マーチン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』(2006)は、香港映画のフィルム・ノワールをボストンを舞台にリメイク作品(※)した作品ですが、『沈黙』(2016)のプロジェクトを中断してマーチン・スコセッシが製作することになった理由として、マーチン・スコセッシは自身の出自であるイタリア系カトリックに対する、アイルランド系カトリックのアメリカ人を描くことに関心を抱いたことが製作動機とのことです。
マーチン・スコセッシが育った環境を、彼自身がイタリア系とアイルランド系の混在したカトリック聖職者とギャングに育てられたと語っていることから、マーチン・スコセッシ自身それまで描いてきたイタリア系のタフガイではない、アイルランド系の裏社会を描こうと思ったのではないかと考えます。
主なストーリー展開としては、マット・デイモン演じる警察官として警察内部に潜入したアイルランド系ギャングの男とアイルランド系ギャング組織に潜入した警察官レオナルド・ディカプリオの話ですが、同じ警察官として歩んだ二人の運命が交差して別れていく様が緊張感あるサスペンス・タッチで描かれている作品だと思います。
この映画で異様な存在感を示すのが、マット・デイモンを悪の道具として幼少期から育てたジャック・ニコルソン演じる悪の親玉フランク・コステロで、自分はあたかもSFX作品のモンスター・キャラクターの様なジャック・ニコルソンの無敵感に圧倒されてしまいました。
スター俳優揃いの話題作でしたが、マーチン・スコセッシが目論んだのは上質のB級映画作品とのことで、ジャック・ニコルソンを始めとする役者陣も監督の意図を汲み取ったのか、社会の裏側で繰り広げられる陰謀戦をアルフレッド・ヒッチコックのモノクロ時代の諜報作品の様な緊張感で演じている様に思います。
アルフレッド・ヒッチコックはインタビュー集「映画術」の中で、自身のフィルム・ノワール的作品を意図的にB級作品であると揶揄している発言がありますが、それこそが天才的なサスペンス・タッチの技量が発揮できるアルフレッド・ヒッチコックの得意ジャンルであることが、フランソワ・トリュフォーの賞賛により看破されております。
(※)『インファナル・アフェア』(監督:アンドリュー・ラウ&アラン・マック 2002)<個人的に未鑑賞>
PS マーチン・スコセッシはこの作品でアカデミー作品賞と監督賞を受賞しております。
芸術関係の賞に関しては、自分は好きな作品や良いと思う作品が評価された場合には、多くの人に長く鑑賞されるきっかけとなると思うことから、どの賞も積極的に肯定するタイプです。
§『ディパーテッド』
