ジョン・フォード監督が1949年に撮った 『黄色いリボン(She Wore A Yellow Ribbon)』 は、『アパッチ砦』(1948)、『リオ・グランデの砦』 (1950)と並ぶジョン・フォード監督の「騎兵隊3部作」の第2作目の映画になります。

1876年、辺境軍の小さな駐屯地であるスターク砦で6日後に退役を迎える騎兵隊大尉ジョン・ウェイン (役名:ネイサン・ブリトリス)に、最後の任務が与えられます。
それは、ジョージ・アームストロング・カスター将軍敗北後の居留地から、シャイアン族とアラパホ族を掃討することです。

そんな中、ジョン・ウェインは指揮官ジョージ・オブライエン(役名:マック・アルシャード)の妻ミルドレッド・ナットウィック(役名:アビー・アルシャード)と姪のジョアン・ドルー(役名:オリヴィア・ダンドリッジ)を、東部行きの馬車駅に護衛しながら軍を進める任務を負います。
南軍の騎兵大尉だった主任偵察兵のベン・ジョンソン(役名:タイリー軍曹 )を先導に、ジョン・ウェインの長年の友人であり指揮官であるジョージ・オブライエンの援護を受けて駅に向かいます。

一方、彼の部隊将校であるジョン・エイガー(役名:フリント・コーヒル中尉)とハリー・ケリー・ジュニア(役名:ロス・ペネル少尉)は、互いにジョアン・ドルーに想いを寄せて鞘当てを繰り広げておりますが、ジョン・ウェインの退役に不安を抱いております。

彼等が馬車駅に到着すると、婦人達が乗るはずの駅宿が焼き払われていたことから、ジョン・ウェインはジョン・エイガーの部隊を河向こうに残し、スターク砦に戻った後に退役を迎えます。

従卒ヴィクター・マクラグレン(役名:クィンキャノン曹長)を振切り、 カリフォルニアに旅立ったジョン・ウェインでしたが、ジョン・エイガーの部隊が気になって河向こうに行ってみると部下達は苦境に立たされています。

退役後もジョン・ウェインは現場で任務を続ける副官達と共に隊員としての任務を継続します。

これ以上不必要に命が奪われるのを見たくないジョン・ウェインは、旧友である長老ジョン・ビッグツリー(役名:ポニー・ザット・ウォークス酋長)と和解しようと決意しますが、カスター将軍との勝利とバッファローの出現を反撃の瑞兆とする若いネイティブ・アメリカン達が主導権を握っていることから、長老達の意見が封じられていることを知らされます。
ジョン・ウェインは争いを回避する為に、ネイティブ・アメリカンの馬の群れを追い払います。

これにより、当面の争いを回出来たことに安堵したジョン・ウェインは西に向かって馬を進めますが、陸軍省の辞令を携えたベン・ ジョンソンが彼の後を追います。 

 

主題曲として全編に流れるアメリカ民謡「黄色いリボン」は、遠く離れる恋人の無事を祈る為に身に付けるリボンを歌っておりますが、映画では騎馬兵の制服に用いられる黄色いスカーフにも掛けております。

この映画では、旧世代の兵士である退役直前の大尉ジョン・ウェインと飲んだくれ曹長ヴィクター・マクラグレンの2人に対して、ジョアン・ドルーと恋の鞘当てを繰り広げる新世代の中尉ジョン・エイガーと少尉ハリー・ケリー・ジュニアの2人が対照的に描かれます。

川本三郎との共著「大いなる西部劇」の中で、逢坂剛は騎兵隊3部作は個人が描かれることの多い西部劇と言うよりは、軍隊組織を描いた戦争映画に近いとしておりますが(※)、自分はこれらの作品にはジョン・フォード監督の従軍体験が反映しているのではないかと思うことがあります。

若き将校に経験を積ませようとする指揮官ジョージ・オブライエンの指示に対し、新旧両世代の心が不安の翳に覆われます。

その様な状況の中、幾多の危機を乗り越えて来たであろうジョン・ウェインが、西海岸に旅立つ予定を変更し、退官祝いに貰った時計で分刻みで最終日深夜0時迄「命を護る引継ぎ」を全うする姿には感銘を覚えます。

あと、バッファローが大平原を闊歩し、ネイティブ・アメリカンとの信頼が存在していた世代を代表する曹長のヴィクター・マクラグレンを、営倉に懲罰収容させることで無事退官の日を迎えさせてやろうとするジョン・ウェインの荒々しい心遣いを描いたシークエンスは、観る度に心が動かされます。

後に残る騎馬兵の無事を祈るジョン・ウェインの姿と、彼を慕い続ける兵士達の姿が心に刻まれる映画として観続けて行きたいジョン・フォード監督作品です。

 

(※)新書館、2001年、PP27~28

 

§『黄色いリボン 』

ジョン・エイガー、ハリー・ケリー・ジュニア ↑

ジョアン・ドルー 、ジョン・ウェイン↑

ジョン・ウェイン、ベン・ジョンソン↑

(左から)ジョアン・ドルー 、ジョン・エイガー、ジョン・ウェイン↑

ジョアン・ドルー 、ミルドレッド・ナットウィック↑

ジョン・ウェイン、ジョージ・オブライエン↑

ジョン・ウェイン、ヴィクター・マクラグレン↑

 

ハリー・ケリー・ジュニア、 ジョアン・ドルー 、ジョン・エイガー↑

(右から)ジョン・ウェイン、ジョアン・ドルー ↑