コロナ禍以前のマスク着用歴は、小学生とか中学生の頃に給食当番や調理実習で着けてたくらいで、マスクを着けて外出することはなかった。


コロナ禍になって、おそらく人生で初めてマスクを着けて外出した。


2020年の3月下旬頃だ。


世間的には遅からず早からずな時期だったんじゃないかな、と当時のマスク着用率を軽く調べてみたら60%くらいっぽかった。ぴったり遅からず早からず。


ただ、着けたほうがいいんだろうなぁと個人的に思ってから実際に着けるまではちょっと遅かった。


それは自分のコンプレックスのせい。


自分の顔の、マスクで隠れる位置にまあまあ特徴的なものがあるのだ。


生まれつきのもので、小さい頃から嫌いだった。


嫌いだったけど、それがあるからこそ良くも悪くも今の自分がいると思っているので、マスクで隠してしまうのは自分が自分じゃなくなってしまうような怖さがあった。


でもいざマスク着け始めたら……イイネグッド!


なんか気が楽というか。


冬場もあったかいし。


アヒル口しててもバレないし。




マスクを着けるようになってから今ちょうど一年半くらい。


この一年半で家出る時にマスクを忘れたのは二回だけ。


一回目はしばらく誰ともすれ違わなかったので気付くまで数分かかり、慌てて取りに戻った。


二回目は家出てすぐに「なんか口元が涼しいな」と思い、マスク忘れた!と。


二回目があった数日後、また家出てすぐに「なんか頭が涼しいな」となり、一瞬、帽子忘れた!と。


しかし日常的に帽子を被ることはないので……あの感覚はなんだったのか。


ちなみにマスクの裏表を間違えたことは一回。


さすがにバレないだろうと思いつつも、間違えた姿で外を歩くのは恥ずかしかった。


おれは恥ずかしさを覚えたが、きっとそういう感情が湧くということは、誰かにとっては快感なのだろう。


世の中にはマスクの裏表をわざと逆にして、そのドキドキを楽しんでる人がいるのかもしれない。




いないか。



<完>