印象に残る作品を次々に届けてくれるラッセ・ハルストレム 監督の2000年封切りのショコラ(Chocolat)は、観客を幸せに浸らせてくれるハッピー・エンド作品でありながら、鑑賞後の余韻が深く続く作品として愛しております。

世界3大映画祭全ての女優賞に輝く名優ジュリエット・ビノシュと、同監督のシッピング・ニュース(2001)で島の宿命を負った女性を演じたジュディ・デンチ、そして粋なジョニー・ディップとミュージカル映画ファンには堪らないレスリー・キャロンという配役も素晴らしく、中世のヨーロッパを舞台にしているかのような青白く澄んだ映像の美しさも相俟った見事なファンタジー作品になっている様に思います(1)。

この映画は、チョコレートの調合による魔術的な効果で行く先々に幸せをもたらす、母娘(ジュリエット・ビノシュ&ヴィクトワール・ティヴィソル)と、旧態依然とした因習に縛られた人々との交流と軋轢を描いた作品ですが、ジュリエット・ビノシュ母娘を始めとした登場する人物の人生模様が丁寧に描かれているので、異分子に対する村八分状況を表現しつつも、ラッセ・ハルストレム 監督の他の作品にも通じる母娘の「宿命」とその連続性も感じさせる、捻りの効いたファンタジー作品になっている様に思います。

この作品は宿命を背負った魔力(秘術)や異文化を有する彷徨人達との接触をマイルドにコーティングした映像作品であることから、自分は宮崎駿監督の魔女の宅急便(1989)を連想してしまいます。

映画の終盤は、町の伝統を破壊するものとして母娘を快く思っていない聖職者とその追髄者により、川船で町に流れついたジョニー・ディップを中心としたロマの人々(2)への悪感情も加わることによる大事件が発生しますが、意外とも言えるスイートな展開により物語は倖せの収束となります。

様々な映画祭で評価されたことが肯ける、心に沁みる作品だと思います。

 

1)ラストに陽光輝くカラフルな映像に変りますが、それまでの青白い映像美に比べ見事なコントラストになっていると思います。 

 

2)ジョニー・ディップ達の演奏する曲がロマの天才ジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルト作曲「マイナー・スイング」であることに依ります。

 

PS レスリー・キャロンの出番は多くありませんが、存在感の必要な役にフランス語のセリフで可憐な花を添えている様に思います。

 

§『ショコラ』