2009年10月16日-2 | 写真を始めたきっかけの話

写真を始めたきっかけの話

一緒に過ごした時間は5年
会えなくなって9年。
いつの間にか、いなくなってしまった時間の方が長くなっていた話。

彼の家に到着した。

 

信号のない、田舎独特の道幅の広い県道から

左に曲がった。

綺麗に舗装されてた道路は、

農作業のトラクターが普段たくさん通っているんだろう。コンクリートが少し割れていた。

 

車がやっとすれ違えるような田んぼが広がった道を少し行くと、

彼の家が道路から少し登ったところにあった。

 

普段はきっと人通りなんて少なくて

夜は静かなところ。

そこにオレンジのライトがたくさん、

道路沿いにも複数止まっていた。

 

彼の家は、農家だった。

家の周りは農機具などがしまわれている小屋があり、

軽トラックの荷台にはトラクターが乗っている。

道路の向こうに稲刈りが終わったばかりの田んぼが広がっていた。

 

坂を登って行くと、

提灯が目に入る。

 

先に高校の時の担任がいた。

彼の両親に挨拶をしていた先生が私に気づき、促してくれた。

 

「今日は来てくれてありがとない」

 

どんな気持ちだったんだろう。

 

疲れ切った顔をしていた。

悲しみ尽くしている顔をしていた。

私たちの顔を見て、また涙がこぼれる。

 

どうやら彼は逝ってしまったらしい。

 

線香をあげさせてもらう。

作法がわからず、みんなで少しあたふたしながらも前の人の真似をして、ぞろぞろと終えて行く。

実感はない。

座ったとき手を合わせた。

何を伝えたのか分からない。

 

震える手だけが、記憶に残っていた。