ゲイリー・クーパー主演の西部劇『平原児』(監督:セシル・B・デミル 1936)は、他の西部劇作品に登場する銃の名手ゲイリー・クーパー(役名:ワイルド・ビル・ヒコック)、ジェームズ・エリソン(役名:バッファロー・ビル)や鞭の名手ジーン・アーサー(役名:カラミテイ・ジェーン)が登場して、リンカーン大統領やカスター将軍も登場することから、ある意味では西部劇の醍醐味が凝縮された作品と言えるのかも知れません。
個人的には、大好きな『シェーン』(監督:ジョージ・スティ―ヴンス 1953)のジーン・アーサーが演じるカラミテイ・ジェーンの気ッ風(きっぷ)のよさと、早打ちの名手ゲイリー・クーパーのクールさに魅かれております。
ワイルド・ビル・ヒコックの親友として登場するジェームズ・エリソンは、ミュージカル映画『アニーよ銃をとれ』(監督:ジョージ・シドニー&チャールズ・ウォルタース 1950)でアニーが活躍する西部劇ショー(ワイルド・ウエスト・ショー)の主催者でもありますので、劇中の登場人物にも面白さがある作品ではないかと考えます。
内容は南北戦争終結直後に、悪徳政商が最新式7連ライフル銃を農具と偽ってネイティブ・アメリカンに密売したことにより定住民や騎兵隊が窮地に陥るというストーリーになります。
個人的にこの作品で興趣を誘う部分は、ゲイリー・クーパーとジーン・アーサーの漢気と気ッ風(きっぷ)の良さが仇となり、互いに恋する人や友人を救う為に何度も生命の危機に陥ってしまうことです。
終盤近く二人が永遠の別れを告げるシーンは、一聴ドライに聴こえる会話の中に「粋」を感じる西部劇らしい科白のやりとりが、甘いインパクトを与えてくれるの好きなシーンです(※1)。
この映画は西部劇好きの自分をかなりの部分で満足させるアイテムが揃っており(野営ベーコン・干し肉・コーヒー、早打ち、コーン・ショット・ウイスキー、ポーカー客、髭剃りバーバー、雑百貨店、騎兵隊登場ラッパ)、戦前のモノクロ作品でも画質は比較的良いので何度も愉しませて貰っております。ラストにはポーカー・ファンには有名とされるデッドマンズ・ハンド(Dead Man’s Hand)のシーン(※2)となる緊張感に満ちた展開となりますが、西部劇というジャンルの名作として好きな作品です。
(※1)おおよそ以下の様な流れです。
ジェーン「私のこと嫌っていないよね?それとも、もうこれっきり逢わないから、私に良くしてくれるの?」
ヒコック「いいや。君とはきっと近いうちにまた逢うことになる。なぜなら、これ程の大きな国では道と道は常に交わっているから。」
愛の言葉は直截は出てこないのですが、ジェーンの写真が入った懐中時計を命を賭して大切にしていることと、その事実にジェーンが気付くシーンは、西部劇的な恋愛表現として好きです。
西部劇の恋愛表現は昭和の香り(または現代のアジアにも通じる香り)がするので好きです。
ハードボイルド作品などの都会的ダンディズムとは異なり、大地感を感じるところに自分は惹かれるのかも知れません。
(※2)黒のAと8のペア(不吉な手札の組合せとの伝承)
PS 『平原児』はパラマウント社の作品ですが、冒頭オープニングのタイトル表示は20世紀FOX社『スター・ウオーズ』(監督:ジョージ・ルーカス 1977)でお馴染みの、画面奥へスクロールする形式の「元祖」とのことです。
§『平原児』
