福島に帰った。
バイト後、誰だったかな。
たてきさんだった気がする。
少し、一緒に飲んだような本当に優しい人だと感じた。
朝、学校に行った。
全く覚えていないが間違いなく行ったと思う。
そういう感覚が残っている。
帰る途中の新幹線も覚えていない。
実家に戻ると茨城のじいちゃんがいた。
秋の田んぼの稲刈りの時期で毎年手伝いに来てくれていた。
母親から話は聞いてくれていて、
そのまますぐ、礼服を買いに行った。
値段も、サイズも何もわからず、
流れに身をまかせる時間だった。
きっと高かったあの礼服はあの時一回きりしか着ていない。
夜、電車で通夜に向かった。
電車の中で、修平とあった。
ネクタイも真っ黒ではなく、少し柄が入っていた。
意外と冷静で、なんてことないものをずっと覚えているものなんだろう。
冷静というよりも何もまだ感じることはなくて、
1つひとつの行動だったり言葉ですら作業的で、
1つの大きすぎる物事に対して時間が流れていくのと同時に
そこから外れてはならない、外れないように向かっているだけなのだと思う。
外れて欲しい。そういう気持ちですら生まれないくらい。
本宮駅で誰かが車で拾ってくれて、
それに乗って彼の家に向かった。
その車の中からみたものは、
初めての景色で、
でも彼にとってはいつもの景色で、
それに触れたことがなかったんだなと、
こんなことで触れることになるなんて、考えてもみなかった。