1936年に撮影され、1946年に戦禍を免れたオリジナル・フィルムの編集が為されたことで上映に至ったジャン・ルノワール監督の 『ピクニック』は、その映像美と終始弛(たゆ)むことの無いテンションを特徴とする映画ではないかと考えます。

そして、この作品はジャック・ベッケル、ルキノ·ヴィスコンティ、 アンリ・カルティエ=ブレッソンと言った錚々たる才能が助監督として、そしてジャック・プレヴェールが科白協力者に名を連ねる点でも「写真」 好きには興味の尽きない作品ではないかと思います。

 

静かな休日を過ごそうと郊外に出かけたパリの商店主アンドレ・ガブリエロ(役名:ムッシュ・デュフォー)と彼の家族は、ジャン・ ルノワール(役名:叔父ブーラン)が営む川沿いのレストラン「ブーラン亭」に昼食に立ち寄ります。 

店に居た客ジョルジュ・ダルヌー(役名:アンリ)とジャック・B・ブルニウス(役名:ロドルフ))は、アンドレ・ガブリエロのシルビア・バタイユ(役名:アンリエット)と妻ジャーヌ・マルカン(役名:マダム・デュフォー)に興味を持ち、アンドレ・ガブリエロとシルビア・バタイユの許婚であるポール・タン(役名:アナトール)に釣り竿を貸し、 女性二人をボートの川遊びに連れ出します。

シルビア・バタイユに執心のジャック・B・ブルニウスを押しのけて彼女とボートに乗ったジョルジュ・ダルヌーは、ジャーヌ・マルカンと ジャック・B・ブルニウスの乗ったボートと共に川に潜ぎ出でますが、途中でジョルジュ·ダルヌーは彼が「私室」としている人里離れた繁みにシルビア・バタイユを連れて行く為にボートを川岸に泊めます。

数年後、ジョルジュ・ダルヌーが独り「私室」を訪れると、そこには許婚のポール·タンと結婚したシルビア・バタイユ夫婦が'あの日の思い出の場所’でピクニックをしている姿が目に入ります。 

 

この映画で強く脳裡と網膜に刻まれるシーンは、ジャン·オノレ・フラゴナールや監督の父であるピエール=オーギュスト・ルノワールの絵画を思わせる、シルビア·バタイユがブランコに揺られる屈託の無い場面ではないかと考えます。

草上の昼食から二人が乗るボートへと続き、 川面に煌めく陽光から矢雨が長く突き刺さる映像へと変わりゆく緊張感の昂まりも、この映画を忘れられない作品としている様に思います。

人生の恋愛の訪れは、登場の仕方を含め回数や長さも千差万別で予測不能ではないかと思われますが、この作品は家族と許婚に囲まれてブランコ遊びに興じていたシルビア·バタイユに、俄かに通り過ぎた愛の嵐がジャン・ルノワールによる僅か40分の詩的な映像で描かれている映画だと思います。

これからも末永く観続けて行きたい映像芸術として好きな作品です。

 

§『ピクニック』

 シルビア・バタイユ↑

 シルビア・バタイユ↑

 シルビア・バタイユ↑

 ジャーヌ・マルカンとシルビア・バタイユ↑

 シルビア・バタイユとジョルジュ・ダルヌー↑

 アンドレ・ガブリエロ(左)↑

 シルビア・バタイユとジョルジュ・ダルヌー↑

 シルビア・バタイユ↑

雨が激しく打ち付ける川面↑

 数年後に出逢ったシルビア・バタイユとジョルジュ・ダルヌー↑

 夫となったポール・タン↑

 シルビア・バタイユ↑