アービング・S・コップの短編小説を基に1953年にジョン・フォードが監督した『太陽は光り輝く(The Sun Shines Bright)』は、20世紀初頭の南部ケンタッキーを舞台にしたヒューマン・ドラマです。
本作では、「八十日間世界一周」のヴィクター・ヤングが音楽を担当しております。
医者の息子ジョン・ラッセル(役名:アシュビー・コーウィン)が、故郷ケンタッキーの小さな町に蒸気船で戻ってきます。
ジョン・ラッセルが家に戻ると、そこにはラッセル・シンプソン(役名:ルート・レイク医師)の養女となった、南軍の老将軍ジェームズ・カークウッド(フェアフィールド将軍)の孫娘アーリーン・ウィラン(役名:ルーシー・リー)が居ることを知ります。
彼女は、老将軍の息子と紅灯宿で知り合った女性との子であることから、老将軍は彼女を孫として認めておりません。
アーリーン・ウィランを一目見た途端、ジョン・ラッセルは彼女に心を奪われてしまいます。
法廷では、判事再選を目指す元南軍ビューグル兵チャールズ・ウィニンジャー(役名:ビリー・プリースト判事)が、アフロ・アメリカンのアーネスト・ホイットマン(役名:アンクル・プレズ・ウッドフォード)の甥エルジー・エマニュエル(役名:ユー・エス・ウッドフォード)を仕事に就かせる判決を下す等、町に起こる諸事を次々と処理します。
或る日、町を歩いていたアーリーン・ウィランが、グラント・ウィザース(役名:バック・ラムジー)に侮辱されたことで、ジョン・ラッセルはグラント・ウィザースと鞭で喧嘩を始めますが、駆け付けたチャールズ・ウィニンジャーが彼等を引き離します。
老将軍ジェームズ・カークウッドとの会合の為に、壁から外されて部屋に置かれた肖像画を見たアーリーン・ウィランは、自分の母親が誰であるかを知ります。
一方、トレヴァー・バーデット(役名:ルーフ・ラムスアー)の娘が暴行を受けたことに関連して、嫌疑をかけられたアフロ・アメリカンのエルジー・エマニュエルが逮捕されたことで、町の人々の間に緊張が高まります。
その様な中、チャールズ・ウィニンジャーは果敢に暴徒と対峙し、熱意溢れる弁論で衝突を鎮めることに成功します。
後に、グラント・ウィザースの姿を見たトレヴァー・バーデット(役名:ルーフ・ラムスアー)の娘は、彼が真の襲撃者であることを皆に告げます。
或る日、疲れ果てた姿で町にやって来たアーリーン・ウィランの母親ドロシー・ジョーダンが、エヴァ・マーチ(役名:マリー・クランプ)の営む紅灯館で息を引き取ります。
正式な葬式を出してくれることをエヴァ・マーチから依頼されたチャールズ・ウィニンジャーは、町民に白い眼で見られるのを覚悟の上で彼女の申し出を承諾します。
判事の投票日、チャールズ・ウィニンジャーに救われたことに気付いた嘗ての暴徒達は、彼に票を投じる為に投票所に押し掛けます。
その結果、対立候補のミルバーン・ストーン(役名:ホレス・K・メイデュー)との票差が無くなり、同票となったことが町の人達に告げられます。
ジョン・フォード監督が最右翼に自薦する本作は、カンヌ映画祭上映時にチャールズ・ウィニンジャーが暴徒と対峙するシークエンスが製作会社によりカットされたバージョンが上映されたとのことです。
1990年にカット部分が修復された現在は、完全版での鑑賞が可能となりましたが、カットされたバージョンでは終盤の投票シーンの理解や解釈が異なるのではないかと考えます。
現在の眼でこの映画を観ると、チャールズ・ウィニンジャーが人本主義を果敢に貫く場面が削られて上映されていた事実に、時の移ろいを感じずにはおれません。
そのことから、完全版鑑賞以前と以後では、本作全体の評価に影響が生じる可能性が有るのかも知れません。
この映画に於けるジョン・フォード監督は、同じ目線の高さで敗者である南軍の退役軍人、アフロ・アメリカン、紅灯館の人々を映し出している様に思います。
和田誠は、南部の判事チャールズ・ウィニンジャーがアフロ・アメリカンのエルジー・エマニュエルの冤罪をすすぐ孤高の姿が、『アラバマ物語』(監督:ロバート・マリガン 1962)でグレゴリー・ペックが演じた弁護士に約10年先んじていることを指摘しております(※2)。
1992年発刊の著書「素晴らしきかな映画」(※1)の中で、本作をジョン・フォード監督の”My Favourite 10”の7位にランクした野口久光は、ジョン・フォード監督作品の特徴が「・・詩的な映像感覚によって、ハリウッドの商業主義の制約を超えた高質なヒューマン・ドラマ・・」であると指摘しております。
その意味で、『太陽は光り輝く』はジョン・フォード監督作品を代表する映画ではないかと考えます。
人々が無言で葬列に加わる展開とラストのパレードが心の襞に滲み込む、孤高のヒューマニストを描いたジョン・フォード監督の映像芸術として、これからも繰り返し観続けて行きたいと思うマスターピース作品です。
(※1)野口久光「素晴らしきかな映画」晶文社、1992年、pp331~332
1.『怒りの葡萄』(1940)
2.『荒野の決闘』(1946)
3.『静かなる男』(1952)
4.『我が谷は緑なりき』(1942)
5.『駅馬車』(1939)
6.『男の敵』(1935)
7.『太陽は光り輝く』(1953)
8.『コレヒドール戦記』(1945)
9.『アイアン・ホース』(1924)
10.『若き日のリンカーン』(1939)
(※2)和田誠「シネマ今昔問答」新書館、2004年、pp129
PS:
登場(演奏)曲↓
”My Old Kentucky Home”
”Sweet Genevieve ”
”Dixie ”
”Swing Low, Sweet Chariot ”
”Deep River ”
”Tenting on the Old Camp Ground ”
”Marching Through Georgia ”
”Hail, Hail, the Gang's All Here ”
§『太陽は光り輝く』
ラッセル・シンプソン、アーリーン・ウィラン↑
チャールズ・ウィニンジャー↑
アーネスト・ホイットマン、エルジー・エマニュエル↑
チャールズ・ウィニンジャー↑
ジョン・ラッセル、アーリーン・ウィラン↑
アーリーン・ウィラン↑
ドロシー・ジョーダン↑
暴徒と対峙するチャールズ・ウィニンジャー(右端)↑
チャールズ・ウィニンジャー↑









