赤い靴(The Red Shoes)(マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督 1948)は敬愛する山岸凉子の傑作「アラベスク」でも触れられ、ジャズサックス奏者であるウェイン・ショーターも自叙伝で最も愛する映像作品として紹介している映画ですが、先日観て思ったことは、バレエ映画の古典的作品であるだけではなく、バレエ・ミュージカルとして記憶されるべき作品ではないかと思いました。

特に歌がある訳ではないのですが、アカデミー作曲賞を受賞したこの作品の音楽担当として、指揮者のサー・トーマス・ビーチャムや英国ビッグ・バンドの雄であるテッド・ヒースの名前があることでも、優れた音楽が重要な要素を占めている作品だと思います。

アカデミー美術賞を受賞した特殊効果満載のカラー映像も1948年という時代を考えると斬新だったと思いますが、モンテカルロ・バレエ団を中心としたバレエの素晴らしさもさることながら、個人的にはこの映画の重要な要素である音楽の力に惹かれます。

アンデルセンの「赤い靴」をオリジナル・バレエ化するというプロセスを劇中で観せる過程が興味深く、その際に出演者が「nothing but Music」という科白を繰り返し発することからも、西洋のダンスは「音楽」に合わせて踊ることが何よりも重要なことなのではないかと考えました。

それは、若き作曲家マリウス・ゴーリング (役名:ジュリアン・クラスター )の作曲能力が団長に認められることを、ストーリーの発端とすることからも理解出来るのではないかと思います。

モイラ・シアラー(役名:ヴィッキー・ペイジ)の踊りと人生は赤い靴という作品により煌めき、そして悲しいエンディングを予感させる舞を踊ることで自分の身に起こる悲劇を予感させます。

この映画を観て個人的に感じることは、全体を通じて観客の感覚に訴える幻想的なトーンが、様々な芸術家にインスピレーションを与えたのではないかと想像します。

 

PS 世代的に1972年放送のバレエ・アニメ「赤い靴」を観ておりましたが、情報によるとその作品は牧阿佐美バレエ団の協力による作品だったとのことです。

 

§『赤い靴』

 

 

 

⇒引越し前のブログで2017年11月に掲載されていた内容の再掲載です。