ぴくしぶに投稿した、中途半端小説です。 | 寂兎のブログ

寂兎のブログ

常日頃、思ったことをなんか綴ってくブログです。たまに(?)小説あり、アニメ話あり

 ぴくしぶにのせたものです。
全部、途中であきて、書くのをやめたものなんですが、あんまりにもたくさんあったので、まとめて全部のせましたw
どれでもいいから、完結したものが見たい!っていうひとは、この記事にペタをおねがいします。
まあ、いないだろうけどwww


久しぶりに遇った「彼」は、相も変わらず余裕げな笑を見せてーーーーーーーー


俺を不快にさせた。




毒花と、食虫植物(佐久春風)





 長かった夏休みもあっという間に残り少なくなった今日、俺は気分転換にちょっとした散歩に赴いた。
殆ど室内にこもりっきりで、外の様子など余り見ていなかったから、息抜きには最高といっても良かった。
だが近所の公園を見かけたとき、急に懐かしさがこみ上げてきてそのまま公園まで足を運んでしまったのが悪かった。


「あれ、風丸?」
最悪な相手に出くわしてしまった。
そう、俺が最も会いたくなかった相手とは、佐久間次郎だ。
しかし奴は俺の心中とは対照的に明るく笑顔を見せてきて友好的な態度をとってくる。
「いやあ、久し振りだな風丸!一ヶ月ぶりかな」
「ああそうだな。だけど何で此処に?お前の家からはずいぶん遠いんじゃないのか?・・・・えっと、帝国なんだし」「んーー・・まあそうなんだけど、今日は音無の家にお邪魔してるからさ・・」
 急に照れた顔してこの男何言ってんだ?
じゃあ今ここにいるのも音無んちからコンビニか何かを買いに行くついでで寄ったのか。
遠まわしに自慢かよ、腹立つ。
「へーえ、もうそこまで進んでるのかぁ。へ~~」
「な、なんだよ。変な声出してっ」
 茶化すように言うと、佐久間は褐色の肌を俺の目にも解るほど真っ赤にさせた。
こりゃいい、からかいやすくわかりやすい。
んじゃ情報を仕入れますか、と。
「あとはどのくらい進んでるんだよ?おれに言ってみろ、バカにしないから」
「絶対、馬鹿にしないか?」
「しない!」
俺が断言するとこいつがやっと口を開いた。
「そ・・その、手をつなぐとか・・・・」
「・・・・・・」
「~~~~!!ぜっっったいバカにしてるだろ!!!!」
「いや、全然?バカにしてませんけど?!むしろすごいなあーなんて」
「いやバカにしてるね!!だって目線泳いでるもの!視線合わせようとしないもの!!」


嘔吐感(風春)

今、私の目の前に立つのは風丸さん。
だけど、数秒前とはどこか違う雰囲気が漂っていて、近づきがたい感じがする。
「風丸さん、どうしたんですか?」
聞いてみても返事がない。
何か変なことを行ってしまっただろうか。
不安だけが募っていく。
「風丸さ・・「音無、はさ」」
 風丸さんが唐突に口を開いた。
「は、はい」
「誰も寄せ付けないよな」
「え?」
「誰よりも人に気を許してるようで、心の中に「不可侵領域」って壁を造って人をあまり心の中に踏み入らせないようにしてる気がする。」
急な風丸さんの話に、私は驚きを隠せないまま、ぽかんと風丸さんの話を聞いていた。
「でも、それを表立って態度では出さない、違うか?人を傷つけたくないから、嫌われたくないから、皆に優しく接してる。実の兄にでさえ・・」
「」

無題
(不春)

目が覚めると、其処は闇だった。
辺りを見回してみても闇、闇。
真っ暗闇だ。
せいぜい見えるものと言えば自分の身体だけだった。
まるでホタルのように、光っている。
「んだよこれ・・光源みてー」
一度スポットライトを浴びてみたいと思ったことはあるがこんな形で実現されるとは思ってもみなかった。
しかも光っているのは自分だけで、周囲はまるで闇だ。
今自分がどんな状況下にいるのかも認識できない。
「こりゃ困った・・」
 今の不動に至ってはこうぼやくことしかできなかった。
もしもこれが円堂やら鬼道などといったキャラクターたちであったらかなり違っただろう。
絶対に何か行動を起こしたと思う。
なにせ自分とは違うのだ。
あんな活発になりたいとは思わないし、羨ましいとは思わない。
これは夢だ、夢。
不動はどうでもいいやとその場に寝っ転がった。
どうせ誰も居ないし、どうにもできないのだ。
目が覚めるまで気長に待とう。
 不動が目を閉じかけた時、声が聞こえた。
「・・・・さーん・・」
「・・?」
「不動・・さーん・・」
どうやら自分を呼んでいるようだ。
不動がおもむろに振り向くと、何か見覚えのある少女がこちらに向かって走ってきた。
少女は赤渕メガネに、青髪のボブにふんわりとウェーブのかかった髪に、雷門の制服


無題(鬼春)


兄の大真面目な顔がまん前にある。
いつも生真面目な顔をしていて堅苦しいのに、今の兄さんには更に近寄りがたい空気がでていた。
「に・・にいさん・・?」







もしも、叶うなら(フェイ葵)

もし、君が僕の恋人だとしての話をしよう。
まず僕がデートの待ち合わせ場所で待っている。
普段とは違った、だけど女の子が男の子に着て欲しいとしたらどんな服装がいいのかとか、じっくりと吟味した洋服を来て待っているんだ。
だけどかしこまりすぎない、だけどだらしがないというわけではないほどほどにラフな洋服を身に付けているんだ。
僕は公園の片隅で、噴水のそばに立っている。
公園には大きな時計があって、僕はそれをじっと見つめてる。
 君がくるのを今か今かと首を長くしながら。
待っているのがさほど苦痛ではない。
むしろ、楽しいくらい。
なんたって好きなことのデートなんだもの待っているのだって嬉しい。
 時計の針が待ち合わせの時刻を過ぎようとしたとき、聞きなれた声に僕は振り向いた。
すると可愛らしい少女が僕に向かって一生懸命走ってくるんだ。
誰だか声で分かった。
ああ君だ、良かった。
会えた喜びで僕の心

鈍痛(佐久春鬼)
「お兄ちゃん、はいタオル」
 春奈は先程の練習で汗だくになった鬼道に元気よくタオルを差し出した。
「ああ、気が利くな。助かった。しかし他の奴らにはいいのか?」
鬼道は次の試合に向けての選手配置について思考し、難くしていた空気を一気に緩和させた。
しかしその言葉に春奈はほっぺたをタネをほおばるリス宜しくぷくぅっと怒ったように膨らませた。
「もうっおにいちゃんったら!マネージャーなんだもん、当然でしょ?特にお兄ちゃんは別!でもお兄ちゃんが他の人のところに行け~って言うなら、行っちゃうけど?」
 少し拗ねたように鬼道からそっぽを向いて離れようとした。
鬼道はその素振りに慌てふためいて「ま、待て!行かないでくれ!!」と春奈を引き止めた。
その必死な様子に、春奈はふふっと笑った。
「なーんちゃって、行くわけ無いでしょ?ほかの人の所へなんて。お兄ちゃんの専属マネージャーなんだもん」
「はっ春奈・・・・・・」
 鬼道は無邪気に笑う春奈の台詞にすっかりKOされてしまったようだ。
顔は真っ赤になってるし、体中からは滝のように汗が流れるし、ゴーグルは熱気で曇って真っ白だ。
「あまり・・からかわんでくれ、心臓が持たん・・・・」
 幾ら兄妹、仲がよすぎるとはいえ流石に本気で言っているのでは無いことは鬼道にとって重々承知の上であった。
それに自分たちは「兄妹」なのであって、友達同士ではない。
周囲の誤解を招きかねない。
そのことで少し嗜める、というのもあるが、これ以上胸のときめくような台詞、その上その明るく輝くような笑顔で攻撃される(からかわれる)と、本気で期待しかねないし、胸の動悸が凄いことになってダイナマイトの如く爆発してしまいそうだからだった。
・・・・若干最初のほうがいい訳臭いが。(「兄妹であって~」の部分が)
「でも私、お兄ちゃん大好きだし。一緒に居たいのは本当のことだから。でも専属は言い過ぎたかなぁ。流石にうざったい?私が嫌?」
 やや憂いを帯びた上目遣いをしてくる春奈。
鬼道だけを映す大きな瞳には不安でできた川が、今にも洪水を起こしそうに波が立ち始めている。
鬼道は春奈の細い体を抱きしめて、囁くように言った。
「・・・・嫌なものか。俺はお前以上に春奈のことが大好きだし、俺も春奈と一緒に居たい、と思っている。」
「お兄ちゃん・・・・」
 良かった、と涙声で言った春奈の体を鬼道は更に抱きしめる腕に更に力を込めた。
春奈も兄の背中に腕をまわした。
「大好き」
「ああ、俺も大好きだ」
 嬉しそうな春奈に反して鬼道は心中では苦しんでいた。
この「大好き」という言葉がもしも、恋人として贈られていたら、どんなに好かったことか!
この「大好き」という言葉がもしも、兄としてではなく、男として受け入れられたら、どんなに良かったことか!
 だが春奈は決して鬼道が望むようには鬼道を見ることは無い、鬼道は苦しむだけ無駄だと自分に言い聞かせた。
鬼道は春奈を体から離し、思いがけずこんなことを言った。
「だが春奈はこんなことを今は言ってくれているが、段々と成長するにつれ、俺よりも大事な人間ができてしまうんだろうな」
 心に浮かんだことをつい喋ってしまった鬼道だが、通常であれば押さえるはずである。
ここで喋ってしまったのは、鬼道が考えていることや外界からの情報の量が脳内の許容範囲量を超えてしまったからである。
「お兄ちゃん・・・・」
鬼道ははっとして口をつぐんだ。
「お兄ちゃん、私ね」

無題
林檎の実は、長い時間かけて、青く、何の味気のない実から血のように鮮やかで、素晴らしく甘美で、優しい美味なる実に成る。
それを口に出来たとき、人々はその舌のとろけそうな、しかし爽やかな味わいに感嘆の溜息をつく。
そう、声を出すのも忘れてしまうほどに。
 しかし、林檎というものは皆が皆、あの光沢がまばゆく光る美しい林檎へと成るわけではない。
勿論病気に罹ってしまう林檎もある。
人の目にも痛々しく変貌してしまう物も有る。
将来真っ赤に熟した立派な林檎になったであろう青い果実は、病気を患うと決まって自ら掴まって自身を支えていた枝から飛び降りる。
 そしてドロドロに腐って果てていく。
他の皆が赤く、それは美味しそうに熟していくのを羨ましそうに眺めながら・・・・・・


林檎恋心


「林檎はまるで人の心みたいだ」
 風丸さんは切なそうに笑った。
私にはどういう意味なのかさっぱりで、首をひねった。
すると風丸さんはそうだよな、とまた笑った。
「林檎はさ、沢山日を浴びて、真っ赤に、美味しく育って皆に愛され食べられるだろ?」
「はい、そうですね・・でも」
 それがどうしたって言うんですか、と言いかけたところで手で制された。
「だけど途中で病気に罹る林檎もあるわけだ。しかもまだ熟さずに青いうちから。」
 私は風丸さんの言うまだ青く、固い果実が所々に茶色いシミを作っていくのを想像した。
思わず勿体ない、と呟いた。
これから美味しくなるかもしれないのに。
「その林檎は病気に罹ったら、もうそれでお仕舞い。自分からつながってた枝を切って地面にポタリ、って落ちていくんだ。」
「誰にも助けてもらえずに?」
 声が震える。
「ああ、そうだな。未然に防ぐに越したことはないけど、それがなかなか難しい。そういった意味では、誰にも助けてもらえないといったほうが良いかな。人もそうだろ?一度心が病気に罹ったら、地面まで堕ちて行くんだ。暗くて、哀しい、そんな地面まで。他人にも救えるかどうか分からない、けど殆どが一度病気に罹ったら自分で勝手に闇まで堕ちていくだろ?そこがそっくりだと、俺は思う。」
 ゆっくりと燃える夕日が風丸さんの赤茶色の瞳を赤く染めた。
放課後の校庭は、昼間、明るくて賑やかでとても楽しい場所なのに、皆が居なくなると全体的にひっそりとした空気に包まれて、何所か寂しい。
その場所に今、私たちは居る。
林檎の話をしている。
それがどうしてか、笑い話や楽しい話ではなくて、林檎と人の心との類似についてはなしている。
 滑稽なようで、真面目な話。
黙りこくった私に、風丸さんはつい口を滑らしたというようにハッとした。
そして目をそらすように、
「・・・・悪い、変な話した。ひ、引かれたよな・・・・・・」
 目は先程のように夕日の光に照らされてはいない。
いつもの赤茶色。
いつものクールな風丸さんの目だ。
その目が少しだけ、自分を恥じるような目だったから、私は慌てて

無題(佐久春)
叶うことが無いと、解かっているのにまだ諦めが付かず想い続けている自分の思い切りの悪さにほとほと呆れる。

ホント、馬鹿みたいだ。

ただ、君の笑顔が(鬼春)
ただ、君の笑顔が


 春奈の様子がどこか可笑しい、と思うようになったのはさほど最近ではない。
具体的にどこが可笑しいのか?と聞かれたら俺も返答に窮する。
が、しかし何をもって可笑しいと言ったのかには根拠があった。
 それは「表情」だった。
春奈は皆に明るく笑いかけ、自らを光源とするかのように光り輝く。
だが、時折見せる悲しそうな表情、熱っぽそうな瞳、切なそうな息遣いが俺をこの上なく苦しませのだ。
何かに耐える表情、それが余りにも苦しそうで、悲しみに染まっていて、俺はもうどうにかなってしまいそうだ。
 なんども訊こうか訊くまいかと迷った挙句、何時も訊かずじまいで終わっていた。
ああ、こうしている間にも春奈は苦しんでいるというのに!!
しかし妹には妹で他人には口出しされたくない事情があるのかもしれない、しかし俺に相談することで解決する悩みかもしれない・・・・・・自身の意気地のなさをつくづく呪った。
 そして悩みに悩んだ末に、今日はとうとう問いただすことにした。
放課後、わざと遅れて部室へ行くと、思ったとおりに春奈が雑務をしていた。
これは最近なのだが、春奈は部活へ来ても選手たちの応援をするにはするが、半分以上の時間を概ね部室内清掃、雑務等に費やし、外にはあまり顔を出さない状態を作っていた。
 なんどか俺や、チームメイト、マネージャーが連れ出そうと色々話したりもしたのだが、上手く話をそらされ、誰も春奈を練習場まで連れ出すことが出来なかった。(俺は諦めていないが)
 そんなことがあって、春奈と俺が二人きりで話をするのには絶好のチャンスだった。
おれがそれとなく部室に入ると春奈は雑務をしていた手を休め、俺に向かって笑いかけた。
「あれ?お兄ちゃん、どうしてこんなに遅いの?早く着替えて練習しなきゃ。キャプテンは『彼奴は腹痛で保健室で休んでくるぞ』って言ってたけど、あれは口実でしょう?どうしたの」
春奈にはお見通しだな、と笑うと、当然でしょう?と返された。
「しかしまあ俺がこうしてわざわざ遅れてきたのにはそれなりの理由があってな。実は春奈に二人きりで聞きたいことがあったんだ。」
「へえ、なんの?」

無題(多分佐久春風)
春奈ちゃんの言葉に、俺は一瞬思考停止していたようだ。
頭の中が真っ白になった。
「ねえ、聴いてるの?」
春奈ちゃんの目には俺が真面目に話を聴いていないように映ったらしい。
腰に手をあてて、上目遣いにして俺をつり目で睨んだ。
その少しむっとした表情が可愛らしくて、何故か顔が熱くなった。
「う、うん。ちゃんと聴いてるよ。」
 半分くらい、とは言わないで置いた。
そして俺は頬の熱が急速に冷えていくのを感じながら言った。
「風丸先輩に、告白されたんだよね」
すると彼女はやや俯きがちに、
「うん、そうなの」
と言った。
その様子は状況を呑み込めず、当惑しているようにも見えた。
それがどうしてなのかは全く解からなかったけれど、少し憂いがちな小顔が、とても美しく見えて、胸が熱くなった。
「どうして困った顔をしているの?」
 取り敢えず気になった疑問を彼女に投げかけてみた。
その返事はどう返すのか、YESなのかNOなのか、そっちのほうが知りたかったけど、でもソレを訊くのは何だか躊躇われた。
「私、困った顔をしてた?全然気付かなかった」
思いもよらないという表情で彼女は笑った。
でもその笑顔も何だか何時もと違って苦笑しているような笑い方だった。
私、困ってなんか無いよと言ってから、息を吐くと、言った。
「私ね、風丸先輩の交際のお申し込みにOKしようと思うの」
 最初、我が耳を疑った。
今の言葉は錯聴ではないのか?
きっと違うよ、そんな事を言うわけが無い。
第一彼女との会話の中に今迄一度でも先輩の話が出てきたか?
有り得ない、言うはずが無い。
 頭の中で突如謎の大混乱が起きた。
何が何だか解からないが、不思議な感情に戸惑った。
とにかく抑圧しなければ。
俺はソレを表情に出さないように必死だった。
だが彼女はそれには気付かないようで、


無題(鬼春)
「なにが、怖いんだ?」
兄の発した一言に、私は驚いた。
怖いって、何が?


花嵐(風春)
「私、音無春奈と言います、宜しくお願いしまーす!!」
 初めて彼女がサッカー部のマネージャーとしてやってきたとき、ああ明るくてハキハキしていて、とても悩み事なんてなさそうな子だななんて思った。
実際彼女は元新聞部ということもあってか情報担当の仕事から雑用仕事までテキパキとこなし、常に笑顔を振りまき、メンバーたちの調和を取り持つという完璧な少女だった。
でも、それが余りに完璧すぎて、みんながみんな騙されていた。
 誰にでも愛想を振りまき、雑務も完璧にこなす。
これは誰もが良しとするところかも知れない、でもそれがどうしても俺に違和感を与えて仕方がなかった。
共に時を過ごしていくうちに、この子に悩みがないなんてとんでもないと、第一印象・・概念は消え去った。
 音無の笑顔の裏には本当は、悲しみが潜んでいるのではないのか。
以前一瞬だけ見せた暗い表情が、忘れられない。
(どうして笑えるんだろう)
心の中では冷たく、哀しい感情が渦巻いてどうしようもなく苦しいのに、それなのにどうして、どうしてーーーー
笑っていられるんだ?
他のマネージャー達と楽しそうに声を上げて笑う音無の横顔を見てそう思った。
 ある日、部活が終了した直後、皆が帰宅していく中一人部室に入っていく音無を見つけた。
その姿は何処か脆弱で、小さいからだが更に小さくなったように感じた。
(そのままにしておいたら消えてしまうのではないか)
 ホタルの光のように明るくて、人を惹きつける彼女の火が此処で本当に消えてしまいそうに思えた。
俺は部室のドアノブをゆっくりと回した。
明かりも点いていない部室の中は流石に暗く、普段なら判る荷物等の置き場所を認識できなかったが窓から差し込む夕日の光が幸いにも「音無春奈」を照らし出し、俺にその存在を知らせてくれていた。
 椅子に座りもしないで地べたに体育座りをした音無は、顔を腕の間に埋めていた。
その体は小刻みに震え腕を涙が伝い、光を反射した。
この状況で音無に話し掛けるのは些か(いささか)無粋に感じられたが、今更迷っていても仕方がないと思い切って口を開いた。
「お、音無」
声は普段と変わらないように努力した積もりだったが、若干裏返ってしまった。
「あ・・れぇ?風丸、さん?」
音無は顔をゴシゴシこすって俺を見上げるとへにゃ、と笑った。
だけどその笑顔すら力なく、泣き笑いの表情にしか見えなかった。
 腫れた瞼、赤く充血した目が、拭いきれていない涙が、全てが痛々しい。
「どうしたんですか?風丸さん、忘れ物だったら私も一緒に探しますよ」

無題(天秋)
パッパーーーー!!
休日の街中で高いクラクション音が響いた。
「すっ、すみません!」
天馬は慌てて車の方に一礼し、既に横断歩道を渡り終えていた友人たちの方へと駆け寄った。
「もー、天馬ったら何やってるの?!」
呆れたような葵の声に天馬の脳裏に二人の男女が親しげに歩いている様子が鮮明に映し出された。
 傍らの男が何か楽しそうに話す。
すると女はその話を笑って相槌を打つ。

天まで届け(天秋)
わが耳を、疑った。
まさか、あの秋姉が結婚するなんて、思いもしなかったから。


天まで届け、応援歌




「ねえ、秋姉。結婚する相手とか、いる?」
 俺がそう聞いたとき秋姉はから揚げを箸に掴んだまま固まった。
今正に口に運ぼうとしていたところだったから、から揚げは箸から落ちるか落ちないかの瀬戸際に立たされ、不安定で微妙な位置に居た。
でもから揚げはとうとう重力に負け、ぼとり、とテーブルに落ちた。
あんまり長くは持たなかったな。
そしてそれを見送ってから秋姉の顔を見ると、さっきまでのニコニコ顔のまま、表情がピクリとも動いていなかった。
これはこれで面白かったけど、今はそれを観察している時間ではないので秋姉のフリーズを解くことにした。
俺は席を立つと、固まったままの秋姉の鼻と俺の鼻がくっつきそうなくらい近づいた。
近づいたとはいっても、ほんと顔だけ、体と体はテーブルの境界線で遮られてる。
でも、ほら、こんなに顔が接近しても気付かない。
 よぉーし、此処は大きな声を出して・・・・
「あ、き、ね、えっ」
「ひゃひ?!」
秋姉は可愛らしい悲鳴を上げて、やっと我に返った。
「きゃっ!て、天馬!?何時の間にこんなに近くに?」
ああ、本当に気付かなかったんだ・・・・
でも固まるにも程が有る。
俺はそんなに驚くようなことを言ったかなあ?
「秋姉、何で俺が訊いた時固まったの?」
「え、固まってなんかないわよ。」
そういって、先程落したから揚げを別の小皿に移した。
「それにね、天馬。私にはまだ相手が見つからないのよ。それにこの年で結婚は早いわよ。」
笑うと、また食事を再開させた。
「そんなことより、がっこうはどうなの?」
もうこの話は終わりにしようというように話題を切り替えた。
何だか様子が可笑しい。
こういう反応が、前にもあったような・・何だかデジャブ。
何時だったかなあ・・・・
秋姉の友達とは喧嘩しない?とか今日も監督元気だった?とかいう質問を、半ば適当にうん、とか大丈夫とか適当に答えながら記憶を摸索した。
(ああ、あの時か・・・・)
秋姉が、友達の結婚式から帰って来た時と、一緒なんだ。


『秋姉、おかえり』
 秋姉が帰ってくると、玄関で待っていた俺はまっ先に秋姉を出迎えた。
だけど、何だか朝と様子が違っていた。
『あき、ねえ・・・・?』
明るいオレンジ色の礼服を着込み、薄い化粧を施した秋姉は太陽のような笑顔で行ってきますと家を出ていった。 


春風吹き、桜の花が散るころ(風春)
気付いた時、何かが終わった。
気付いてはいけないことだったんだって、今度はそんなことに気付いた。
気付かなければよかったのに・・・・って、今更後悔したって、もう遅いのに。
気付いたことで、他の何かを犠牲にしたことを、後悔したって・・・・・・もう、遅いのに。







 眠い、眠すぎる。
時計を見れば日付が変わる時刻に突入していた。
うげ、と呟いたところで携帯電話が新着メールが届いたことを伝えた。
みれば、春奈の恋人である風丸からのメールが2,3件ほど届いていた。
『いくらなんでもあんまり寝ないのは体に毒だ、もう寝なさい。』
まるで兄がかけてくれるような言葉に、頬が緩んだ。
確かにこれで夜勤で夜を明かすのは5度目だ。
春奈ははふぁ・・・・と欠伸をした。
そうだよね、体に悪いもん。
もう帰るか・・・・とも帰宅案を出してみるも、この時間に家に帰って寝て・・というのはなんだか億劫に感じられた。
ましてやもうこの時刻だ、学校で寝てしまった方が効率が良いのではないのか。
「うん、そうと決まれば寝ちゃおう!」
早速具備していた寝袋に入りこみ、瞼を閉じる。
最初は妙に興奮して寝付けなかったが次第に眠気におされ、意識を睡魔に連れて行かれて直ぐに眠りの世界へと溶け込んでいった。



「春奈、起きろ。春奈」
 聴きなれた声と共に自分を優しく揺らす振動に春奈はぱっちりと目を覚ました。
するとそこには燃えるような赤いルビーの瞳が春奈を映していた。
自分とは全く異なる顔、共通点などないに等しい

春の言の葉に華は咲く(佐久春)
柔らかな風に桜の花びらが舞う。
日光は温かく地上に降り注ぎ、草木は青々と生い茂る、そんな楽園を絵に描いたような風景。
此処は雷門中学校。
時は昼休み、麗らかな午後の休息をとろうと、生徒たちはそとには出ても、元気一杯遊ぶなどと言うことはせず、外で日光浴をしていた。
皆まったりしようぜ~なこの空気のなかで、只一人、血相変えて走る女子生徒が居た。


はるのゆうわく3


 だだだだっだだだだだだだ!!!
なんか中途半端なのかそうじゃないのかよくわからない足音が除けよといわんばかりに周囲の人間を威圧する。
こんな足音を立てるような人間に立ち向かえる人間が当然居るわけも無く、皆が皆、どうぞどうぞとその要注意人物のためにと道を譲った。
ホントマジ勘弁してください。
「うわぁ助かるなわあ。皆が道を譲ってくれる」
本人、春奈はその積りは無かったようだが。
校庭までの道のりは若干遠い。
その過程で春奈は眠ってーーーーしまわなかった。
うららかな春の誘惑にも、春奈には全く敵わないようである。
調度桜並木を通りかかってところでドガッと何かを蹴り飛ばした。
「ぎゃぶっ」
「あれ?私、何か蹴った?」
そこでようやく走るのを止めた。
随分と柔らかい感触だった。
まるで人間のような弾力があった気がする。
そして蛙が押しつぶされたような断末魔の悲鳴・・・・
もしかしてーー
「誰?」
「佐久間だよ!!」
 春奈の足元でうずくまっていた佐久間が突っ込んだ。
そしていてて、と右腹を擦った。
どうやら春奈が蹴ったのは佐久間の横っ腹だったらしい。
だが春奈はまるで悪びれた様子は無く、
「頭じゃなくて良かったですね」
などと軽口を叩いている。
だが佐久間からすればたまったもんじゃなかった。
「あのなあっこっちは昨日から睡眠とって無くて疲れてたんだよっでも授業中に寝るわけにも行かないから、昼休みのじかん使って仮眠とってたのに、急に来られてカッターシューズで横っ腹蹴られて安眠妨害されたうえに謝罪も無いってどういう了見なんだよっ」
一気に捲くし立てた佐久間


人ならず鬼なるものが紡ぎたるは春の音色(鬼春)
私の日常というのは、お兄ちゃんがいて、サッカー部の皆が居て、両親が居て、やっと幸せなんだなあ、て感じるものなんだとおもう。
それは凄く楽しくて、幸せすぎて、でも、それが当たり前すぎて其の日常が『壊れる』ということなんて微塵も考えてなかった。
ましてやたった一言で「日常」がもう戻ってこなくなるなんて、思わなかったからーーーー


「ずっと前から好きでした。付き合ってください!」

春風吹き、桜の花が散る頃(風春)
風が、暖かい
昨日までとは打って変わったこの気温には全く驚かされるものがある。
春になってから稀に見る暴風+寒風で、外に出るのを流石に止めたほどなのだ。
山から吹き降ろす風が都会の風とはいかに違うかを知ってもらいたい・・・・とフェーン現象を知らない都会っ子に対する怨嗟まで出来た。
しかし、この気温、湿度は最高だ。
春奈は学生鞄片手に大きく伸びをした。
次いでとばかりに深呼吸すぅーーはぁーー。
「気持ちいい~」
ほーー、ほけきょ
何処からか鶯のさえずりが聞こえた。
もうすっかり春なのだ。
春奈がふと上を仰ぐと、木々の幹に薄いピンク色の絨毯が掛かっている。
「ふぁ!?」
吃驚してバランスを崩し、


春風吹き桜の花が散る頃(風春)注意・あんまみないほうがいいです
ソレが嘘なら、どんなによかっただろう?
またソレがなかったことになるならどんなにいいだろう?
もしも、もしもなんて、考えても考えても空しいばかりで全く意味のないことだって、解かってる。
でも、自分で解かってるつもりで、実は解かっていないのかもしれない。
何が、どうして、どうなった?→さあ?自分で考えろよ
 で、考える。
空しいと解かっていて、考えても答えが出ないと知っていて。


(それが


     嘘なら

                            い
                    い
  
                                   のに、


じゃあ?

                                       それで?

だ           か                 ら?


で?

           それから?


                    彼女
の 

                          きもち、

                                かんがえ

た?



               )

                                               ってね

わかってる

いや何が?

解かってない

へえ、何が?


わかってる。だから何が?いややっぱりわかってない。一体何が?

自問自答を繰り返し、
繰り返し

クリカエシ、

結局結局解かってない

どうして俺から離れていくんだ?

どうして俺が嫌いなんだ?

どうしてそんな哀しそうに泣くんだ?


彼女の耳を塞ぎたくなるような辛辣な言葉のひとつひとつが全部針のように鋭利で

俺の体中を突き刺してきて

逃げて

にげて

ニゲテ


彼女の前から消え去って


彼女の気持ちを考える


解からない、解からないんだよ


俺の気持ちを最優先


「私は、貴方が、嫌い」
嫌い
キライって、ナニ?
きらいきらいきらい
それが、ナニ?
なんなんだ?
お前が、春奈が俺を嫌いでも、俺は春奈を愛してる
好きだよ好き、大好きなんだ

「嫌い、嫌い大嫌い。」

止めて、止めて

もう言わないで

「私に、近づかないで」



どうして、俺を嫌う?

俺のしたことが気に食わない?

何が嫌で何が好いこと?

許容範囲って、りょう



春雨に打たれる剣は鋭く、清らかに(剣春)
「剣城君!」
「はあ?・・・・なんですか、先生」

おわりです、中途半端小説