遠崎雄太の証言 21
「根拠は?」
「証人に加えて近隣住民の方も犯人の悲鳴を聞いています。ただ落ちただけならそれほど大声で叫ばずに済ませられたでしょう」
「そう。だから足を怪我してない可能性は否定できないわ。そこにいる被告も足を怪我してないもの」
ノドカさんの発言は弱々しく牽制する力がなくなっていました。
どうやら彼女は徹底的に攻める分だけ強い反面、逆に守りは弱いようです。
それにしても、ナナさんの推理は少し強引すぎるような気もしました。
「でもさ、さすがに見間違えないと思うけどね」
「逆に考えてみましょう。それさえも見間違う暗さだからこそ、犯人が悠一さんだったのか別の誰かだったのか判別がつかなかったのです」
一瞬だけベテラン弁護士のオーラが見えます。
もはや最初の頼りない初心者弁護士とは別人だと思うべきでしょう。きっと彼女も自分の中で自信を身につけたのかもしれません。
〔つづく〕
登場人物
遠崎悠一 主人公
藤堂奈々 ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女
裁判長 十代で裁判官になった天才少年
武笛鉄人 ムテキ検事、マッスルを連呼し筋肉を強調
藤堂和花 ノドカ検事。藤堂姉妹の長女
藤堂音子 ネコ刑事。藤堂姉妹の次女
遠崎雄太 主人公の父親
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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