春の日の母を見舞う水面にたつかげあわき橋なればそっとわたりぬ明日ある方へあけぼののプラットホームに横たわる電車は鯨ときどき鳴きぬ霧かかる野原のなかをあそぶ声 あぶくたつまでにえたつまでのわらいあう闇夜の花のひかりかな彼岸ばかりに菜の花ならぶ黄沙ふむ音のようなり休日の客車にもたれうたつづる時
知らぬ者どうし川沿いを海までゆく父しらぬものとしてあり春さきのなぎさの風にわれと仔犬はビニール傘それでじゅうぶんずぶぬれの仔犬のしっぽいたく細いがほんとうに守れるだろか痛いほどしろき爪さきさげて少年名前はと問うまあいなく走りさる照れ屋の少年しっぽふる犬
ネプリ/花の記憶花の記憶 草野浩一花ひらくようにひらけり薄闇にきみのさしだす透明の傘慕わしく散る花のこと伝えずに手紙の末尾とどまりのなく菜の花のむこうに海があったこと焦がれた先を見たかもしれずあっただろう 花こぼしつつゆく貨車の傷みのような幼き時はくちびるに指おしあてる感覚をよびさますため選るシクラメンパステルに霞む少女の夢のなかみちのしるべの薔薇撒きたし 十二月の視野のかたすみ孤をひらくしろき水仙たがわず咲きぬ
ネプリ/PATCHWORKランプ 草野浩一指さきにまわす電球たましいのほのほのひえてうすぐらき部屋しばらくは硝子をすべる雪があり あゝいくつもの手まねきのようまだそこに人のぬくみのあるようなゆれ方をするランプのあかり愛に尽き 記したのちのしずけさは書架のすき間へさし戻したり部屋のすみつかい古した言の葉をたばねて抱けば俺という人間 (人間:ひと)
文学フリマ東京11月23日(月祝)文学フリマ東京Fホール【エ-19】短歌同人誌cahiers~カイエ~ vol.3を販売します。文学フリマって何?とおもう方はこちら→http://bunfree.net/?tokyo_bun21それと、フリーペーパー 短歌十四集(8頁)をつくりました。『草蜉蝣』は一つの季節をふり返り詠んだものを少しだけまとめたものです。今回は十代後半から二十歳の頃かな。(文フリで配ります)くさの