前回、伊坂さんの話をしたので、ついでにもう一回。
今回は今まで読んだ伊坂さん作品のなかで一番好きな「モダン・タイムス」の話。

まずは「モダン・タイムス」の前作にあたる「魔王」の話から。
「魔王」には中編がふたつ入っている。

ひとつめは表題作「魔王」
対象に好きな言葉を喋らせる、という微妙な特殊能力を使える男の物語。
初めて読んだ時に驚いたのは、裏表紙に書かれたあらすじだけで物語が終わってしまったことだ。
そこに至るまでも充分に面白いのだけど、そこからどんどん展開していくのかと思ってたら、プツッと終わって驚いた。
今「魔王」の世界を思い出すと、10年くらい前の作品なのに中身が現代情勢とシンクロしてるなーと驚く。

中編ふたつめは、魔王の主人公の弟が主役を務めている「呼吸」
最初読んだ時は、なんだこのなんでもない話は……と思ったけど、二回目読んだらなんか怖かった。
地味に好き。

そして、その魔王から50年後の話となるのが「モダン・タイムス」
初めて読んだ時は、面白かったのか面白くなかったのか分からなかった。
ネットで「このプロットをここまで面白くできるのは伊坂さんだけ」という評価を見て、それだ!と。
面白くないけど、面白いんだ。
文庫で上下巻で話は冗長だし、結末も、え?!という感じ。
でも伊坂さんがノリノリだから楽しい。
伊坂さんの感性が好きなら好きなだけ楽しめる作品かと。

ちなみにモダン・タイムスは「主人公の同僚たちに次々と不幸が訪れる。彼らは皆、特定の言葉を検索していた」的な話。
「人は未知のものに出会った時、どうするか。検索するんだ」とは、うろ覚えの作中の台詞。
モダン・タイムス読んで以降、検索するのが怖くなった。
どこで何に引っかかるか分からんからね。

「魔王」で、好きな言葉を喋らせる能力を「微妙な能力」と言ったが、自分も昔、役に立つ超微妙な能力とは何かを考えたことがある。
それで考えついたのは「自由にくしゃみを出せる能力」だった。
自由にくしゃみが出せれば、話のペースを自分に持ってきたり、特定の状況下なら人も殺せるな、と。
でもこのブログ書いてて、役に立つのなら微妙ではないと気付いた。

魔王のは役に立たない。

まあ持ってたら持ってたで、ありがたく使うけど!