くさまです。

 

横浜市会の水道・交通委員会で熊本・福岡を視察しました。

 

 

 

熊本の水道は全て地下水なので浄水場いらず。塩素しか取水から使っていないそうで、阿蘇山から20年間かけて流れ出てくる水はとっても美味しく、世界一の地下水都市を標榜するだけあります。地下水のために震災時は水が濁ってしまいましたが、熊本の水文化を感じました。

 

さて、この1週間くらい水道界が大きく動いています。既に日経新聞の1面に、疲弊している地方の水道事業体のために水道法改正で民間参入をとか、今日の日経は、値上げしてインフラ守れみたいな記事まで出ていました。

 

水道の改修費用、料金に上乗せを 厚労省報告書案 

2016/10/26 日経新聞

 

厚生労働省の専門委員会は26日、老朽化が進む全国の水道の改修に向け、施設の更新費用を料金に上乗せすることなどを求めた報告書案をまとめた。水道料金の値上げはほとんど進まず、更新費用を賄えていない。年内に報告書を決定し、水道法を改正する。

 

2010年から14年にかけ、水道料金を上げた事業者は全体の4%にとどまる。報告書案では、3年から5年の間隔で必要となる更新費用を踏まえつつ、定期的に水道料金を見直すよう求めた。

 

他にも水道施設の情報を記した台帳の整備を事業者に義務付けたり、災害時に地方自治体や民間企業などが相互に協力したりすることも明記した。<<

 

その報告書案はこちらですが、国は全国で起こっている水道クライシス(インフラ老朽化、職員不足、料金体系の崩壊)を、地方の自助努力と民間参入でどうにかしようとしています。国全体の危機意識が全然感じられません。これはまさに大切なインフラである水道を厚労省の1つの課でやろうとする制度的な問題も含まれています。

 

また、広域連携で都道府県に大きな役割を期待していますが、都道府県がしっかり機能していれば、わざわざ株式会社横浜ウォーターが岩手や宮城や福島で活動していません。今回の報告書は水道インフラを支えるうえでの大都市の役割が欠如しています。

 

今段階で国は頼りになりません。日本の宝であり、今後は世界の貴重な財産になる水、それを支える水道インフラを下手に市場開放して外資に握られては国益に反します。ここで今、大変重要なのは近代水道発祥の地であり、基礎自治体として最大の水道事業体である横浜市の取り組みです。日本の水道を守る一石を投じられるのは横浜水道しかないと僕は考えています。

 

横浜水道も全国の水道事業体同様、様々な理由で料金改定を考えていますが、ここで横浜水道があらゆる努力をして安易に料金値上げをせず、また、地元中小企業と連携しながらオール横浜の官民一体で横浜水道を維持し株式会社横浜ウォーターを機動的に使っていけば、水を守り、日本を守り、市民を守ることができるベストプラクティスを横浜モデルとして発信できると思います。

 

こういうピンチのときこそ、日本の水道界にイノベーションが起こることを期待しています。それは水道市場を安易に外資に開放するのでなく、また安易に値上げをするのではなく、まさに内発的な改革でまだまだ横浜は生きられると思います。前回視察した岩手県の矢巾町などはまさにこの内発的な改革に取り組んでいる小規模自治体です。

 

僕は資金調達の面からも、その問題提起をしていますが、水道局内部で動かない要因になっている人たちには、今の世の中の流れはもっと激しいことを自覚してほしいと思います。

 

以下は一昨年の予算委員会の議論です。

 

◆(草間委員)

水道局の資金調達なのですけれども、先ほどのいただいた答弁の中でも、水道料金収入が減少する一方で、老朽化した施設の更新に多額の費用が必要なことが確認できました。水道料金を値上げする対応の前に、何回も言いますけれども、さまざまな工夫と努力をすべきだと考えます。それでこそ市民生活を守る公営企業だと私は思っております。

 

その一つとして、水道事業への資金調達についても、現存の手法に限らず、さまざまな手法を検討すべきと、これまでも繰り返し私は述べてまいりました。最初にこれを見返してみると、質問したのが平成25年10月なのです。局長から検討しますという答弁をいただいております。1年半たちました。そこで、資金調達手法の検討状況について局長に伺います。

 

◎(土井水道局長) 

資金調達のあり方として、従来からの資金調達手法でございます企業債につきましては、借入先や借り入れ条件などにさまざまなメニューがあり、より安全でコストのかからない最適な活用を検討することが必要です。そこで、現在、外部有識者の御意見も参考に、銀行等引受債等の民間債の活用の拡大や、将来の償還額を平準化させるような借り入れ条件の設定などを検討しております。また、企業債以外の資金調達手法につきましても、現在、民間団体から水道局パートナーシップデスクに提案があり、活用の可能性を検討しているところでございます。

 

◆(草間委員) 

民間団体からパートナーシップに提案がありというところで、そこは恐らくどのぐらい調整しているのかというのが、非常に私としては疑問なのです。企業債の話が皆さんのこれからのメーンだと思うのです。

 

私が述べてきたのは、資金調達方法の改善ということも出てきたのですけれども、もちろん企業債をこれからどうやって借り入れていくかという工夫も必要なのですけれども、外部からの資金調達についても私は繰り返し述べてきたと思いますので、これは、局長は経営者としてしっかり検討していただきたいと思うのです。

 

恐らく御存じだと思うのですけれども、先日、横浜市中区とみなとみらい線で結ばれていて中区と友好交流提携も締結した埼玉県の飯能市という人口8万人ぐらいの小さい市があるのですけれども、ここが水道事業に民間資金を活用した財源調達手法を導入する方針を決定したということが新聞報道されました。

 

これは何かというと、人口8万人の町で、特別目的会社が金融機関から調達した資金をもとに元本返済不要で提供し、市は公営企業債を発行する際の利率1.5%に1%上乗せした額の利払いを特別目的会社、SPCに無期限で続ける仕組みで、飯能市の試算では、公営企業債を発行して24億円を調達し20年間で償還する場合、元利払いに約28億円が必要になる。ただ、この新たな仕組みによると、同じ期間にこのSPCに支払う額は約13億円のみで、16億円少なくて済むということに見た目上はなっております。

 

これは、人口8万人の飯能市で何でこんなことをやるのかということは、基本的には今までどおりやっていたら水道経営がもたなくて値上げになってしまうという危機感を市長と議会が共有して、この取り組みの導入を決めたわけなのです。これは結構せっぱ詰まった感じがあって、これをやっているのだと思います。これは市長も議会も一緒になってやりましたから、非常に大きなことだと思うのです。この民間団体が提案した従前にない新しい資金調達方法を飯能市の市長や議会、行政と一体で検討を重ねたということで、本市においても参考にしたり見習ったりすることがあると思います、あそこはみなとみらい線の終着駅ですから。

 

そこで、私は、本市でも飯能市の政策を研究すべきと考えますけれども、水道局長の見解を伺いたいと思います。

 

◎(土井水道局長) 

今御紹介のありました飯能市では、水道施設整備の財源の半分程度に信託銀行等を介して地元の金融機関などから調達した資金を活用する方針を決めたと聞いております。現在、その内容について飯能市や国から情報収集を行っていますが、詳細については、まだ未定の部分も多いと聞いております。今後も引き続き情報収集に努めるとともに、従来の企業債による調達との違いや、導入に当たってのメリット・デメリットなどについて研究してまいりたいと考えております。

 

◆(草間委員) 

財務の方と話すと人口の問題が議論になるのです。横浜市は大丈夫と日本全国の水道事業体は思っていると思います。なのですけれども、人口8万人の都市でこれだけ、議会も市長も一体となって危機感を持って、値上げをしないために努力をしているのです。横浜市は一体どうなのかというところを、公営企業としての水道局として本当に真剣に考えてほしいと思うのです。

 

民営化という手法もあると思うのです。だって、大阪だってそういうふうにやっているではないですか。なのですけれども、横浜市は公営企業としてやっていくのだと。そのために値上げをしないのだと。もしかしたら値上げはしてしまうかもしれないけれども、(笑声)ただ、これだけの努力をしたのだという危機感が横浜市の水道局にはまだ足りないと僕は思うのです。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)

 

これはしっかりやっていただいて、研究して、さんざん努力したのだけれどもやはりだめでしたというところまでやっておかないと僕はだめだと思います。さっきのビジョンの中には全くそこら辺が触れられていなかったので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。(笑)