写真を始めたきっかけの話

写真を始めたきっかけの話

一緒に過ごした時間は5年
会えなくなって9年。
いつの間にか、いなくなってしまった時間の方が長くなっていた話。

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彼の家に到着した。

 

信号のない、田舎独特の道幅の広い県道から

左に曲がった。

綺麗に舗装されてた道路は、

農作業のトラクターが普段たくさん通っているんだろう。コンクリートが少し割れていた。

 

車がやっとすれ違えるような田んぼが広がった道を少し行くと、

彼の家が道路から少し登ったところにあった。

 

普段はきっと人通りなんて少なくて

夜は静かなところ。

そこにオレンジのライトがたくさん、

道路沿いにも複数止まっていた。

 

彼の家は、農家だった。

家の周りは農機具などがしまわれている小屋があり、

軽トラックの荷台にはトラクターが乗っている。

道路の向こうに稲刈りが終わったばかりの田んぼが広がっていた。

 

坂を登って行くと、

提灯が目に入る。

 

先に高校の時の担任がいた。

彼の両親に挨拶をしていた先生が私に気づき、促してくれた。

 

「今日は来てくれてありがとない」

 

どんな気持ちだったんだろう。

 

疲れ切った顔をしていた。

悲しみ尽くしている顔をしていた。

私たちの顔を見て、また涙がこぼれる。

 

どうやら彼は逝ってしまったらしい。

 

線香をあげさせてもらう。

作法がわからず、みんなで少しあたふたしながらも前の人の真似をして、ぞろぞろと終えて行く。

実感はない。

座ったとき手を合わせた。

何を伝えたのか分からない。

 

震える手だけが、記憶に残っていた。

 

福島に帰った。

 

バイト後、誰だったかな。

たてきさんだった気がする。

少し、一緒に飲んだような本当に優しい人だと感じた。

 

朝、学校に行った。

全く覚えていないが間違いなく行ったと思う。

そういう感覚が残っている。

 

帰る途中の新幹線も覚えていない。

 

実家に戻ると茨城のじいちゃんがいた。

秋の田んぼの稲刈りの時期で毎年手伝いに来てくれていた。

母親から話は聞いてくれていて、

そのまますぐ、礼服を買いに行った。

 

値段も、サイズも何もわからず、

流れに身をまかせる時間だった。

きっと高かったあの礼服はあの時一回きりしか着ていない。

 

夜、電車で通夜に向かった。

電車の中で、修平とあった。

ネクタイも真っ黒ではなく、少し柄が入っていた。

意外と冷静で、なんてことないものをずっと覚えているものなんだろう。

冷静というよりも何もまだ感じることはなくて、

1つひとつの行動だったり言葉ですら作業的で、

1つの大きすぎる物事に対して時間が流れていくのと同時に

そこから外れてはならない、外れないように向かっているだけなのだと思う。

外れて欲しい。そういう気持ちですら生まれないくらい。

 

 

本宮駅で誰かが車で拾ってくれて、

それに乗って彼の家に向かった。

その車の中からみたものは、

初めての景色で、

でも彼にとってはいつもの景色で、

それに触れたことがなかったんだなと、

こんなことで触れることになるなんて、考えてもみなかった。

 

 

 


 

あいつ、死んだんだって。

 

友人からの電話があった。

 

 

この日は大学の3,4限目のみ授業だったから

前日は夜遅くまで起きていた。

 

友人の電話で目が覚めた。

すでに13時が過ぎていて、大学の授業には間に合わないなと冷静に考えていた。

夢を見ていると思って、もう一度寝ようとした。

 

眠れなかった。

 

耳の奥が詰まるような、

首の後ろがキューっと締め付けられるような、

3組のルーム長だった私は

ただただ、ひたすらに高校の同級生にメールを打った。

 

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久しぶり。元気?

急な連絡なんだけれど、

17日が通夜、18日が告別式です。

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こんな内容を卒業して、1年半たったクラスメート達に

布団の中からひたすらに送った。

 

その日17時からパチンコ屋さんでのバイトがあった。

バイト中のことはほとんど覚えていない。

その時の社員さんや同い年のバイト仲間に事情を話しても早くは帰れず、

これを普通に私も受け入れていた。

多分まだわかっていなかったんだと思う。

 

閉店間近になり、お客さんの数も減ってきた時、

キン肉マンの台が当たった。

 

 

私はドジで、強いつもり。

走る(滑る)見事に(転ぶ)

 

 

この時は何も知らなかったはずなのに、

この曲を聞いて、

初めて涙が流れてきた。

 

閉店の作業をしながら

ひたすらに

誰にも見つからないように

泣いた。

ここに記すまでに、

9年の時間が経った。

 

片時も忘れたことはなかった。

 

心が苦しくて、自分自身で握りしめていって

わかることがない、

高い時計を買っても、

安い時計を買っても、

進む時間は同じで、

 

どちらも止まってしまったら、

動かない。

 

そんな時計を大事に大事に

持っていたものだから

 

自分の生きている今がわからなくなってしまった。

 

そんな想いを整理するために

ここに書く。

誰かに伝えたいわけでもなく、

役に立ちたい気持ちは一切なく、

ただただ自分のために9年という時間を

辿って、生きたい。

悔しさだけが大きくて





ただただ悔しくて





信じることもできなくて


ただまっすぐに思うこともできなくて





何かを求めてるわけでもないのに


きっとそれは俺だけのものなのに





分かれなんてできるわけないだろ


分かるなんてできるはずないだろ





オレハ





ただただ乗り越えたいんだ





つらいなんてものじゃない





違う





そうじゃない





何も出てこない





大きな期待をしても何も出てこなかった


そんなときの


残念な気持ち





何かに期待してたのか?





わからないよ


なにもわからないよ








わからないんだ





オレは


おれはどうしたらいいんだ