# 過剰な使役表現(せる・させる)について | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

 フリーランスの編集者兼ライターです。
 主として日本語関係のことを書いています。

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【30】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983718504&owner_id=5019671

mixi日記2023年01月08日から。

 テーマサイトは下記。
【# 過剰な使役表現(せる・させる)について】
https://baldhatter.hatenablog.com/entry/2023/01/08/052857
 全文は末尾に。

 いろいろな要素を含むのでウカツなことは書けない(泣)。
 なんせ当方も脳内の整理がグチャグチャなので、再確認の意味を込めて順番に見ていく。

【1】「せる・させる」の基本―接続と意味
===========引用開始
●五段活用とサ行変格活用(サ変)の動詞には「せる」が付く
 妹をかわりに迎えに行かせた ※「行く」は五段活用
 もっと勉強させろ ※「勉強する」はサ変
●上一段活用、下一段活用、カ行変格活用(カ変)の動詞には「させる」が付く
 テレビは見させない ※「見る」は上一段活用
 もう少し寝させてやれ ※「寝る」は下一段活用 
===========引用終了

 この「五段活用とサ行変格活用(サ変)の動詞」と「上一段活用、下一段活用、カ行変格活用(カ変)の動詞」の2分類はいろいろな場面で登場する。
 有名なのは「れる・られる」。
「五段活用」には「れる」がつき、「上一段活用、下一段活用、カ行変格活用(カ変)」には「られる」がつく。これが理解できていないのにラ抜き言葉を語る●●は多い。やめてほしい。
 ただし。「サ行変格活用(サ変)の動詞」の場合は「れる」がつくものと「する→できる」に分かれる。「愛す」の場合はどうなるかと言うと、簡単には説明できない。「五段活用+れる」と可能動詞(仮称)の関係もパス。この段階で混乱気味(泣)。

「五段活用+せる」でいいのに「させる」をつけたものが、いわゆるサ入れ言葉。これが「~(さ)せていただきます」の形になると、誤用例(の数)が跳ね上がる。某料理番組で「作らさせていただきます」と連呼した中居正広の罪は重い。
【◯抜き言葉 ◯足す言葉 新種の「ダ抜き言葉」発見】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12091452071.html
===========引用開始
●サ足す言葉(一般には「サ入れ言葉」かな)
ex.作らサせていただきます
「助動詞「ない」+そう」にサを足してしまう形は、許容されつつある。 
ex.行かなサそう
===========引用終了
 テーマサイトにあるように、「勉強させる」は未然形の「勉強さ」+「せる」〈「させる」が付いているわけではないことに注意〉。ここがけっこうキモ。「話させる」が未然形の「話さ」+「せる」であることを考えればわかりやすいかも。これも踏み込むとややこしい話になる。「拝見させていただく」の敬語を外した形は「見せてもらう」か「見させてもらうか」を説明するのは難問。

【2】「せる・させる」の基本―どんな動詞に付くか
 そうかそうか。
〈「行く」→「行かせる」、「進む」→「進ませる」、「沸騰する」→「沸騰させる」という関係〉が成り立つのね。
 これはわかりやすい。ただ。
「抜く」(他動詞)
「抜かせる」:&「抜く」の使役&「抜く」の可能動詞
「抜かす」(他動詞)
「抜かさせる」:「抜かす」の使役
 あたりになると、当方のキャパを超える(泣)。
【「抜く」「抜かれる」vs.「抜かす」「抜かされる」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1032.html

【3】「せる・させる」が自動詞に付く場合
【4】「せる・させる」が自動詞/他動詞に付く場合 
【5】「せる・させる」が他動詞に付く場合
【6】定例トライアルの答案で見かけた使役形

 このあたりが、ブログの書き手が長らく課題にしている話だろう。
 自動詞/他動詞のユレの話なんかも絡み。手に余る(泣)。


https://baldhatter.hatenablog.com/entry/2023/01/08/052857
===========引用開始
今回の記事は、アメリア定例トライアル「IT・テクニカル」と連動した内容です。が、もちろん、それとは無関係にでも、お読みいただけるはずです。

2022年10月号で出題、2023年1月号に解説が掲載されている課題(メタバースに関する文章)の答案で、気になる使役表現(~せる・させる)が散見されました。

「せる・させる」の基本―接続と意味
「せる・させる」の基本―どんな動詞に付くか
「せる・させる」が自動詞に付く場合
「せる・させる」が自動詞/他動詞に付く場合
「せる・させる」が他動詞に付く場合
定例トライアルの答案で見かけた使役形
「せる・させる」の基本―接続と意味
念のために基本を確認しておきます。なお、今回の記事に出てくる文法用語が分からない方は、以下のような本で日本語文法の基礎を押さえておくことをおすすめします(脚注にも少しだけ補足あり)。

国語教師が知っておきたい日本語文法
国語教師が知っておきたい日本語文法

作者:敏弘, 山田
くろしお出版
Amazon
日本人のための日本語文法入門 (講談社現代新書)
日本人のための日本語文法入門 (講談社現代新書)

作者:原沢伊都夫
講談社
Amazon
現代日本語文法で、使役の助動詞「せる・させる」には以下のようなルールがあります。

まず、「せる・させる」と2種類あるのは、上に来る動詞の種類によって使い分けがあるからです。

五段活用とサ行変格活用(サ変)の動詞には「せる」が付く
 妹をかわりに迎えに行かせた ※「行く」は五段活用
 もっと勉強させろ ※「勉強する」はサ変
上一段活用、下一段活用、カ行変格活用(カ変)の動詞には「させる」が付く
 テレビは見させない ※「見る」は上一段活用
 もう少し寝させてやれ ※「寝る」は下一段活用
 あやまりに来させればよい 「来る」はカ変*1
どちらも、動詞の未然形に付きます。上の例文を細かく単語に分けてみると、

せる
 行か+せ+た ※「行か」は五段活用動詞「行く」の未然形
 勉強さ+せろ ※「勉強さ」はサ変動詞「勉強する」の未然形
  「させる」が付いているわけではないことに注意
させる
 見+させ+ない ※「見」は上一段活用動詞「見る」の未然形
 寝+させ+て ※「寝」は下一段活用動詞「寝る」の未然形
 来+させれ+ば ※「来」はカ変動詞「来る」の未然形*2
日本語話者なら、こんなことは意識せずに使い分けているはずなのですが、「せる」で済むはずのところを「させる」にする言い方も出はじめています。いわゆる「さ入れ言葉」です。上の例文でいうと、「妹を~行かせた」でいいはずなのに、「妹を~行かさせた」という形にしてしまうわけです。

今回ここでお伝えしたいのは、この話ではありません。



それから、「使役」といっても、語義はいくつかに分かれます。

〔使役〕首相は大臣に視察に行かせた
〔放任・許容〕しばらく休ませてくれ
〔不本意なことや迷惑なこと〕息子を戦争で死なせる
【ベネッセ表現読解国語辞典より】
「せる・させる」の基本―どんな動詞に付くか
次に、どんな動詞に「せる・させる」が付くか、国語辞典からいろいろな例文を拾いながら考えてみます。

一足先に行かせてもらいます
監督は打者に初球を打たせた
時計の針を二〇分ほど進ませる
捕手が投手に直球を投げさせる
水を沸騰させる
【すべて大辞林第四版より】
前にある動詞(赤太字)の種類に注目すると、

「行く」= 自動詞
「打つ」= 他動詞(~を打つ)
「進む」= 自動詞
「投げる」= 他動詞(~を投げる)
「沸騰する」= 自動詞
です。自動詞に「せる・させる」を付けると、「自動詞としての行為をするようにしむける」という意味になるので、「行く」→「行かせる」、「進む」→「進ませる」、「沸騰する」→「沸騰させる」という関係が成り立ちます。

一方、他動詞の場合は目的語をとっているので、「〈誰々に〉~〈何々を〉○○するようにしむける」という形になっている点に注意してください。「打者が初球を打つ」→「打者に初球を打たせた」、「投手が直球を投げる」→「投手に直球を投げさせる」という関係です。

「せる・させる」が自動詞に付く場合
たとえば、「向上する」は自動詞です。「学力が向上する」のように、「〈何々が〉向上する」という言い方しかできず、「学力を向上する」のように目的語をとることはできません。ちょっとググってみると、目的語をとっている例は山ほど出てきますが、基本的には正しくない形です。

では、自動詞しかない「向上する」を他動詞のように、つまり「~を向上~」の形で使いたければどうするか。ここで登場するのが「せる」です。「学力を向上させる」にすればいい。

ということで、ルール1:自動詞に「せる・させる」を付けると、他動詞と同じように使うことができる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブログランキングに参加しています。
下のアイコンを押してもらえると励みになります。たぶん。
とってもうれしいです。
※やはり「うれしいです」は美しくない。
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12282289501.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

語学(日本語) ブログランキングへ

#日本語 #敬語 #誤用 #慣用句 #言葉 #問題 #間違い #二重敬語

#日本語 #敬語 #誤用 #慣用句 #言葉 #問題 #間違い #二重敬語