くさまです。


前回のブログ、「朝日新聞の実名報道 」には多くの意見をいただきました。


昨日の朝日新聞の紙面で、朝日は一連のことに対する見解を述べています↓


◆日本人犠牲者名、実名公表に賛否 アルジェリア人質事件
1月25日


朝日新聞社は「実名を報じることで人としての尊厳や存在感が伝わり、報道に真実性を担保する重要な手がかりになる」として、事件報道では容疑者、被害者ともに実名での報道を原則にしている。


ただ、実際に記事にする際には、報じられる人が被る不利益や事件の重大性なども考慮して、最終的に実名にするかを決めている。今回の事件で死亡が確認された10人については、独自取材で判明した氏名を報じることにした。


朝日新聞東京本社の山中季広社会部長は「今回の事件でも実名報道を原則としつつ、現場では遺族や関係者へ配慮して取材を重ねている。読者からの意見や批判にも耳を傾け、『何が起きていたのか』を掘り起こす作業を悩みながら進めている」と話す。 <<<


これに異論はありません。


実名報道の賛否はよくわかります。


ただ、僕の指摘している問題はそこではなく、


取材を受けた被害者親族の本白水さんと取材した朝日新聞との「約束違反」「信義則違反」です。


本白水さんは取材した記者との経過について、詳細に説明しています。


ガジェット通信「アルジェリアテロ被害者実名報道事件・本白水智也さんインタビュー「メディアに情報を渡すと、誰にでも起こる問題」より↓


――大変な中、お時間を頂きましてありがとうございます。まずは、アルジェリアでのテロにご親族が巻き込まれて、ブログを書かれた経緯を教えて下さい。

本白水智也さん(以下本白水):私は事件発生からずっとブログで経緯を公表していたのですが、なぜかというと日揮から出てくる情報が本当に少なくて、一日も早く安否が知りたい気持ちがある中、親族として会社側に情報開示を呼びかけるためだったのですね。(中略)


――メディア側からの連絡はいつ頃からあったのでしょう?

本白水:ブログや『Twitter』経由で、数社の方から「話を聞かせてくれないか」という接触がありました。まだ政府や日揮からの公的な発表の前です。朝日新聞の記者に情報提供する上でお願いしたのは二点。叔父にも家族にも迷惑がかかるので、実名は出さないで欲しいということ。もう一つは記事にする際私に許可を取るということです。

――それは口頭での約束だったということですか。

本白水:そうです。政府や日揮から実名が発表された際に、明らかにするという約束でした。


(中略)


本白水:21日の23時過ぎに日揮から叔父が死亡したという連絡があり、菅(義偉)官房長官の記者会見で7名の死亡が発表されて、名前は公表されないということになり、私たちは「よかった」と安堵していたのです。


すると、午前1時過ぎに記者から突然、トリミングした画像が添付されて「確認をお願いします」というメールが来ました。


それで「何を言っているんだ」とびっくりして。その後すぐに記者から電話がかかってきたのですが、私は約30分の間「名前を出さないでくれ」と懇願しました。「官房長官が名前を出さないで守ってくれたにも関わらず、私が出したら自殺行為だ。親族全体に追い打ちになる。このタイミングで(実名を)出すのはおかしい」と。


――それに対して記者からはどのような答えだったのですか?


本白水:「説明不足だった。認識の違いがあったのかもしれない。名前を出すことで存在したことを知らしめることになる」と。私からは全部拒否しました。


すると彼は「頭に血が上っているので電話を切ってもいいですか」というので「あなたにも親や家族がいるだろう。人間の心をもってよく考えて」と伝えました。


次に電話が来たのが2時30分ごろで「結論からいうと出しました。デジタルの方は写真と名前は消しました。私に出来ることはそこまでです。叔父さんを貶めるようなことは書いていないです」という事後承諾でした。<<<<<


という経過のようです。


朝日新聞は、結果本白水さんとの約束を破ることになりました。


恐らく確信犯です


僕は権力と闘うという強い意志を持っている朝日新聞のスタンスは好きです。


良いも悪いもありますし、政治家としてはどうなの?と思う記事もありますが


権力を監視し、不正と闘うことを貫くという報道には、難しい局面もあると思います。


朝日新聞は「朝日新聞記者行動基準」を定めています。


朝日新聞綱領は、権力から独立し、言論の自由を貫き、正確で偏りのない敏速な報道によって、民主国家の完成と世界平和の確立に力をつくすことを宣言している。この使命を達成するために、朝日新聞社で報道・評論、紙面編集に携わる者(以下、「記者」とする)は高い倫理基準を保ち、長年にわたって朝日新聞に寄せられてきた人々の信頼をいっそう高めるように努める。


この基準は、記者が自らの行動を判断する際の指針であり、記者の活動を支えるためのものである。<<


その基準には以下の事項も含まれています。


【人権の尊重】

記者は、報道を通じて、民族、性別、信条、社会的立場による差別や偏見などの人権侵害をなくすために努力する。取材や報道にあたっては、個人の名誉やプライバシー、肖像権などの人格権を不当に侵害しない。


【情報源の明示と秘匿】

情報提供者に対して、情報源の秘匿を約束したとき、または秘匿を前提に情報提供を受けたとき、それを守ることは、報道に携わる者の基本的な倫理である。秘匿が解除されるのは、原則として情報提供者が同意した場合だけである。<<


この基準に照らし合わせると、


今回の本白水さんとのやり取りは、明らかに倫理から外れていると思います。


権力から独立し、言論の自由を貫くことは、歴史的にも大変な道のりでした。


だからこそ、今後とも新聞社には、


いかなる圧力にも屈せず、真実を追求し、あらゆる権力を監視して不正と闘って欲しいと思います。


その正義をかざしている朝日新聞が、


今回、権力者ではなく、不正者ではない本白水さんに対して行ったことは正義でしょうか?


相手が政治家ならまだ理解の仕様があります。


まったん政治家の僕が相手だったとしても、それは公共の利益のために仕方がないかもしれません。


ただ、本白水さんは普通の民間人です。


子どもたちのパパであり


地域で地道にネット関係の仕事をしている善良な市民です。


公共の利益のため、正義のために本白水さんを犠牲にしたというのなら


それはタリバンや正義をかざすテロ組織と同じことです。


これは、朝日だけでなくどの新聞社にも言えることだと思います。


朝日新聞の報道とそれに対する本白水さんの抗議活動の結果、


立場が非常に微妙になった本白水さんは


亡くなった叔父さまの葬儀に参列することも遺族から断られ


メディアの集団的過熱取材に悩まされています。


◆家の前のメディアスクラムの状況(本白水さん撮影)
https://www.youtube.com/watch?v=JXALFTvcRjQ&feature=share


非常に悲しいことです。


少なくとも、本白水さんに謝ってください。


もし記者の方やラインの人や


編集の人たちが開き直っているとしたら、


読者として、平和を愛するものとして、大変残念です。