『ジャージー・ボーイズ(Jersey Boys)』は、ザ・フォー・シーズンズの経歴を基にしたトニー賞受賞の同名ミュージカルを、クリント・イーストウッド監督が2014年に映像化したミュージカル映画です。

本作は、キネマ旬報ベスト・テン外国映画年間ベスト・ワンに輝いております。

 

1951年のニュージャージー州で、床屋の息子ヴィンセント・ピアッツァ(役名:トミー・デヴィート )は弟のマイケル・ロメンダ(役名:ニック・マッシ)とその友人マイケル・ロメンダ(役名:ニック・マッシ)とトリオで演奏していました。

ヴィンセント・ピアッツァは、その歌声で近隣を騒がせていた16歳のジョン・ロイド・ヤング(役名:フランキー・ヴァリ )と出会います。

ギャングのクリストファー・ウォーケン(役名:ジップ・’ジップ’・デカルロ)に心酔しているジョン・ロイド・ヤングは、 或る夜、ジョン・ロイド・ヤング達を誘って金庫を狙いますが警察に逮捕されてしまいます。

ジョン・ロイド・ヤングは釈放されますが、ヴィンセント・ピアッツァには懲役6か月の実刑が言い渡されます。

ヴィンセント・ピアッツァは釈放後グループを再結成し、ジョン・ロイド・ヤングをリードシンガーに加えます。

出演するライブ・ハウスでジョン・ロイド・ヤングは心惹かれたレネー・マリーノ(役名:メアリー・デルガド )を夕食に誘うと、短い交際期間の後に二人は結婚します。

 「ザ・フォー・ラヴァーズ」と名乗っていたグループは、マイケル・ロメンダ脱退の後、専属の作曲家を探し始めます。

ヴィンセント・ピアッツァの友人のジョーイ・ルッソ(役名:ジョー・ペシ )は、有能なシンガー・ソングライターであるエリック・バーゲン(役名:ボブ・ゴーディオ )をライブ・ハウスに誘い、グループの演奏を聴かせます。

ジョン・ロイド・ヤングのボーカルに感銘を受けたエリック・バーゲンは、即座に参加を決意します。

バンドは次々とデモ・テープを録音して各方面に働きかけますが、悉く空振りに終わります。

その様な或る日、ニューヨークのプロデューサーのマイク・ドイル(役名:ボブ・クリュー )が提案した契約にメンバーは署名します。

しかし、彼等はすぐに、それがバック・ボーカルに限定された契約であることに気付きます。

プロデューサーのマイク・ドイルは、グループに足りないものは個性だと指摘します。

ボウリング場の看板にインスピレーションを受けたバンドは、「ザ・フォー・シーズンズ」に改名し、エリック・バーゲンが書いた新曲「シェリー(Sherry)」に手応えを感じた彼等は電話越しにマイク・ドイルに聴かせて、マイク・ドイルにレコーディングを承諾させることに成功します。

 「シェリー」は全米チャート1位を獲得し、続く「恋はヤセがまん(Big Girls Don't Cry )」、「恋のハリキリボーイ(Walk Like a Man )」も全米1位を獲得すると、テレビ出演やホール・コンサートに引っ張りだことなったバンドは、一躍大スターの道を駆け上がります。

しかし、多忙の影響でジョン・ロイド・ヤングは自宅を留守がちになり、妻・レネー・マリーノとの仲が急速に悪化して離婚に至ります。

尚も好事魔多く、ジョン・ロイド・ヤングはエド・サリバン・ショーの出演前に、ヴィンセント・ピアッツァが高利貸しをしているギャングのドニー・カー(役名:ノーマン・ワックスマン )から15万ドルの借金があることを知ります。

ジョン・ロイド・ヤングはクリストファー・ウォーケンを頼り、ドニー・カーにグループとしての借金返済を認めてもらいます。

ヴィンセント・ピアッツァの粗暴で無責任なことや家族に会えないことに苛立ちの頂点に達したマイケル・ロメンダは、グループ脱退を決意します。

 借金を返済するために常にツアーを繰り返していた彼等は、スタジオ・ミュージシャンを雇うことで「フランキー・ヴァリ・アンド・ザ・フォー・シーズンズ」となり、エリック・バーゲンはソングライター兼プロデューサーとしてサポートする立場に変わります。

ジョン・ロイド・ヤングは元妻のレネー・マリーノから、麻薬中毒となった娘のフレイヤ・ティングレイ(役名:フランシーヌ・ヴァリ)が家出したことを知らされます。

疎遠になっていた娘と再会したジョン・ロイド・ヤングは、彼女の思春期に父親として寄り添えなかったことを後悔します。

数年後、とうとうグループはヴィンセント・ピアッツァの借金を完済します。

しかし、同時期に娘・フレイヤ・ティングレイが薬物過剰摂取で死去したこと愕然とします。

エリック・バーゲンはジョン・ロイド・ヤングのソロ・シングル曲を作曲しますが、当初喪中であることからジョン・ロイド・ヤングは吹込みに躊躇しましたが、最終的には同意します。

 ソロ・デビュー曲「君の瞳に恋している(Can't Take My Eyes Off You)」は、商業的に成功を収めると共に多くの歌手にカバーされるスタンダードとなります。

1990年、ザ・フォー・ シーズンズはロックの殿堂入りを目前としています。 

バンドはステージで「悲しきラグ・ドール(Rag Doll)」を演奏し、20年以上振りに一緒に演奏をすると、 夫々のメンバーは順番に聴衆に語り始めます。

音楽が消えると、ニュージャージー州の街灯の下でドゥ・ワップを歌う4人の姿がスクリーンに現れます。

 

1975年発売のLP2枚組「ザ・フォー・シーズンズ・ストーリー 」が音楽雑誌の懸賞で当たったのをきっかけに、フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズを愛聴する様になりました。

当時「シェリー」以外の曲は殆ど知らなかったのですが、LP2枚組を聴いていくうちに、ボブ・ゴーディオ作曲、チャーリー・カレロ編曲の素晴らしい曲群とハーモニーの素晴らしさに夢中になりました。

その当時、オールナイト・ニッポンで聴いていたシュガー・ベイブ時代の山下達郎が、グループ解散後のソロ・デビュー作「サーカス・タウン」をチャーリー・カレロをプロデュ-サ-・編曲者に招いて吹き込んだとの放送を聴いたこともあり、ザ・フォー・シーズンズの音楽について別の意味でも注目するようになりました。

好きな曲は多いですが、特に愛聴しているのが「悲しき朝やけ(Dawn)」、「悲しきラグ・ドール(Rag Doll)」、「君のもとへ帰りたい(Walkin' My Way Back To You) 」、「オパス 17(Opus 17) 」、「君はしっかり僕のもの (I’ve Got You Under My Skin)」、「ウイル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロー(Will You Still Love Me)」、「ロニー(Ronnie)」、「サイレンス・イズ・ゴールデン(Silence is Golden)」、「アローン(Alone)」になります。

ある時、クリント・イーストウッド監督がザ・フォー・シーズンズに関するミュージカル『ジャージー・ボーイズ』(2014) を映画化するとの報に接し、封切り初日の席を予約して観に行きました。

映画では、何よりも フランキー・ヴァリの3オクターブの歌声を見事に再現したジョン・ロイド・ヤングに感心しましたが、コーラスも驚きの水準で感動の連続でした。

個人的には、教会の残響を活かした3人のコーラス・シーンや、才能溢れる音楽家達の鞘当てであるボブ・ゴーディオ(作曲&キーボード)との出会いのシーンを何度も繰り返し観ております。

この映画を観るまでニュー・ジャージー州の意味が判りませんでしたが、調べたところによるとアメリカでも様々な国からの移民や宗教が多様に混在する州とのことですので、書籍知識レベルですが、ひと頃のニュー・オリンズ、シカゴ、メンフィスの様に、色々な文化(音楽)が街に溢れていたダイナミックなエリアだったのではないかと思いました。

この作品を観て感じた特徴としては、フランキー・ヴァリのソロ曲を含めた彼等のヒット曲が『グレン・ミラー物語』(監督:アンソニー・マン 1954)の様にストーリーと巧みに結びついたミュージカル・バイオグラフィーの伝統に加え、登場人物が時折カメラ目線で観客に語りかけることで、これまでとは一味違うミュージカル映画としての新しさも感じました。

有名グループの歴史を縦糸にして、横糸には他所者には簡単には理解し難いニュー・ジャージー出身者同士のメンバーの結束と確執、フランキー・ヴァリの家族の苦悩と絆を巧みに描いていることからも、本作は映画と音楽を語る時に欠かせない作品ではないかと考えます。

 

PS 2019年9月11日に、昭和女子大人見記念講堂でフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのコンサートを聴きました。

85才とは思えぬ衰えを全く感じさせない歌唱に、驚きと感動の世界に浸らせて貰うことが出来ました。「悲しきラグ・ドール(Rag Doll)」、「サイレンス・イズ・ゴールデン(Silence is Golden)」、 「君はしっかり僕のもの(I’ve Got You Under My Skin)」、「オパス 17(Opus 17)」、「悲しき朝やけ(Dawn)」等の大好きな曲を生で聴くことが出来ました。

この文章は2018年4月掲載の内容に粗筋を加えて大幅に内容を加筆・変更した差替えです。

 

 

§『ジャージー・ボーイズ』

ヴィンセント・ピアッツァ、ジョン・ロイド・ヤング(奥のカウンターにレネー・マリーノが立っている)↑

クリストファー・ウォーケン、ヴィンセント・ピアッツァ、ジョン・ロイド・ヤング↑

エリック・バーゲン、ジョン・ロイド・ヤング、ヴィンセント・ピアッツァ、マイケル・ロメンダ↑

The Angelsが歌う「My Boyfriend’s Back」を舞台袖で見つめるエリック・バーゲンとヴィンセント・ピアッツァ↑

レネー・マリーノ、ジョン・ロイド・ヤング↑

フレイヤ・ティングレイ(左)↑

ジョン・ロイド・ヤング、ヴィンセント・ピアッツァ、マイケル・ロメンダ、エリック・バーゲン↑

 

§ザ・フォー・シーズンズ関連

【左上】2枚組LP「The Four Seasons Story」(1975)

【左下】CD(3枚)&DVD(1枚)「The Music Of Frankie Valli &The  Four Seasons 」(2007)

【右上】Ticket「Frankie Valli &The  Four Seasons Japan Tour 2019」(於:昭和女子大学人見記念講堂 2019/9/11)

【右中央】CD「ベスト・オブ・フランキー・ヴァリ Frankie Valli Greatest Hits」(1996)

【右下】映画パンフレット