1937年にロイ・デル・ルースが監督したMGMミュージカル『踊る不夜城(Broadway Melody of 1938)』は、タップ・ダンスの名手エレノア・パウエル(役名:サリー・リー)とロバート・テイラー(役名:スティーブ・ローリー)によるダンサーと舞台演出家の恋愛が描かれた作品になります。
この作品は、エレノア・パウエルのタップ・ダンスの至芸と、『オズの魔法使』(監督:ヴィクター・フレミング 1939)出演以前のジュディ・ガーランドがクラーク・ゲイブルに捧げた歌唱「Dear Mr.Gable(You Made Me Love You)」が『ザッツ・エンターテインメント』(監督:ジャック・ヘイリー・Jr 1974)に取り上げられていることにより、MGMミュージカルの重要作として記憶される作品ではないかと考えます(※1)。
サラブレッド育成者の家に生まれたダンサーのエレノア・パウエルの力量を認めたロバート・テイラーが、彼の演出する舞台に彼女を大抜擢しようとします。
富豪と結婚した馬主でもある元歌手のビニー・バーンズ(役名:キャロライン・ウイップル)は、エレノア・パウエルの育てた競走馬に負けたことと、ロバート・テイラーとエレノア・パウエルに対する嫉妬の念から資金に物を言わせて舞台興業を潰しにかかります。
『ザッツ・エンターテインメント』では、本作の2年後に撮られた『踊るニューヨーク(Broadway Melody of 1940)』(監督:ノーマン・タウログ 1940)におけるエレノア・パウエルとフレッド・アステアによる壮絶なタップ・ダンス・デュオが紹介されておりましたが(※2)、スイング・ジャズのドラム・ソロに匹敵するのではないかと思わせるエレノア・パウエルのタップ・ダンスは、アン・ミラーと共にその卓越した伎倆によりMGMミュージカル・ダンサーの中でも独自の存在感を示しているのではないかと思います。
ロイ・デル・ルースの監督作品は、個人的にドリス・デイ主演のミュージカル『ムーンライト・ベイ』(1951)を思い浮かべてしまいますが、『踊る不夜城』はエレノア・パウエルとロバート・テイラーが繰り広げる恋愛模様が丁寧かつキュートに描かれた、MGMミュージカルの逸品として好きな作品です。
(※1)ジュディ・ガーランドは「Everybody Sing」でも、ジャズ・フィーリングに満ちた歌唱を聴かせてくれます。
情報によると、この映画のパフォーマンスが認められたことにより『オズの魔法使』出演の道が拓けたとのことです。
(※2)コール・ポーターの「ビギン・ザ・ビギン」で踊られる二人のタップ・ダンスは、解説のフランク・シナトラに「今後二度と観られないであろう」と言わしめた、無音部分になってからの掛け合いが素晴らしいスリリングなパフォーマンスだと思います。
あと、『ザッツ・エンターテインメントⅢ』(監督:バド・フリージェン、マイケル・J・シェリダン 1994)では、エレノア・パウエルの『踊る不夜城』のダンス撮影シーンを観ることが出来ます。
§『踊る不夜城』
ジュディ・ガーランド↑
ジュディ・ガーランド↑