ジャン・リュック・ゴダール監督の『気狂いピエロ(Pierrot Le Fou)』(1965)を観たのは、1983年の有楽シネマで『勝手にしやがれ』(1960)との2本立てでした。
今と違って入替制でなかった為に、小さな映画館はとても座れる気配がありませんでしたので、2本を立見で観ることになりました。
その後、2作品ともビデオやテレビで観たのですが、スクリーンにフィルムが映し出される画面で観た経験は代えがたいものがあります。
不勉強ですので、饒舌な科白の中で語られる内容を理解することが出来たとは言いかねますが、斬新な映像の連続には感銘を受けました。
海やペンキの原色の青や赤、黄色のダイナマイトなどの色彩やレタリング、効果音のようなセリフの投入や唐突にベトナム帽を被るアンナ・カリーナやドラマ性を排除したエンディング等、誰かが「かっこいい」と言った声が館内に響いたのを覚えております。
1990年代を象徴するピチカート5の「スイート・ソウル・レヴュー」(1993)や「東京は夜の7時」(1994)のPVは、ジャン・リュック・ゴダール監督作品のオマージュとして秀逸で、同郷の偉才である小西康陽が、ジャン・リュック・ゴダール監督とフェデリコ・フェリーニ監督を意識していたことが判る素晴らしい映像作品だと思います。
「東京は夜の7時」の途中のモノクロ映像は、まさにフェデリコ・フェリーニ監督の世界で、野宮真貴達が大道芸人に扮した幻想的なシーンが印象に残ります。
映画世界に留まらない広範囲な影響を感じてます。
PS ジャン・リュック・ゴダール監督というと、法政大学の自主上映会で『東風』(1969)を観たことが忘れられません(1983/9/27)。
『東風』は四方田犬彦の講演「ゴダールの映画史を模倣する」の中で上映され、その他にもD・W・グリフィス監督『国民の創生』(1924)、『メリエス短編集』(1902~)などが上映されました。
ジャン・リュック・ゴダール監督の『東風』に因んで坂本龍一がY.M.O.時代に作曲した「東風(Tong Poo)」を愛聴しております。
§「ゴダール」 by クルト