なぜ、メディアは当人が訴えたかった『年金の問題』を追求しない?

あれは、『焼身自殺』ということではないのではないか--。そんな気がするのだが、メディアは、どいうわけか一斉に新幹線の安全対策を問題にする取材報道へと走ってしまった。


自殺の理由は、『年金ではちゃんと生活が的ない。家賃も払えないではないか』と、周辺の人々に語っていたと言うことで、生活苦たったとされている。だが、ほとんどのメディアは当人が死んでまで訴えたかった『年金の少なすぎる問題』を追求することなかった。


●ただ死ぬだけなら大迷惑をかけなくても自殺はできた。


遺書はなかったと言うのが残念だったが、カラオケが好きだった宴歌歌手をめざしていたことがあるこの人が、生活に困窮していて行き詰まって、新幹線の中でガソリンを身に浴びて焼身自殺したのは、確かなことなのである。


死ぬ直前に、数千円を近くの婦人に上げると差し出し『早く逃げなさい』と言ったそうだが、当人は無一文で亡くなったと伝えられている。この人物は、なにも大勢を巻きこむことをしなくても焼身自殺はできたのである。


●生活ができないほど安い年金を政府に訴えたかった。


だが、これを『逃げろ』と忠告するような他人の心配をできる人物があえてやってのけたと言うのは、『自分の自殺によって世間を騒がせたい』と考えてのことだろう。


それはなぜかと言えば、『年金が少なすぎてちゃんと生活ができない』ことを世の中に訴えたいと思ったからに相違ない。世間というより、政府に対して文化的であることはさておき、健康な生活ができないほど安い年金についてに訴えたかったからだろう。


●焼身自殺は政治的な目的を持った『自爆テロ』だった!


そうだとすれば、この人物の新幹線車内での焼身自殺は、政治的な目的を持った『自爆テロ』だったと言うことになる。自身の生命をかけて年金問題を政府に訴えたわけである。


自分は、この年金があまりにすくなく、住む家が無くて家賃を払う身となれば、単身では生活できないという現実問題を、新幹線の安全問題が一段落したあとでメディアが取りあげると思っていたが、結局、今日になっても未だに『安全対策をどうする?』といった取り扱いしかメディアがしないのに心外になった。


●政府は国民に最低限度の生活を保障する憲法に違反。


実は、生活保護という制度もあるのだが、これを申請すると親戚中に問い合わせが行ってしまい大恥をかくことになり、その挙句に、親類がいるならそちらから生活費の支援をしてもらえ、といった騒ぎになるのだ。


とんでもないのが生活保護制度であり、このことでも政府は国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する(第25条)ことになっている憲法に違反しているのである。


●政府は毎日延々と戦争議論をしている場合ではない!


日本にそれを保障する経済力がないのであれば、致し方がないとも言えることだが、政府の財政は約1000兆円の赤字だとされているものの、国民の富裕層は約1600兆円もの資産を保有しているのである。


生活苦が原因で自殺する人々が増え、結婚できない若者が増え、人口が減少するまでになっているのに、政府は毎日延々と戦争になったらどうするかを議論しているのはなんたることか!


●メディアも今度の事件を単なる焼身自殺の記事で終わらせてはならない。道ずれが出てしまうのを知りながら、新幹線の車両のなかで『焼身テロ』を敢行した老人の悲しい意志を尊重して、年金生活や生活保護の問題を大きな社会問題として取り扱うべきではないのか。