1944年に『我が道を往く』を撮ったレオ・マッケリー監督の『めぐり逢い(An Affair To Remember)』(1957)は、デボラ・カー(役名:テリー・マッケイ)とケイリ―・グラント(役名:ニッキ―・フェランテ)を起用して撮った、レオ・マッケリーが18年前に撮った『邂逅(Love Affair)』(1939)のセルフ・リメイクになります。
映画の中で登場するハリー・ウォーレンによる主題歌「An Affair to Remember(Our Love Affair)」は、その歌詞中の‘A Love Affair to Remember(想い起こす恋)’が、二人の愛を物語っている様に感じられる映画だと思います。
二人の恋は、富豪の二ーバ・パターソン(役名:ロイス・クラーク)との婚約を発表したプレイボーイの画家ケイリ―・グラントと、デボラ・カーがニューヨーク行きの大西洋航路の客船で出逢うことから始まります。
アメリカで婚約者リチャード・デニング(役名:ケネス・ブラッドレイ)が待つデボラ・カーは、ケイリ―・グラントの執拗なアプローチや周囲の眼を警戒しつつ、友人として夕食や甲板の話し相手として同じ時間を共にする日々が続きます。
南仏に寄港した際、ケイリ―・グラントはデボラ・カーに港街で余生を過ごす元ピアニストの祖母キャスリーン・ネスビットに一緒に逢いに行くことを促します。
そこで描かれるデボラ・カーとキャスリーン・ネスビットによる魂の出逢いとも言うべき心動かされる一連のシーンは、祖母の弾く「An Affair to Remember」とデボラ・カーへのプレゼントを約した純白のレース、マリア像への祈りや別れ際の涙の抱擁などと共に、デボラ・カーと孫が倖せになることを確信した祖母と2人の想いが結びついた印象深い場面ではないかと思います。
この映画で個人的に特に心に残るセリフは、デボラ・カーがキャスリーン・ネスビットの美しい終の棲家を羨んだ時に、キャスリーン・ネスビットが「ここは想い出を愉しむ処、貴女はまだこれから想い出を創る人」と言うシーンです。
そして船に戻った船上で二人が交す「私たちの航路は荒波に向かって舵を切り始めた」と言うセリフから、二人の人生は大きく変わり始めます。
それぞれの許婚が待つニューヨーク港の別れ際、二人は半年後のエンパイア・ステ―ト・ビルディングの展望台での再会と結婚を誓って別れます。
それぞれがパートナーとの婚約を解消して、画業と歌手業に専念しながら二人は再会の日を迎えますが、突如立ちはだかった運命の仕業により彼等は失意の日々を送ることになってしまいます。
変わらぬ想いとはうらはらにケイリ―・グラントから身を引いたデボラ・カーは、子供達の合唱指導者としての日々を過ごしますが、二人の運命はクリスマスの出逢いによりに大きく動くことになります。
ハリー・ウォーレンの優しい旋律を背景にしたこの作品は、出逢いと想い出が紡ぎ合わされた運命の恋愛とラスト・シーンの感動が繰り返し呼び起される好きな映画です。
§『めぐり逢い』
祖母(キャスリーン・ネスビット)との別れの抱擁↑
船の階段で立ち止まりキスをする↑
自然に閉まった窓のガラスにエンパイア・ステート・ビルディングが映っている↑