ミロス・フォアマン監督が1975年に撮ったカッコーの巣の上で( One Flew Over The Cuckoo's Nestは、様々な映画ランキングにその題名を見ることが出来る高評価の作品ですが(1)、敬愛する音楽家であるジャック・ニッチェが音楽を担当した作品であることからも、個人的に思い入れのある作品です(2)。

人間の尊厳を扱ったラストの展開に接した時の衝撃は忘れられませんが、ジャック・ニコルソン(役名:ランドル・パトリック・マクマーフィー)、ルイーズ・フレッチャー(役名:婦長ラチェット)、ウィル・サンプソン (役名:’チーフ’・ブロムデン)、ブラッド・ドゥーリフ (役名:ビリー・ビビット)、クリストファー・ロイド (役名:マックス・テイバー)等の個性溢れる役者陣が繰り広げる精神科病棟を舞台にした本作は、人間と尊厳が描かれた問題作として長く観続けられていく作品ではないかと考えます。

ストーリーはジャック・ニコルソンとウィル・サンプソン(’チーフ’)が、職務に忠実な婦長のルイーズ・フレッチャーや医師を欺きながら患者の振りをして潜入し続ける様が描かれます。

神経関連上問題の無い犯罪による収監忌避者であることから、ジャック・ニコルソンは許可を得ずに外出したり、テレビで野球観戦させるように主張したりと、他の患者を巻き込みながら、人間管理に対する抵抗とも言うべき自由奔放な病院生活を送ろうとします。

終には、ガールフレンドを連れ込んで飲酒騒ぎを起こしたことによりルイーズ・フレッチャーを激昂させますが、彼女が浴びせた言葉が若きブラッド・ドゥーリフ (役名:ビリー・ビビット)を死に追い込む事態に至ります。

ラッド・ドゥーリフの死に憤ったジャック・ニコルソンと忍耐の限界を感じたルイーズ・フレッチャーとの衝突によりジャック・ニコルソンの軀に施された治療は、その道義的問題を孕んだ残忍さから観客に衝撃を与えるのではないかと思います。

この作品の題名は、托卵により雛を育てるカッコーが育つ巣に由来しておりますが、巣の親鳥である婦長のルイーズ・フレッチャーが本来の雛ではないジャック・ニコルソンとウィル・サンプソン(’チーフ’)を排除するかの様な展開を経て、映画は衝撃のラストへと加速します。

人間として大きな存在になるべくウィル・サンプソンが水道設備を破壊し巣の外へ出て行く象徴的なラストには、異分子として管理され排除されることを拒む自由への巣立ちの様に自分は感じました。

自分にとってこの映画は、視点を変えると異なる輝きが感じられる作品として興味の尽きない奥行きを感じる映画です。 

 

1)本作は2013年実施のイギリス映画協会による世界の映像作家によるオール・タイム・ベストで48位にランキングされております。

 

2)拙ブログ愛と青春の旅立ちの中で、ジャック・ニッチェ に少し触れております。

 

§『カッコーの巣の上で』