遠崎雄太の証言 18
僕の父が証言を始めます。
「ハオリは悠一が出かけている間に模様替えするつもりだったらしいぞ!
注文しておいた荷物が届くのは修学旅行の前日だったから、悠一も見ているはずだな! 買ったのはカーテンとベッドの布団一式と天井の電気と、それと頼りないテーブルだ!」
初耳の情報です。出かける前も聞いていなかったですし、前日だってそれらしい荷物を見かけていません。
父が、悠一も見ているはずだな、と強調したものですから嫌でも法廷内の視線を浴びることになりました。
ナナさんは父でなく僕に質問してきます。
「悠一さん。今の話ですが、本当ですか?」
「ごめん。見てないよ。僕が帰ってきたときにはいつもどおりだったけど」
「ハオリは片付け上手だからな! 見てなくても不思議じゃないぞ!」
それ以前に憶測で物をいうのは止めてほしいです。この瞬間ほど証人の発言が当てにならないと思ったことはありません。
弁護士の従姉は父にたずねます。
「頼りないテーブルとはどういったものでしょうか?」
「いい質問だ! カタログで見ただけだが、砂時計みたいな形をしてたな! ちょうど真ん中に丸いヤツがついてたぞ!」
次の瞬間、検察側席の方から「ふおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」と掃除機のような声が響いてきました。そしてノドカさんの隣に筋肉人間が、ニョキ、と現れて手に持っていたものを突き出してきます。
〔つづく〕
登場人物
遠崎悠一 主人公
藤堂奈々 ナナさん。弁護士藤堂姉妹の三女
裁判長 十代で裁判官になった天才少年
武笛鉄人 ムテキ検事、マッスルを連呼し筋肉を強調
藤堂和花 ノドカ検事。藤堂姉妹の長女
藤堂音子 ネコ刑事。藤堂姉妹の次女
遠崎雄太 主人公の父親
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編集掲載 緋鷹由理(ひたかゆり)
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