七人の愚連隊(Robin And The Seven Hoods(監督:ゴードン・ダグラス 1964)は、フランク・シナトラが製作・主演(役名:ロボ)した禁酒法時代のシカゴ・ギャングの抗争をミュージカル映画にした異色作ではないかと考えます。

ビング・クロスビー(役名:アラン・A・デイル)、ディーン・マーチン(役名:リトル・ジョン)、サミー・デイヴィス・ジュニア(役名:ウィル)、ピーター・フォーク(役名:ガイ・ギズボーン)という錚々たる面々が、ジミー・ヴァン・ヒューゼンの旋律をネルソン・ドリルの伴奏に乗って吹き替え無しで歌う(含ピーター・フォーク)というだけでも、自分の様な音楽好きのミュージカル・ファンには嬉しい作品です。

原題はロビン・フッドと7人の義賊に準(なぞら)えておりますが、ロビン・フッドことフランク・シナトラ演じるロボと彼の仲間たちが、孤児院の理事であるビング・クロスビーと共に敵対するギャングから巻き上げた金を元手に慈善基金を設立することで、シカゴのボスの座を力ずくで奪ったピーター・フォーク演じるガイ・ギズボーンの一派を義賊の経営者として出し抜こうとします。

しかしながら、悪徳保安官を仲間に持つピーター・フォーク一派により逮捕されたり、殺されたボスの娘バーバラ・ラッシュ(役名:マリアン・ステイーブンス)の暗躍により、慈善基金が贋金取引の拠点にされてしまったりと、フランク・シナトラは義賊として持ち上げられたのも束の間、様々な困難に直面します。

この映画の特色については和田誠が指摘している通り、当時「歌吹替え」がブロードウエイ・ミュージカルの映画化で主流になりつつあったことから、フランク・シナトラは尊敬するビング・クロスビーと歌手仲間による吹替えの無いミュージカルを創ろうとしたのではないかと考えます(1)。

大御所男性歌手達に加えピーター・フォークも歌に参加するからかも知れませんが、ミュージカル映画に必須とも言える主役のフランク・シナトラに絡む恋愛ソングが無い点でも異色なミュージカル映画だと思います(2)。

この映画で好きなのは、ビング・クロスビーが伝道師姿でゴスペルを全員で合唱するシーンですが、ブルース・ブラザース(監督:ジョン・ランデイス 1980)でジェームス・ブラウンが演じたクリオファス牧師によるファンキーな説教シーンに通じる愉しさを感じます。

あと、ビング・クロスビーのドレス・アップをディーン・マーチンと共にフランク・シナトラが盛り立てる時に歌われる「スタイル(Style)」は、ビング・クロスビーへの畏敬の念がスクリーンから伝わるお気に入りのシーンです。

ギャングと慈善団体が登場するミュージカルであることから、ジーン・シモンズとマーロン・ブランド出演のミュージカル野郎どもと女たち(Guys and Dolls)(監督:ジョーゼフ・L・マンキーウイッツ)を自分は連想してしまいますが、ラスト・シーンがクリスマスであることからも、その映画にネイサン・デトロイト役で出演したフランク・シナトラのアイデアの基に、ビング・クロスビー主演の映画群と野郎どもと女たちがあったのではないかと想像します。

フランク・シナトラによる主題歌「マイ・カインド・オブ・タウン(My Kind Of Town)」が心に残る好きなミュージカル映画です。

 

1)山田宏一・和田誠 「たかが映画じゃないか」 文藝春秋社 1978 P53~54

 

2)映画で歌われる8曲に於ける登場歌手の歌唱曲数(フランク・シナトラの気遣いが感じられる気がします):

■フランク・シナトラ(3曲含メイン独唱:1曲

■ビング・クロスビー(3曲含メイン独唱:1曲

■ディーン・マーチン(3曲含メイン独唱:1曲

■サミー・デイヴィス・ジュニア(2曲含メイン独唱:1曲

■ピーター・フォーク(メイン独唱1曲)

 

PS 私事で恐縮ですが、ジミー・ヴァン・ヒューゼンの作曲した作品に愛聴曲が多く、これまで数多く聴いてきたレコード(CD)の多くに彼の作品が含まれております(以下抜粋)。

 

"It Could Happen to You"

"Like Someone in Love"

"Polka Dots and Moonbeams"

"Darn That Dream"

"I Thought About You"

"Nancy (With the Laughing Face)"

"But Beautiful"

"Imagination"

"Come Fly with Me"

 

§『七人の愚連隊