デヴィッド・バトラー監督(以下敬称略)が1952年に撮ったワーナー・ブラザースのミュージカル映画四月のパリ(April In Paris)の表題曲は、チャーリー・パーカー(as)やカウント・ベイシー楽団等のジャズ演奏で知られるヴァーノン・デュークの名曲ですが、この映画はその主題曲をアイデアの源泉とするパリ開催の国際芸術祭を舞台にした作品です。

この映画の主演であるコーラス・ガール役のドリス・ディ(役名:エセル・’ダイナマイト’・ジャクソン)と外務省勤務のレイ・ボルジャー(役名:ウィンスロップ・プットナム)の抜きん出た歌と踊りは、ミュージカル映画ファンの心を激しく揺さぶる作品ではないかと考えます。

特筆すべきはレイ・ボルジャーの見事なアイデアに満ちた振付のダンスで、オズの魔法使(監督:ヴィクター・フレミング 1939)の案山子役で知られるレイ・ボルジャーの踊りの卓越した伎倆が堪能出来ます。

特に大勢による船内のキッチン・ダンスやレイ・ボルジャー演じる肖像画の二人の大統領と踊る合成ダンスはこの映画のミュージカル部分の見所ではないかと思います。

この映画は、パリの国際芸術祭に大女優を派遣しようとした米国外務省勤務のレイ・ボルジャーが、誤ってコーラス・ガールのドリス・ディに招請状を送ってしまうことから、急遽ドリス・ディがパリに派遣されることになってしまうというストーリーになります。

船上で踊ったダンスが縁となり上司の娘と婚約中のレイ・ボルジャーとドリス・ディが船中で恋に落ちたことにより、船長の立会いで結婚しようとする展開から、偽の船長やレイ・ボルジャーの婚約者等が入り乱れるアップ・テンポのリズム感が愉しいコメディ・ミュージカル作品です。

個人的に好きなシーンは、まだ寒いパリの四月の路上カフェで歌いながらワインを飲む二人に、落ち葉の混じった寒風が吹きすさぶ場面です。

欧州と北海道はGWでもまだ寒さが残っているので、「四月=暖かい春」というイメージを笑いに変えているところが自分は気に入りました(2)。

ドリス・ディが船内ディナーの場で慣れないテーブル・マナーに戸惑うシーンも、ブルース・ブラザース(監督:ジョン・ランディス 1980)や男はつらいよ(監督:山田洋次 1969<一作目>)で観られたレストラン・コメディとして愉しいです。

歌手ドリス・ディが踊りや芝居に大活躍する、音楽好きのミュージカル・ファンにはかなり嬉しい作品ではないかと思います。

 

1)私事で恐縮ですが、チャーリー・パーカーの1950年の弦楽との吹き込み(with strings)や、カウント・ベイシー楽団の1955年吹込みのヴァーヴ盤が好きです。

カウント・ベイシー楽団が1982年と1983年の来日公演で演奏した「April In Paris」を思い出します。

不自由な脚の為にスクーターで舞台に登場したカウント・ベイシー(p)や凛としたフレディ・グリーン(g)の演奏姿と共に耳と目に焼き付いております。

 

2)寒さの為に彼等以外に店外の客が居ない中、ワイン・グラスのお替りを頼まれたウエイターが余りの寒さにワイン・ボトルを置いて店の中に去ってしまいます。

 

§『四月のパリ』

             (ドリス・ディの割れた腹筋↑)