スタンリー・ドーネン監督が1954年に撮った『掠奪された七人の花嫁(Seven Brides For Seven Brothers) 』を初めて観たのは、『サウンド・オブ・ミュージック』(監督:ロバート・ワイズ 1965)とのリバイバル上映を観た中学生の時でした。

 

19世紀半ばのオレゴンの山奥で6人の弟と男だけで暮らしているハワード・キール(役名:アダム・ポンティピー)は、久し振りに町へ降りてきます。

農場暮らしを厭わない連れ合いを探すべく町を彷徨いますが、運よく料理人のジェーン・パウエル(役名:ミリー)と一目惚れし合ったことにより、2人は一緒に山奥の農場に向かいます。

しかし、ハワード・キールが6人の男兄弟と一つ屋根の下で暮らしていることを聞かされていなかったジェーン・パウエルは、荒れ果てた家に暮らす粗野な兄弟達との暮らしに幻滅を覚えます。

ところが、オレゴンの料理店で荒くれ者達の中で気丈に働いていたジェーン・パウエルは、6人の兄弟達を手懐けて、身なりを整えさせると共にマナー教育を施します。

或る日、ジェーン・パウエルが弟たちと一緒に町へ買物に出たところ、彼等は町の娘になれなれしく接したことに怒った町の男達と喧嘩をしてしまいます。

そんな弟達の姿を憂いたジェーン・パウエルは、女性と接する際の男性としての嗜みを教え込み、意気揚々と祭りが行われる町に繰り出します。

始めのうちはジェントルにダンスを踊っていた兄弟達でしたが、納屋建て競争の際に鉄鎚を頭に落とされたことに激高した兄弟はボーイ・フレンド達と殴り合いになってしまいます。

夫々意中の女性を心に持ってしまった兄弟達は、冬が深まる山奥で意気消沈の日々を過ごしますが、そんな弟達にハワード・キールは古代ローマ人によるサビーヌの掠奪の故事を引き合いに出し、弟達を引き連れて町に向かいます。

掠奪された娘達を追いかけて来た町の人々は、銃声と彼女達の悲鳴によって引き起こされた雪崩によって、山奥へ続く道が春まで閉ざされてしまったことを知ります。

泣きじゃくる娘達の姿に憤慨したジェーン・パウエルは、ハワード・キールと兄弟達を家から追い出し、春の雪溶けまで家に入ることを禁じます。

 

これまで本作を数か月単位のローテーションで数十回は観てきましたが、何度観ても飽きることが無いです。 

1952年の『雨に唄えば』のスタンリー・ドーネン監督の傑作ミュージカルの一つとして有名な作品ですが、ジーン・デポール作曲、ソウル・チャップリン編曲による全曲名曲と言っても過言ではない美しく愉しい旋律が満ち溢れ、マイケル・キッド振り付けによる有名なアクロバット・ダンスの素晴らしさ、恋愛シーンの夢々しさ、雪に閉じ込められた日々から春が到来する歓び等、何度観ても新鮮な感動を覚えます(※)。 

この映画に登場する曲は全て好きですが、とりわけ個人的に好きな旋律を持った曲を挙げさせて頂くと下記になります。

 

◇Wonderful ,Wonderful Day

◇When You’re In Love

◇Goin' Co'tin

◇Lonesome Polecat

◇June Bride

◇Spring, Spring, Spring

 

あらくれ者の兄弟たちにマナーやダンスを仕込むシーンは、『サウンド・オブ・ミュージック』の「ドレミの歌」を思わせるものがあり、町の青年達との闘いのダンスは1961年のロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンズ監督の『ウエスト・サイド物語』(ラス・タンブリンは両作に出演)を連想したりします。 

「プルターク英雄伝」がこの映画の底辺にあるとのことですが、町の女性たちと山奥の兄弟達の絡み、そして親娘の情愛が1850年のオレゴンの山奥を舞台に繰り広げられる、愉しいミュージカル作品として愛しております。  

 

PS:『サウンド・オブ・ミュージック』はチロル地方に個人的な思い入れがある自分にとって大好きな作品ですが、2作の良い状態の色鮮やかなプリントを映画館のスクリーンで観ることが出来たのは、良い経験でした。 

 

◆上記記載以外の主な出演者は以下になります(上から下に夫々のパートナー毎に記載してあります):

 

☆ジェフ・リチャーズ(役名:ベンジャミン<元3A所属の野球選手>)

☆ジュリー・ニューマー(役名:ドルカス<「バットマン」(TVシリーズ 1966)のキャット・ウーマン役で出演>)

 

☆マット・マットックス(役名:カレプ<ブロードウエイ・ダンサー、『バンド・ワゴン』(監督:ヴィンセント・ミネリ 1953)でシド・チャリシーのダンス・パートナー役で出演>)

☆ルタ・リー(役名:ルース<映画、TVで幅広く活躍。エリザベス・テイラー、フランク・シナトラ等と共演>)

 

☆マーク・プラット(役名:ダニエル<ブロードウエイ・ダンサー「オクラホマ!」の舞台に出演>)

☆ノーマ・ドゲット(役名:マーサ)

 

☆ジャック・ダンボアーズ(役名:エフライム 'フラワー’<ニューヨーク・シティ・バレエ団プリンシパル。『回転木馬』(監督:ヘンリー・キング 1956)の旅芸人役で出演>)

☆ヴァージニア・ギブソン(役名:ライザ<ジョニー・カーソン・ショーに歌手およびダンサーとして出演。1957年のトニー賞にノミネート>)

 

☆トミー・ロール(役名:フランク<『キス・ミー・ケイト』(監督:ジョージ・シドニー 1953)に出演>)

☆ベティ・カー(役名:サラ<ブロードウエイのベテラン俳優>)

 

☆ラス・タンブリン(役名:ギデオン<『ウエスト・サイド物語』(監督:ロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンズ 1961)のリフ役で出演>)

☆ナンシー・キルガス(役名:アリス<本作で銀幕デビュー、『引き裂かれたカーテン』(監督:アルフレッド・ヒッチコック 1966)、『オクラホマ!』(監督:フレッド・ジンネマン 1956)にダンサーとして出演>)

 

(※)本作は1982年にブロードウェイで舞台上演されているとのことです。)

 

⇒本件は2018年1月に掲載されていた内容の大幅追記による差替えです。

 

§『掠奪された七人の花嫁(Seven Brides for Seven Brothers)