くさまです。





僕が早稲田大学マニフェスト研究所
に23歳で就職して初めての仕事が、全国で唯一の地方議会の政策コンテストであるマニフェスト大賞
の立ち上げでした。





ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟の役員の皆さんとともに、お金がない中で、志だけで突き進んだプロジェクトでした。





国会と違い、どんなに活動をしても、不祥事やお金のことしか新聞やニュースでしか報道されない地方議会の活動実績を全国から募集し、しっかりとした審査委員が審査し、表彰し、発表することで、地方政治で地道な活動を積む人々に名誉を与え、「地方も地味だけどこれだけ頑張っているんだ!」という意欲を皆さんにもってもらうことで、善政競争を促していく。





8年前の第1回目の表彰式を、当時から改革最前線にいた北海道栗山町議会、岩手県議会などを迎え、多くのメディアに集まっていただき行ったことを、鮮明に僕は覚えています。




その会場が、「毎日ホール」。毎日新聞社の地下一階だったんです。







都筑のくまのルーキー日記


(第1回マニフェスト大賞授賞式 @毎日ホール)



都筑のくまのルーキー日記


(第3回授賞式 @六本木アカデミーヒルズ)




毎日新聞は、どうなるか分からないマニフェスト大賞を、第1回目から応援してくれました。





そもそもの経緯が、不祥事やお金や定数の問題ではなく、地味でもすぐれた地道な政策を新聞で報道する。というものでしたので、第1回から8年間、毎日新聞は、全国版の特集面、そして地域版で、それぞれ受賞者を追って報道してくれていました。





受賞者には、本当に小さな町の議員や、人口5000人の街の議会も入っています。彼らにとってみれば、全国紙に地道な活動が出ることは、どれだけ励まされたかことかわかりません。





マニフェスト大賞の審査委員を7回連続で最初から務めていただいている千葉茂明さんも、インタビューで「マニフェスト大賞が始まって7年目、印象は。」という問いに対し





>>これまでで印象的だったのは、第2回大会でグランプリを受賞した松沢成文・前神奈川県知事の「表彰状を渡すことは多いけど、自分が表彰されるのは初めて」という言葉。首長でもそうなのかと驚いた。





議員の場合は恐らく、このような思いはさらに強いのではないか。一般に議会や議員は、マスコミ等から批判されることの方が圧倒的に多い。しかし、選挙で住民の負託を得て政治家となっているのだから、真っ当かつ先進的な取り組みは正当に評価されないといけない





それが政治家の励みになり、さらなる進化につながる。その良循環がマニフェスト大賞を通じて、とくに議会では起き始めていると感じる。<<





と答えられていますが、この評価の報道は、そんな簡単なものではなく、多くのリスクも抱えるものですが、それでも毎日新聞は受賞者を報道し続けてくれました。




だからこそ、マニフェスト大賞がどれだけ拡大していっても、僕らは毎日新聞とのパートナーを崩しませんでした。たとえ1社に偏ってるとほかの新聞社から言われても、最初の志を理解し、応援してくれた毎日新聞の報道姿勢があればこそ、この信頼関係を本当に大事にさせていただいたつもりです。





ところが、8月7日の毎日新聞夕刊一面に、『横浜市議会:「費用弁償」復活へ 政令市初、全国の流れと逆行』という記事が掲載されました。僕らマニフェスト大賞の内容でも載らなかった1面にです。





◆横浜市議会:「費用弁償」復活へ


毎日新聞 2013年08月07日 15時00分




横浜市議会で、本会議や委員会に出席するたびに交通費などとして議員に支給する「費用弁償」を復活させる動きが進んでいる。全国の地方議会は議会改革や公費削減の一環として相次いで費用弁償10件を廃止しており、復活すれば政令市議会で初のケース。早ければ9月に条例案が提出され賛成多数で可決される見通しだ。復活賛成派の市議らは「交通費がかかるのに実態と合わない」と主張しているが、有識者からは「必要性は乏しく、議会への不信感を募らせるだけだ」との批判が出ている。




◇政令市初、全国の流れと逆行




横浜市議会は2006年に費用弁償を日額1万2000円から1万円に減額し、07年2月の市議会定例会で「社会情勢や市の行財政改革への取り組みなどを勘案する」と賛成多数で廃止を決めた。




ところが今年に入り議会改革について話し合う特別委員会で、費用弁償の復活が提案された。共産などを除いて各会派が賛同し、多数を占める自民、公明、民主の3会派は、居住する区と市庁舎の距離に応じて出席1回あたり▽1000円▽2000円▽3000円--とする定額支給を主張。現在、議会運営委員会で対応を検討している。




横浜市議会の定数は86人で大阪市議会と並び全国の市町村で最多。3会派案通りになれば支給総額は年間約1100万円と試算されている。横浜市議の報酬は月額85万7700円でそのほかに1人あたり月額55万円の政務活動費が会派などに支出されている。




だが、廃止からわずか6年での復活には疑問の声も上がる。新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)は「本会議出席など『議員活動』は実質的に年間60日程度。それなのに12カ月分の報酬とボーナス、政務活動費まで支払われ、横浜市はいずれも高額。復活すれば議員への市民の不信感は募るばかりだ」と指摘する。【高木香奈】





この記事が、地方面に出るのならまだ分かります。





僕らも、いくらマニフェスト大賞の実行委員長が横浜市議であろうが、僕がこの委員会にいようが、マニフェスト大賞を共催しているからと言って、批判の対象から逃れようとは全く思っていませんし、それは大変不健全です。





しかし、毎日新聞はこの記事を全国の1面に出しました。





端的に言えば、「結局毎日新聞も、地方議会は金の話しか1面に出さないのか」という無念さがあります。





僕が本当に残念だったのは、この記事を書いた記者の方の問題ではなく、この記事を1面に出す毎日新聞の報道姿勢です。





この記事には、明らかに取材当初からの偏りがあります





まず、取材先はどうやら共産党だけのようです。





取材されたリソースの議員もFBで告白していますが、共産党の皆さんは、費用弁償の復活反対をキャンペーン化しており、わざわざ記事の掲載と合わせて自分たちの動画も拡散し始めました。





「共産などを除いて各会派が賛同し、」という書き方も、いわゆる「市民派」として共産党と同じような主張をしていた方にとっては心外だったのではないでしょうか。





勿論、議会局にも、そして委員会で賛成した僕にも取材は来ていません。





しかも、この記事を書いた記者の方、委員会そのものを、議論の現場を取材していませんよね。





僕は委員なのでずっと新聞社さんがどこが来たかは分かるのですが、毎日新聞はそもそも記者の数が圧倒的に少ないので、議会の議論もフォローできていないというか、取材していないですよね。





同じくずっと取材していた新聞各社が、この内容をニュースとして書かなかった理由、わかりますか???





それは、市議会がある中区の議員と、僕ら都筑区や青葉区の議員。同じ「声を届ける」という議会活動の中で、声を届けるコスト(交通費)に差があるのは、議会制民主主義の制度の中でおかしいじゃないか。こういう議論があり、というかさせていただき、単なる「政治と金の話」ではなかったからです。





各社、復活の議論の瞬間、書いたほうが面白い、うける!と思っただろうに、理性で止めたんだと思います。





ちなみに、ここでは多くの議論がありましたが、お金の話ということならば、結果、僕らは自民党提案で月額10万円の議員報酬削減条例を提案、可決しました





ただ、報酬は月10万減らしても、1000円単位の交通費はこだわる必要があると僕は確信しています。





これは、だれが議員になろうが、18区それぞれ区民の声を市議会に届けるコストをイーブンにすることが、議会が市民の代表機関であることを象徴していることにつながるからだと思います。





各社が理性で止めた記事を、毎日新聞はあろうことに取材もろくにせずに、うける!と思って書いたのでしょう。





記者が新藤先生のコメントを引用することにも残念です。僕らもこの世界にいましたから、「この先生ならこの発言をする」というのはすぐにわかります。





想像ですが、この記者さんはリソースに「こういう意見を支持する有識者はだれか?」と聞いたはずです。もしくは過去のデータベースで発言を調べています。新藤先生なら、「復活すれば議員への市民の不信感は募るばかりだ」と答えてくれると僕も思います。なぜなら、僕も新藤先生の教科書をたくさん読んで学生の頃勉強していました。





ただ新藤先生、「本会議出席など『議員活動』は実質的に年間60日程度」って、僕は8月段階ですでに100回以上登庁しています。議員立法をやれば、先生の言われる本来の議会活動をやれば、そういう実態にはならないことを先生もお分かりのはずです。





要は、今回の記事は共産党の機関紙「赤旗」と同じレベルの記事なんです





赤旗でやっていただくぶんには構いません。僕は言論は多様なほうがこの国が豊かになると信じています。





ただ、それをマニフェスト大賞を共催している毎日新聞が、それも全国版の1面で報道するのは、本当に残念で仕方がありません。





ちなみに毎日新聞は、僕らが議員立法した災害時自助共助推進条例は何も書いていませんし、僕らが報酬10万円削減しても、地方面で『地方公務員給与:横浜・相模原両市、来月から来年3月まで削減 国の要請受け /神奈川』と触れただけです。





本当に悔しいです。夕刊が出た日の夜は、悔しくて涙が出ました。それほど本気でマニフェスト大賞を大切にしていました。





僕はずっとかかわってきたマニフェスト大賞の実行委員を辞めます。全体にとっては特に影響ありませんし、なんだおまえと言われると思いますが、僕なりのけじめのつけ方です。





毎日新聞で支えてくれたKさん、ごめんなさい。でも、残念です。