松林宋恵監督が1953年に撮ったミュージカル映画青春ジャズ娘は、ジャズを中心としたヴァラエティ色の強い作品ですが、当時の日本音楽界のドキュメントとしても価値がある作品ではないかと考えます。

名テナー・サックス奏者の与田輝雄とシックス・レモンズ<ドラマーとしてフランキー堺(1)やジョージ川口が一時在籍>、ビッグ・フォー(ジョージ川口<ds>、松本英彦<ts>、中村八大<p>、小野満<b>)、ブルー・コーツ、東京キューバン・ボーイズに加え、歌手陣は新倉美子(2)、江利チエミ、ナンシー梅木(3)、高英夫、ティーブ釜范、益田喜頓などの錚々たる顔触れが次から次へとパフォーマンスを繰り広げる豪華な作品です。

名ドラマーでもあるフランキー堺が片山明彦や高島忠夫と共に主要な役を演じますが、古川緑波、柳家金語楼、清川虹子、伴淳三郎、大泉滉、天地茂といった名俳優・名人がこのミュージカル作品の芝居部分を支えております。

この映画は片山明彦(役名:後藤春彦)の学生ジャズ・バンドから悪徳仲介業者によってフランキー堺(役名:青木正二)が引き抜かれたことと親の反対により、バンドの解散と音楽家への夢を諦める展開が冒頭に描かれます。

しかしながら、周囲の協力と励ましによりバンドは再起のステージに立つことになるのですが、途中フランキー堺が悪徳仲介業者に監禁されてバンドが窮地に陥る波乱の流れを経て、ラストのカップル2組の大団円により幸せの収束を迎えるミュージカル作品です。

この映画で繰り広げられる8大学対抗ジャズ・バンド合戦を観ると、自分は後のエレキの若大将(監督:岩内克己 1965)に登場するTV番組「勝抜きエレキ合戦」を連想してしまいますが、オープニング・タイトルで大学の校歌や応援歌が巧みにジャズ・アレンジされているのは愉しい趣向だと思います。

TV時代にも活躍したお馴染みの面々の若かりし頃のパフォーマンスが愉しめる好きな作品です。

 

1)私事で恐縮ですが、フランキー堺に一度ジャズ・クラブで遭ったことがあります。

フランキー堺と彼の友人達との語らいの場に居合わせた門外漢の自分に、一言話しかけて貰ったことと至近距離で彼のドラム演奏を聴けたことはかけがえのない人生の財産です。

遠藤周作の著書に、氏の気さくで飾らない人柄に触れていた文章があったことを即座に思い出しました。

 

2)近年、往年の録音がCD化されたことでジャズ専門誌で話題になった女性シンガー(新国劇の辰巳柳太郎の娘であり、現在は都内のホテルで営業するアート・ギャラリーのオーナー)。

以前ペギー葉山が同世代の洋楽系シンガーとして懇意にしていたことを、日本橋百貨店でのインストア・ライブで語っておりました。

 

3)1957年にサヨナラ(監督:ジョシュア・ローガン)でマーロン・ブランドと共演し、アカデミー助演女優賞を受賞した歌手・俳優Miyoshi Umeki。

1970年代に細野晴臣が彼女について書いた長文を「ライト・ミュージック」誌で読んだ記憶があります。 

 

§『青春ジャズ娘』

フランキー堺、古川緑波、大泉滉、伴淳三郎↑

新倉美子↑

新倉美子、ティーブ釜范↑

 

片山明彦、フランキー堺↑

 

ジョージ川口とBIG4(松本英彦、中村八大、小野満、ジョージ川口)↑

与田輝雄とシックス・レモンズ↑

ナンシー梅木、与田輝雄(右)↑

銀座4丁目交差点(手前に三愛、和光隣に木村屋と教文館ビル)↑

フランキー堺↑