くさまです。


3.11から2年が経とうとしています。


被災地では、上下水のインフラ整備が復興の大前提となりますが


実は、今、上下水道の職員が足りません。


実は、震災が起きなくても


団塊世代の大量離職や、自治体財政の悪化により


全国の地方(田舎)の自治体では、職員不足が深刻化しています。


調べによると、水道施設の更新に関して、既に財政不足、人員不足が顕在化している国内の事業者は全体の4割近くに及びます。


今後10年間を対象にすると、実に9割以上の自治体の上下水道で財政不足が問題になり、


8割弱で人員不足が問題になる見通しで、


今後、埋まっている菅の耐震化やメンテナンス時代を迎えるのに、


大量更新に備えて万全の準備が出来ている事業者は限られています。


実は、日本では上下水道は自治体が実施することは当たり前なのですが(法律だから)


海外、特に先進国では民間が主流でもあります


イギリスでは、1989年にサッチャー政権の下、上下水道が民営化され、テムズウォーター株式会社となり、世界第3位の水道企業となっています。


テムズは2000年にドイツのエネルギー会社に買収され、2006年にはオーストラリアの銀行傘下のケンブルウォーターに買収されて今に至っています。


また、アメリカでは、自治体にもよりますが、1200万人を対象とするアメリカンウォーターカンパニーや、300万人を対象とするアクアアメリカなど、


ヨーロッパの水メジャー会社をはじめ、上場10社が水道事業を担っています。


アメリカでは、水道事業を民営化することによって、運営収益に占める人件費が公共と比べ3分の1となる調査結果も出ています。


EUでは民営化が主流になっていますが、これはインドネシアをはじめとするアジア、アルゼンチンなどの南米にも広がっています。


じゃあ、日本でも自治体に職員がいなければ民営化すればいいじゃないかという話になります。


実際に、国内では既に80年間で水道施設50ヶ所以上の受託実績を持つ水ing(株)や、


水道事業の維持管理委託業務を約40年間にわたり行っている月島機械グループ、


大手の日立製作所や


従業員が2000名近くいて、国内最新最大規模「川井浄水場再整備事業」の事業契約を横浜と結んだメタウォーター株式会社などの民間会社が多数いますが


僕は、国内企業だろうが海外企業だろうが、日本国内の水道事業を完全民営化することには反対です。


「民営化」というと聞こえはいいし、


効率性を追求する民間ノウハウは大いに活用すべきと考えますが、


マネージメントの根幹まで民営化することは、あってはいけません。


アメリカでは、アトランタ、カリフォルニア、フロリダなどで、


フランスではパリで、


民営化による料金の値上げや、サービスの低下などにより民営化したものを公営化に戻す、再公営化が行われています。


10年前には南米のボリビアで水道をロンドンのインターナショナル・ウォーターズ社(IWL)が買収し、35%の水道料金値上げを実施した結果、有名な「コチャバンバ水紛争」が起こり、


不幸にも、6人の死者と175人の負傷者を出しました。


僕は、水の確保は人間の基本的な権利であり、公共性が保証されなければならないと思います。


しかもグローバル化、世界の人口急増など、水の確保が安全保障上も大変重要な課題である今、


水道事業が金儲けの手段になったり、商業的に取引されてはなりません。


だからこそ水は地域社会と地域住民によって守られることが望まれ、


市民は水の保護、確保という上で自治体と同じ重要性を実感し、危機感を持たされなければならない。


と思います。


ただし、重要なのは、だからこそ水の安定的な確保を図るために、自治体は高い公共性と倫理観の下で、あらゆる改善努力をしなければならないということです。  


横浜市水道局が100%出資する横浜ウォーター株式会社 が、


被災地で職員不足に悩む宮城県山元町の上下水道事業のアドバイザーをこれから引き受けます


横浜ウォーターは「自治体の有する水事業のノウハウと民間の技術力や経営力を組み合わせ、被災地の復興に貢献したい」としていますが


技術者不足の地方の水道事業を横浜市の子会社という高い公共性を持った横浜ウォーターが担っていくのは大変重要なことですし、


まさに、職員不足に悩む地方の自治体の課題を解決していくことが、今後の大都市横浜のミッションだと思います。


ニーズを調べてみると、上水と共に、下水整備に関するニーズや課題も多いことがわかります。


実際、山元町をはじめ、被災地の一部では横浜の下水職員が現在も主力となって働いています。


ただ、横浜市職員としての被災地業務、その現場の自治体業務では限界があるため


僕は横浜ウォーターが今後、下水も含んだかたちで国内事業を進めていく必要があると考えます


それを提案、質問し、記事が出ました↓


横浜ウォーターが下水道事業強化へ、副市長が市会答弁/横浜市

2013年3月7日 神奈川新聞


横浜市水道局が100%出資する横浜ウォーターが、2013年度から下水道に関する業務について強化する方針であることが7日、分かった。同日の市会予算第二特別委員会局別審査で、草間剛氏(自民党)の質問に大場茂美副市長が答えた。


市水道局などによると、これまで横浜ウォーターは上水道をメーンに、上下水道事業に関わるアドバイザリー業務や水道技術者研修の受け入れ、浄水施設の運転管理などを行ってきた。13年度からは業界などのニーズも踏まえ、市環境創造局の協力を得て下水道関係の事業にも本格的に乗り出したい考えだという。


市環境創造局は「水道局と連携し、下水道事業に関するノウハウを役立てていきたい」としている。

大場副市長は「国内中小規模の事業体の多くは水道事業のみならず、下水道事業についても技術職の確保や経営基盤の強化など、事業継続に向け課題を抱えている。課題の解決に貢献するのは横浜ウォーターの重要な役割」などと述べた。


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また、横浜ウォーターの役割が肥大化していくほど


公共性が高いゆえに、また天下りが多いゆえに、そのマネジメントが問われてきます。


今のような創設期は大丈夫だと思いますが、これから横浜ウォーターが肥大すれば肥大するほど、中から腐ってくる可能性がありますし、


仕事を請け負った地域の公益を傷つけるようなことがあれば、


それは横浜ウォーターだけでなく横浜の信頼失墜にも関わりますので、


高い公益性の上で、高い透明性、効率性を担保できるようなマネジメントを確立しなければなりません。


海外の水ビジネスが注目されるところですが


僕は横浜ウォーターの主戦場は国内だと考えています。


海外は、なるべく国内の日の丸企業に任せたほうがいい。


採算がとりにくい、国内の中小自治体の水道を守ることこそが横浜のミッションです。