2017年の夏に尾道に行った際、念願叶ってATGの名作転校生(監督:大林宣彦 1982)のロケ地巡りをすることが出来ました。

1982年から1985年に大学生活を送っていたので、映画やライブに関しては隔週発行のタウン情報誌(東京版)を購読しておりました。

気になった映画に関しては、スチルと簡単な映画評の載っている記事を切り抜いて、ノートにスクラップしておりましたが、ジャン・リュック・ゴダール監督の気狂いピエロ(1965)と勝手にしやがれ(1960)の2本立て(於有楽町)、そして大林宣彦作品などは映画ファン注目のロングラン作品でしたので、それらに関してはスクラップを何枚もノートに貼り付けておりました。

1982年に公開された転校生は、僭越ながらこの映画を熱く語る世代の一人ですが、片桐はいりが当時川崎の映画館で働いていた時に、何度もエンディングを後ろから観ては感動していたとの文章を以前読んだ時には嬉しくなりました。

後に、片桐はいりがかもめ食堂(監督:荻上直子 2006)で小林聡美と共演した時に、あの一美に逢えたと言って泣いたエピソードに触れた時は軀の火照りを感じました

自分は、昭和が終わろうとしていた頃、日比谷で偶然小林聡美をお見かけしましたが、比肩し難い感動を味わいました。

映画は、幼馴染だった思春期の男女の軀が御袖天満宮の階段から転げ落ちた際に入れ替ったことで、相手との違いの気付きと共に大人への階段を登る姿を描いている作品ではないかと思います。

2人が船で大人達と「対岸」に渡って帰って来るという展開とその前後の2人の描写は、何歳になっても心の深い部分がざわつく感覚があります。

自分も含めて、尾道詣でをする映画ファンが絶えないであろうと思う次第です。

私見で恐縮ですが、大林作品に観られるスロー(ストップ)・モーション、モノクロ映像、サイレント処理等の映像効果と抒情が揺蕩(たゆた)うが如く絡み合うコラボレーションの妙、大林作品の底流に流れる時空間を超えて響き合う魂の鼓動に、若き日の自分が出逢えたことは欣びでした。

謹んで2020年4月10日に逝去された大林亘彦監督のご冥福をお祈りいたします。

 

上記は2018年1月8日掲載の内容の大幅追加・変更による差替え投稿です。

 

PS 尾道では、転校生で小林聡美が母親役の入江若菜とワッフルを食べた喫茶店で、二人が座った席でワッフルを食べました。

あと、東京物語(監督:小津安二郎 1953)のロケ地、敬愛する志賀直哉の旧居跡(「清兵衛と瓢箪」執筆)と「暗夜行路」の碑(この碑の前も転校生のロケ地)、そして大好きだった朝の連続ドラマの冒頭のダンスシーンに使われた高台の岩にも行きました。

 

§転校生

 

 

§尾道 転校生ロケ現場御袖天満宮

 

 

§尾道 東京物語ロケ現場(住吉神社)