犯と同じなら、車を使って僕の家に来てたはずだからね」
「そうです。それです! それで行きましょう! 裁判長!」
「いいよ~」
とても軽いノリでした。提案した立場として気遣うのもおかしな話かもしれませんが、シノミヤさんは先ほど発光して自滅したばかり。なんだか申し訳ないです。
ノドカさんはまったく気にすることなく「武笛!」と筋肉検事の名前を呼びました。
「証人を連れてきなさい。寝ていても叩き起こすように」
「ハッ!」
出来れば二度と見たくなかった白タイツの筋肉検事が、ニョキッ、と姿を現します。
彼は一歩ごとに筋肉を打ち震わせて惜しみなく周囲に見せ付けていました。同じ男としては気持ち悪い存在ではありますが、何となく触ってみたく……いえ、気のせいということにしておきましょう。
ムテキ検事が法廷を出て行ってから間もなくして戻ってきます。
傍聴人席のほうを振り返ると、すっかり気力をなくしたシノミヤさんが連れてこられていました。正確にいえば後ろ襟首をつかまれて持ち込まれたというべきでしょう。
「うぅ……あっしのことは放っておいてくだされ。今さら何を言っても信じてもらえんのなら黙っていた方がいいさ」
〔つづく〕
登場人物
遠崎悠一 主人公
藤堂奈々 ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女
裁判長 十代で裁判官になった天才少年
武笛鉄人 ムテキ検事、マッスルを連呼し筋肉を強調
藤堂和花 ノドカ検事。藤堂姉妹の長女
藤堂音子 ネコ刑事。藤堂姉妹の次女
四ノ宮五郎 シノミヤ、ムテキ検事の連れてきた証人
遠崎雄太 主人公の父親
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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