有名ミュージカル映画を手がけたジョージ・シドニー監督(1)の1964年のミュージカルラスベガス万歳は、数あるエルヴィス・プレスリーの主演ミュージカルの中でも思い入れが強い作品です。

1960年代のエルヴィスを代表する主題歌もさることながら、女性版エルヴィスと言われた圧倒的なパフォーマンスでエルヴィスと渡り合うアン・マーグレット(※2)との共演シーン「C’Mon Everybody」は、ミュージカル映画の名場面ではないかと考えます。

この作品はジョージ・シドニーがメガホンを取ったことが影響しているのかも知れませんが、アン・マーグレットの捜索にラスベガスのクラブを何軒も探し回るシーンが盛り込まれており、当時のラスベガスで演じられていたであろうショーの数々を垣間観ることが出来るのが嬉しいです。

この作品はラスベガスのショーと、オート・レースという魅惑的なコンテンツを舞台に、R&B色の濃いナンバーに魅了される60年代エルヴィス(2)の魅力に満ちた作品だと思います。

この映画から6年後の1970年にラスベガスのインターナショナル・ホテルで繰り広げたパフォーマンスエルビス・オン・ステージ(監督:デニス・サンダース 1970)の映像を観ると、エルヴィスの決して長かったとは言い難い音楽活動期間(1954~1977)の6年の間に生じたアーチストとしての変貌に感銘を受けます。

 

1)他の監督作品:キス・ミー・ケイト (1953)、ショウ・ボート (1951)、アニーよ銃をとれ (1950)、錨を上げて(1945)

(※2)アン・マーグレットの両親は北欧出身とのことですが、身体にバネが内蔵されているかのようなリズム感と踊りには驚いてしまいます。

※3)ファンからお叱りを受けるやも知れませんが、自分はデビューから入隊までを50年代エルヴィス(1954~1958)、除隊後からNBCのTVスペシャル復活迄を60年代エルヴィス(1960~1968)、復活後の活動を70年代エルヴィスと、3つの大雑把な括りで区分けしております。

 

PS エルヴィスが出演したラスベガスのショーはディナー・ショーで、エルビス・オン・ステージでは観客に提供された料理が一瞬映し出されますが、吝嗇な自分は某ジャズ・スポットに数回行った他は、食事とセットのライブには行った経験がありませんので、今一つディナー・ショーというものに実感が湧かないでおります。

演奏中に食事等が提供されていたステージのライブ録音を聴くと、演奏中に唐突な嬌声や食器の音が収録されていたりするのでミュージシャンが気の毒に思う時があります(客席で食事をする文化は日本でも芝居や寄席にあると思いますが、音楽ライブに関しては偏った考えを自分は持っているのかも知れません)。

 

§『ラスベガス万歳』