読書感想文「ダイヤモンド」2月号「伝わる文章術」〈1〉〜〈3〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【28】
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mixi日記2022年04月17日から

「ダイヤモンド」2月号「伝わる文章術」。読みはじめる。
 昔、「ダカーポ」がこのテの特集を定期的に企画していたような。大前提として、全体の統一感は必要ないのだろうか。統一感のなさは『第三版 悪文』の比ではない。テクニカルな話を別にすれば、たいてい著者自身の主観的な心得でしかないから、矛盾が出てくる。誰も調整しないのかい。
 巻頭の古賀史健さんの誌上講義に下記の文がある。
【引用部】
(前略)しばしば文章術の本で「伝わる文章の書き方」といったトピックを目にしますが、まったくピント外れの議論としかいえません。
 文章は、それによって読者の行動変容を誘うこと、すなわち読者を「動かすこと」を目的に書くのだと考えましょう。(P31)

「しばしば」の位置はここでいいの? 「行動変容を誘う」って……。「文章は~を目的に書く」ですかい。
 などという細かい部分を気にしているとキリがない。先に進む。
 この記述自体は説得力がある。「動かす!文章術」あたりはキャッチとしてもカッコいい。でもさぁ。ほかの人の文章を見ると、「伝わる~」「伝えたい~」が頻出する。だって特集タイトルが「伝わる文章術」だもの。
 それを真っ向から否定する古賀さんは、誌上討論会でも企てているのだろうか。
 この段階でまじめに読む気が失せてしまったのですが、最後まで読むべきでしょうか。

 特集全体を通して、細かい点を見ているとキリがない。
 こんなもんだろう。
 現在芸風をかえる必要性を感じているので、悪口はできるだけ書かないようにする。かなりの難業になるけど……。
 ひとつの大きな発見。一文の長さは「60字以内」が定説になりつつあるらしい。まぁそんなものだろう。
 当方が知る限りでは、40字~「制限なし」と幅がある。体験的に、40字以内という制約はけっこうきついので、60字はきわめて妥当。この特集のなかの文章も、〝ほぼ〟60字以内で書かれている。
 
 注目すべき、は岩佐義樹氏(元毎日新聞社校閲センター部長)の記事。
 辞書による語釈の違いを、三国(三省堂国語辞典)第8版(サンコク8)と明鏡(明鏡国語辞典)第3版を比べている。明鏡は21年に第3版が出てるのね。電子辞書は対応しているのだろうか。
===========引用開始
 しかし、辞書はどれも同じというわけではない。辞書が違えばそれぞれの編集方針などから少なからぬ部分が異なるし、同じ題名の辞書でも改訂のたびに変わる語も多い。
===========引用終了
「題名」はないだろう、と思ったが、うまい言いかえが思いつかない(泣)。
「改訂のたびに変わる語」もひっかかる。
 まあそういう話はおく。 
 2冊の辞書の違いがハッキリしている例として、下記をあげる。
「明るみになる」「味あわせる」「おぼつかぬ」「お求めやすい」「おもねて」「愚直」「的を得る」「棹さす」「忸怩」「至上命題」「準備万端だ」「すべからく」「つとに」「役不足」
 詳細は省略するが、おおむね明鏡は保守的で、三国は新しい用法を許容する傾向がある。
「お求めやすい」なんて認めていいんだろうか。
 基本的に仕事では『記者ハンドブック』に準じている。こちらも保守的だから、明鏡の判定に近い。新しい用法を許容するのは、若い人や●●にお任せする。
 ちなみに「愚直」は下記のような説明がある。
===========引用開始
〈要注意語〉愚直
〈本来の意味・使い方〉ばか正直。「愚直なまでの理想主義」
●明鏡
あまり正直すぎて融通がきかないこと。「愚直に規則を守る」
●三国
わきめもふらないようす。「愚直に反復練習をくり返す」
===========引用終了 
「愚直に反復練習をくり返す」なら「ばか正直に」「黙々と」という意味もあるのでは。

 

 

【読書感想文「ダイヤモンド」2月号「伝わる文章術」〈2〉】

mixi日記2022年04月17日から

 下記の続きでもある。
【読書感想文『ダカーポの文章上達講座 完全版』(マガジンハウス/2000年4月20日第1刷発行)】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12738135790.html

 特集の掉尾を飾る(初めて使った)のは、『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の共著者の小川真理子氏。2021年1月(もうそんなにたつのね)に発刊された同書は、相当売れたらしい。でもどうしても買う気になれなかった。
 今回の記事は、同書のノウハウのランキング(掲載されていた本の冊数によって順位付け)を抜粋している。
☆…文章を書くに当たっての準備や心構え

すべての人に身につけてほしい7つのルール
01位 文章はシンプルに
02位 伝わる文章には「型」がある
03位 文章も「見た目」が大事
04位 文章は必ず「推敲」する
05位 「わかりやすい言葉」を選ぶ
06位 比喩・たとえ話を積極的に使う
07位 接続詞を「正しく」使う

ワンランク上の文章を書くための13のポイント
08位☆ 思い付きはメモに、思考はノートにどんどん書く
09位☆ 「正確さ」こそ、文章の基本
10位☆ 「名文」を繰り返し読む
11位 主語と述語はワンセット
12位☆ 語彙力をつけろ、辞書を引け
13位☆ 「、」「。」をテキトーに打たない
14位 段落はこまめに変える
15位☆ とにかく書く、たくさん書く
16位 「わかりにくい」と思ったら修飾語を見直す
17位 「書き出し」にとことんこだわる
18位☆ 「読み手」を強く意識する
19位 「は」と「が」を使い分ける
20位☆ 名文は書き写す・真似る

気を付けるとさらに文章がよくなる20の秘訣
21位☆ とりあえず、書き始める
22位☆ 「何を書くか」を明確にする
23位 文末の「である」と「ですます」を区別する
24位 体験談で説得力を高める
25位☆ 書き始める前に「考える」
26位 同じ言葉の重複は避ける
27位 「見出し」で内容を端的に伝える
28位☆ 日頃から内面を豊かに耕す
29位 同じ主語が続くときは省略してみる
30位☆ 考えるために書く
31位☆ テクニックでごまかさない
32位☆ 「一番好きな文章」を見つける
33位☆ 的確なインプットでオリジナリティを高める
34位 わかりにくいカタカナは日本語に
35位 ビジネス文章・論文は「話し言葉」より「書き言葉」
36位 ビジネスメールは簡潔さが命
37位 イメージまで共有できれば誤解なく伝わる
38位☆ 発見や違いを盛り込んで文章を「おもしろく」する
39位 根拠を示す
40位 過去形と現在形を混ぜると文章がいきいきする

 ランキングを見て思い出したのは下記。
【読書感想文『ダカーポの文章上達講座 完全版』(マガジンハウス/2000年4月20日第1刷発行)】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12738135790.html
===========引用開始
「でたか」という趣き。思いつくことを片っ端からあげて、両立しないのものがあってもお構いなし。実用書系の「文章読本」はみんなやってるから、そう責められるようなことじゃないけどさ。ただ、精神論(たとえば③)と、技術的な心得(たとえば④や⑤)をゴチャマゼにするのはいかがなものか。
===========引用終了
 あの頃と比べて何も進歩していない気がする。
 それでも〈☆…文章を書くに当たっての準備や心構え〉と書いているってことは、技術論と精神論の違いは意識しているのだろう。
 たださぁ。たとえば〈17位「書き出し」にとことんこだわる〉って技術論なのかなぁ。
〈37位イメージまで共有できれば誤解なく伝わる〉になると、どんな説明しているのか見当もつかない。
 精神論と技術論を分けてはいるみたいだけどね。技術論は「そのためにはどうするか」のちゃんとした説明がないと、しょうもない精神論に堕してしまう(初めて使った)。
 あとは、たとえば〈21位☆とりあえず、書き始める〉〈22位☆「何を書くか」を明確にする〉〈25位☆書き始める前に「考える」〉あたりは露骨に対立しているような気がするけど、そのあたりはどう説明してるんでしょ。

 こういう細かいインネンをつけていくとキリがないので、少し前向きなことを。
 01位は〈文章はシンプルに〉。具体的には一文の長さは60以内がいいらしい。100冊のベストセラーがそういってるのなら、そうなのだろう。
 02位は〈伝わる文章には「型」がある〉。
 具体的には、①逆三角形型と、②PREP法があるらしい。
 PREP法とは以下の略称を統合したものらしい。
P(Point)=ポイント、結論
R(Reason)=理由
E(Example)=事例、具体例
P(Point)=ポイント、結論
 ビジネス文章に限れば、このあたりだろう。「起承転結」ではなくて安堵した。
 ちなみに、↑で紹介した『ダカーポの文章上達講座 完全版』では文章の構成について、代表的なものとして「起承転結」をあげたあと、「目理方結」「現原対変」をあげている。前者は「目的」「理由」「方法」「結論」で、後者は「現実」「原因」「対策」「変化」らしい。これぐらい覚えておけば、どんな文章でも理路整然と書けるかもしれない。
 03位は〈文章も「見た目」が大事〉。見た目〝も〟じゃないのかぁ。
 ポイントは「余白」と「平仮名と漢字の使い分け」らしい。
===========引用開始  
 文章のプロの意見をまとめると、「漢字2、3割」「ひらがな7、8割」が一つの目安となることを覚えておこう。
===========引用終了
 文章のプロともなると、そんなことまで意識するのか。ちなみに「平仮名」と「ひらがな」はどちらが一般的?

 P38〜では別の筆者がメールに関して同様のことを書いている。
 メールは「白っぽい文章」を心がけ、漢字と平仮名の文字数のバランスがいい(7:3程度)らしい。割合が正反対になっているのはどちらかが間違っているんだろうな。
〈15位☆とにかく書く、たくさん書く〉。こんな主張をしている人も多いんだ。しかたないか。なんだかなぁ。
 一番驚いたのは〈28位☆日頃から内面を豊かに耕す〉かな。「文は人なり」ですか? 斎藤美奈子先生に笑われるよ。

 

 

【読書感想文「ダイヤモンド」2月号「伝わる文章術」〈3〉】

mixi日記2022年04月24日から

 某所で貴重な情報を教えてもらった。
===========引用開始
19位の「「は」と「が」を使い分ける」では、ポイントとして以下のものを挙げているのですが、すでに 1 が間違いですよね~ 
※未知でも「は」を使うことはあるし、既知でも「が」を使う。

1 「は」はすでにわかっていること、「が」はわかっていないことに使う
2 「は」がついても、主語になるとは限らない
3 「……が」を使っていいのは「逆接」のときだけ
===========引用終了

 うーん。
 実物を読まずにこんなことを書くのは気がひけるが……。
 ちょっとこれは……。

「1」は初級者用の導入話としてはアリかも、ってこと。でも「こともある」にしないとダメでしょう。
【「は」と「が」の違いは、 「は」は その主語が「未知」で 「が」は「既知」 goo 念仏】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12680508664.html

「2」はそのとおりでしょう。だから何?
「きょうは天気がいい」
「私は父が鬱陶しい」
 主語はなんでしょうね。

「3」は接続助詞の話ですよね。〈「は」と「が」の使い分け〉とどう関係があるの?
【「逆接のガ、」「順接のガ、」goo 資料編】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12684426680.html

 

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とってもうれしいです。
※やはり「うれしいです」は美しくない。
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12282289501.html
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