ハワード・ホークス監督の1948年作品『ヒット・パレード』は、ダニー・ケイ(役名:ホバート・フリスビー教授)とヴァージニア・メイヨ(役名:ハニ ー・スワンソン)が主役を演じる音楽映画作品ですが、この作品が愉しいのはダニー・ケイが世界音楽史の教授として当時のアメリカ音楽を研究録音するという設定ではないかと考えます。
1948年は一世を風靡したスイング・ジャズに加え、モダン・ジャズ(ビー・バップ)も台頭した時期であることから、この作品でもバップ・スキャットを真似るシーンが登場しますが、やはりこの映画の凄さは綺羅星の如きスイング・ジャズ・メンの出演にあると思います。
ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトン、ベニー・グッドマン、トミー・ドーシー、チャーリー・バーネット、メル・パウエル、ゴールデン・ゲイト4重唱団、ベニー・カーター等の巨星の演奏やヴァージニア・メイヨが彼等の伴奏で歌うシーンは我が眼を疑う程の豪華さだと思います。
ダニー・ケイはスイング時代初期に活躍したトランペッターのレッド・ニコルスの伝記映画『五つの銅貨』(監督:メルビル・シャベルソン 1959)におけるルイ・アームストロングとの共演も印象に残りますが、この作品でも凄腕ジャズ・メンに囲まれる中で個性的な演技を見せてくれるので嬉しい限りです。
個人的に好きなのは、ダニー・ケイが働く音楽院への財政支援打切りを伝えに来たパトロネスと踊る求愛の南国ダンスのシーンですが、表情を変えずに求愛ダンスの意義とダンスを伝授するダニー・ケイとパトロネスが激しく歌い踊る南国ダンスのインパクトは相当なものだと思います。
この物語は、ゲイリー・クーパーを最年少とする文法学者が、パトロンの屋敷に閉じこもって百科事典を編纂する姿を描いた『教授と美女』(監督:ハワード・ホークス 1941)のミュージカル・アレンジとのことですが、共に恋愛模様がユーモアたっぷりに描かれる作品として両作を愉しんでおります。
真面目な音楽教授陣(含ダニー・ケイ)とヴァージニア・メイヨとその勤務先であるナイト・クラブの仲間達とのコントラストを味わいつつ、音楽にも恋にも真摯なダニー・ケイの想いがハッピー・エンドに繋がる愉しい音楽映画(ミュージカル映画)として好きな作品です。
§『ヒット・パレード』