彼の家に到着した。
信号のない、田舎独特の道幅の広い県道から
左に曲がった。
綺麗に舗装されてた道路は、
農作業のトラクターが普段たくさん通っているんだろう。コンクリートが少し割れていた。
車がやっとすれ違えるような田んぼが広がった道を少し行くと、
彼の家が道路から少し登ったところにあった。
普段はきっと人通りなんて少なくて
夜は静かなところ。
そこにオレンジのライトがたくさん、
道路沿いにも複数止まっていた。
彼の家は、農家だった。
家の周りは農機具などがしまわれている小屋があり、
軽トラックの荷台にはトラクターが乗っている。
道路の向こうに稲刈りが終わったばかりの田んぼが広がっていた。
坂を登って行くと、
提灯が目に入る。
先に高校の時の担任がいた。
彼の両親に挨拶をしていた先生が私に気づき、促してくれた。
「今日は来てくれてありがとない」
どんな気持ちだったんだろう。
疲れ切った顔をしていた。
悲しみ尽くしている顔をしていた。
私たちの顔を見て、また涙がこぼれる。
どうやら彼は逝ってしまったらしい。
線香をあげさせてもらう。
作法がわからず、みんなで少しあたふたしながらも前の人の真似をして、ぞろぞろと終えて行く。
実感はない。
座ったとき手を合わせた。
何を伝えたのか分からない。
震える手だけが、記憶に残っていた。