風と共に去りぬ』(1939年製作)のヴィクター・フレミング監督が、同年撮ったオズの魔法使は、ミュージカル映画の名作ですが、ジュディ・ガーランド(役名:ドロシー)のルビーの赤い靴が、先般オークションで億単位の高値で取引される程愛されている作品だと思います。

原作はルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」のアメリカ版とも言うべき名作なので、舞台化・映画化が繰り返されておりますが、やはりジュデイ・ガーランドが唄うハロルド・アーレンの畢生の名曲「虹の彼方に」(1)の旋律と共に1939年の映像作品を愛する映画ファン・音楽ファンは世代を超えて多く存在するのではないかと考えます。

エメラルド・シティを目指す4人が、黄色い「黄金の」レンガ道(’Yellow Brick Road’)を魔法のルビーの赤い靴(2)で進んで行くという色彩感溢れる映像は、素晴らしいファンタジー効果を生み出していると思いますし、カンザス・シティのモノクロ映像を冒頭と終盤で挟んでいることも、ファンタジー部分の演出として成功しているものと考えます。

ラストのジュディ・ガーランドによる「お家が一番だわ(There’s no place like  home)」というセリフがこの映画を観ていると、胸に染み入る感覚になることも、この作品が優れたミュージカル・ファンタジー映画であることを物語っているのではないかと思います。

先日久し振りにこの作品を観て感心したのは、竜巻のシーンで観られる特殊効果の素晴らしさで、ドロシーに徐々に竜巻が近づく映像は近年のCG画像を観慣れた自分にも恐怖を感じさせる映像で、その後の竜巻に巻かれているときの愉しい映像も含めてこの作品が現代の観客にも強くアピールする部分の一つではないかと考えます。

伝えられているところによると、ドロシー役には当初シャーリー・テンプルが予定されていたとのことですが、ジュディ・ガーランドが「虹の彼方に」を歌ってくれたことは音楽ファンとしての自分には嬉しい選択肢でした。

この作品はミュージカル映画の傑作として取り上げるのがどこか面映ゆく感じる程、全映画(全ジャンル)のオール・タイム人気投票で常に上位に君臨する文化遺産とも言える作品ですが、ミュージカル映画の金字塔として折に触れて愉しみたい大好きな作品です。

 

1)器楽演奏では、モダン・ジャズ・カルテットの1956年の歴史的名盤「フォンテッサ」に収録された「虹の彼方に」の夢見るような演奏を自分は長年愛聴しております。

 

2)原作では西の魔女が履いていた銀の靴でしたが、ルビーの靴とした映像効果は素晴らしいアイデアだと思います。

 

§『オズの魔法使