荻原浩さんの「砂の王国」二周目読み終わった。
やっぱ面白い。

前に伊坂幸太郎さんの「モダンタイムス」の感想で「こんな話で面白いのは伊坂さんだから」ってのを見た時にものすごく納得した。
「砂の王国」もまさにそれで、これをこんなに面白く書けるのは荻原さんだからだと思う。
だから二人の最高傑作を聞かれたら、他に面白いのあるけどって注釈つきで「モダンタイムス」「砂の王国」を挙げる。


「砂の王国」序盤あらすじ↓

四十代でホームレスデビューした主人公はある日二人の男と出会う。
一人は常人にはない不思議な魅力を持つ三十代のイケメンホームレス。
もう一人は高い観察力を活かして小銭稼ぎをしてる五十代のエセ占い師。
主人公はこの二人に宗教組織を立ち上げて一儲けしようと持ちかける。


「砂の王国」は文庫本で上下巻の長い話で、中身は三章仕立てになってる。


第一章はホームレス時代の話。
四十代の新人ホームレスがいかに十二月の寒さをしのぎ、食事にありつき、小銭を稼ぐかが丁寧にリアルに描かれてる。
いや、リアルを知らないけど。
でも感想を読み歩いてたら「序盤のホームレス描写で二年間ホームレス生活してた時のこと思い出した」ってのを見たから、体験者のお墨付き……いや、その人の人生が気になる。


第二章は立ち上げた宗教団体を育て上げていくパート。
この第二章の導入が最高に良い。
初めてこの宗教施設に足を踏み入れた主婦視点で描かれるんだけど、この主婦が第一章で語られてきた仕掛けにハマっていく過程がむちゃくちゃ面白い。
その後も主人公はあの手この手で勧誘し、人を集めていく。


第三章は大きくなった組織に問題が生じる。
一回目に読んだ時はここから微妙になった気がした。
第一章、第二章が丁寧な描写で成り上がりを壮快に見させてくれるのに対して、第三章はそれまでの丁寧さがなくなって話も重たくなっていくからそう感じたのかもしれない。
でも二周目は普通に面白かった。
むしろ一周目でハードル下げてたせいか、こんな面白かったっけ?とすら。

第一、二章と第三章の丁寧さやスピード感の違いは、主人公が制御できてた前者と、そうでない後者として好意的に見れば、むしろ楽しめるのかも。

さらなる広がりを見せつつ、あそこをラストに持ってくるのがほんとツボすぎる。


荻原さんのユーモア、皮肉のセンスが大好きで、「砂の王国」で一番好きなのは、
「腕が疼いていた。(中略)この女の化粧の白さが届いていない、齢相応の筋ばった首を締め上げたくて、だ。」