『或る殺人』(1959)を撮ったオットー・プレミンジャーが1954年に監督した『帰らざる河(River of No Return)』は、ゴールドラッシュに沸く西部を舞台にしたマリリン・モンロー主演作品になります。

 

ロバート・ミッチャム(役名:マット・コールダー )は、人助けの際に人を殺めてしまった罪による服役を終え、ゴールドラッシュで沸く1875年のアメリカ北西部の町にやって来ます。

9歳になる彼の息子トミー ・レティグ(役名:マーク・コールダー)は、街のサロンで歌っているマリリン・モンロー(役名:ケイ)が世話をしています。

ほぼ初対面のトミー ・レティグに、ロバート・ミッチャムは農場で2人の生活を愉しもうと提案します。

マリリン・モンローの婚約者でギャンブラーのロリー・カルホーン(役名:ハリー・ウェストン ) は、ポーカー賭博で得た金鉱の権利を登記する為に、カウンシル・ シティに行くことを彼女に告げます。

彼等は丸太の筏に乗ってカウンシル・ シティに向かいますが、急流によって窮地に陥ったところをロバート・ミッチャムに救出されます。

一息ついたロリー・カルホーンは、ロバート ミッチャムのライフルと馬を譲ってくれるように頼みますが、ロバート・ミッチャムは拒絶します。

すると、ロリー・カルホーンはロバート・ミッチャムを打ちのめし、ライフルと馬を奪います。

ロリー・カルホーンの非道に憤ったマリリン・モンローは、ロバート・ミッチャムとトミー ・レティグの世話をする為に、ロバート・ミッチャムの家に居残り、ロリー・カルホーンの帰りを待つことを言い渡します。

しかし、ロリー・カルホーンが出発して間もなくネイティブ・アメリカンが農場を襲ってきたことから、3人は急遽農場を棄ててロリー・カルホーンの筏に乗り込みます。

その夜、彼らは河の畔で野営し、ロバート・ミッチャムとマリリン・モンローはロリー・カルホーンを追跡することについて議論します.

ロバート・ミッチャムは、マリリン・モンローが子供を危険に晒した男を選んだ理由を尋ねると、ロリー・カルフーンはロバート・ミッチャムとは違い、人を背後から撃ったことはないからだと言い放ちます。

彼等の話をトミー ・レティグが聞いていたことから、ロバート・ミッチャムは自分の過去を息子に話します。

河下りを続ける途中、ロリー・カルホーンを追っている金の探鉱者であるダグラス・スペンサー(役名:サム・ベンソン)とマーヴィン・ヴァイ(役名:デイブ・コルビー)は、マリリン・モンローに危険な河下りを諦めて馬旅で同行することを提案しますが、彼女は拒否します。

その後、馬旅の2人はネイティブ・アメリカンによって殺害されたことが判りますが、ネイティブ・アメリカンやマウンテン・ライオンの襲撃に対するロバート・ミッチャムの勇気や判断とトミー ・レティグやマリリン・モンローに対する優しい態度に、マリリン・モンローの頑なだった心が開き始めます。

最大の急流を乗り越えてカウンシル・シティに到着した3人は、ロリー・カルフーンと対峙します。

ロリー・カルホーンを殺そうとするロバート・ミッチャムに、マリリン・モンローはロリー・カルホーンに謝罪をさせるとし、独りで彼の居る酒場へと向います。

マリリン・モンローの説得で仕方なくロバート・ミッチャムが待つ雑貨店に向かったロリー・カルホーンは、ロバート・ミッチャムに発砲しようとします。

 

ラストでマリリン・モンローがピンクの靴を棄てるシーンが胸を打つこの映画は、人気絶頂期のマリリン・モンローが5回スクリーン上で歌うことと(※)、彼女の歌唱シーンを振り付けたコレオグラファ―がクレジットされていることからも、本作をマリリン・モンロー主演のアイドル・ミュージカル映画と見做すことも可能なのではないかと考えます。

あと、この映画の特色として感じることは、危険この上ない激流下りを柱とする迫力の映像の連続です。

冒頭の3分の1迄、野外のシーンがスクリーン・プロセスやスタジオ撮影を用いないシネマ・スコープのロケ映像であることに、本作に対する20世紀フォックスの並々ならぬ意気込みを感じます。

主役格の俳優が激流に揉まれる筏上シーンには、スクリーン・プロセスが使われておりますが、スタント俳優達の乗る筏が実際の激流に流される実写映像(遠景)には恐怖を感じます。

マリリン・モンローが筏を使ったロケ中に、足首に捻挫を負い松葉杖での撮影を余儀なくされたことや溺れそうになったことからも、撮影現場の厳しさが緊張感溢れる映像から窺い知れる様な気がします。

この映画では、止むを得ない事情により背後から狙撃した父・ロバート・ミッチャムに、息子・トミー ・レティグやマリリン・モンローが抱く不信の念が、危険な河下りの状況下で直面する困難や事件を乗り切るうちに剥がれ、敬意へと変化するというロード・ムービー的な側面がある様に思います。

そして、ロバート・ミッチャムが背後から撃ったという後戻りの出来ない事実が、止むを得ない状況では起こり得るということをラストで描くことで、過去の軛(くびき)から解き放たれた3人が前へと進み出す姿に繋がっている様に感じます。

『狩人の夜』(監督:チャールズ・ロートン 1955)と『眼下の敵』(監督:ディック・パウエル 1957)の演技が個人的に強く心に刻まれるロバート・ミッチャムが、人気絶頂期のオーラを放ちつつ俠気溢れる人物を演じるマリリン・モンローと共演した骨太のミュージカル西部劇として好きな作品です。

 

(※)マリリン・モンローによって歌われる曲は「The River of No Return(帰らざる河)」、「I'm Gonna File My Claim」、「One Silver Dollar」、「Down in the Meadow」の4曲です。

 

§『帰らざる河(River of No Return)』

マリリン・モンロー↑

トミー ・レティグ、マリリン・モンロー↑

激流を下る筏↑

マリリン・モンロー、ロバート・ミッチャム↑

ロバート・ミッチャム、マリリン・モンロー↑

ロバート・ミッチャム、マリリン・モンロー、トミー ・レティグ↑

トミー ・レティグ、ロバート・ミッチャム、マリリン・モンロー↑

マリリン・モンロー↑

ロリー・カルホーン、マリリン・モンロー↑

マリリン・モンロー↑