「次第」の使い方 教えて!goo | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【22】 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971566092&owner_id=5019671 

mixi日記2019年11月02日から 

 テーマサイトは下記。 
【「次第」のこの使い方について教えていただけませんか】2019/11/02 
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/11353256.html 
===========引用開始 
日本語を勉強中の中国人です。「次第 」の下記の使い方について教えていただけませんか。ちなみに、「分かり次第にご連絡します」という「次第」の使い方なら、理解できております。 

1.13日の参加者ですが、ABCから以下2名が下見に行きたいと思いますので、申請をお願いしたい次第です。 
2. 明日の午後に、明後日のA社へのアポイントで使用する資料の印刷をお願いしたい次第です。 

また、質問文に不自然な日本語の表現がありましたら、それも教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。 
===========引用終了 

 うーむ。 
 いつものことながら、見事な日本語で、とても中国のかたとは思えない。しかも、日本で暮らしているのではないと記憶している。それで、このレベルの日本語を使えることに感心している次第です。 
 まず辞書をひく。同じようなものなので、『大辞泉』を。 
https://kotobank.jp/word/%E6%AC%A1%E7%AC%AC-73698 
===========引用開始 
デジタル大辞泉の解説 
し‐だい【次第】 

[名] 
1 物事が行われる際の一定の順序。「式の次第を書き出す」 
2 今まで経過してきた状態。なりゆき。「事の次第を話す」 
3 物事の、そうなるに至った理由。わけ。事情。「そんな次第で明日は伺えない」 
4 能や狂言の構成部分の一。七・五、返句、七・四の3句からなる拍子に合った謡。シテ・ワキなどの登場第一声として、また曲舞(くせまい)や乱拍子の序歌としても謡われる。 
5 能や狂言で、シテ・ワキなどの登場に用いる囃子事(はやしごと)。大鼓・小鼓に笛があしらい、続いて4が謡われる。 
6 歌舞伎囃子(ばやし)の一。5を取り入れたもので、能がかりの登場音楽として用いるほか、「関の扉(と)」などの幕開きにも奏する。 
[接尾] 
1 名詞に付いて、その人の意向、またはその事物の事情のいかんによるという意を表す。「あなた次第でどうともなる」「この世はすべて金次第」 
2 動詞の連用形に付いて、その動作が行われるままにという意を表す。「手当たり次第に投げつける」「望み次第に買い与える」 
3 動詞の連用形または動作性の名詞に付いて、その動作がすむと直ちにという意を表す。「満員になり次第締め切る」「本が到着次第送金する」  
===========引用終了 

 非常におおざっぱに書くと、「次第」の品詞は名詞と接尾語がある。 
 質問者が「理解できております」としているのは、接尾語のほう。今回の質問は名詞のほう。 
 個人的には、接尾語の「次第」の使い方に、小さな疑問を感じている。 
【「次第」「しだい」の使い方 辞書】 
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12189329210.html 
 解説としては下記あたりだろうか。 
【「終了し次第」か?「終了次第」か?】 
https://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=331 
===========引用開始 
 「し」を入れても入れなくても今や特に問題はなさそうであるが、言いづらかったら(私自身も確かに発音しにくいと感じることが多い)、NHKのように無理に「~ししだい」を使おうとしないほうがいいのかもしれない。  
===========引用終了 
 ただしこの「まとめ」の部分は「~ように+否定形」になっているので、NHKが使おうとしているのか否かわからない。詳しいことは、リンク先をどうぞ。 

 さて、本題の名詞の「次第」。 
 可能性がありそうなのは、下記の2つだろう。 

2 今まで経過してきた状態。なりゆき。「事の次第を話す」 
3 物事の、そうなるに至った理由。わけ。事情。「そんな次第で明日は伺えない」 

 これは無理に分けるのが無理なのかもしれない。 
「理由」はちょっと違うと思うが、「事情」と考えるなら「2」と同様になることもありそう。 
『大辞林』は「2」「3」を一緒にして〈現在に至るまでに、物事がたどった道筋。事情。いきさつ。 「事の-を話す」 「かような-で面目ない」 「事と-によっては一肌脱ごう」〉としている。「理由」のこともあると思うが、記述なし。 
『日国』は「2」「3」を一緒にして〈⑤ 物事の事情や由来、理由、成りゆきなど。〉にしている。 
 試しに↑の例文を片っ端からあげる。 

【なりゆき】 
「事の次第を話す」 
「事の次第を話す」 「かような次第で面目ない」 「事と次第によっては一肌脱ごう」 

【理由】 
「そんな次第で明日は伺えない」 

 ほかの辞書も見てみたが、「理由」派は少数のよう。 
 まあ、「そんな次第で明日は伺えない」は「理由」ともとれるが、「なりゆき」でも問題はない気がする。 

 さて、本題の例文には「~をお願いしたい次第です」とある。 
 これは「間違い」ではないだろうが、ちょっと不自然。 
 フツーなら、「~をお願いした次第です」だろう。 
「(これこれの理由があって)~をお願いした【なりゆき/いきさつ/事情】です」 
 となる。 
 もちろん「~をお願いします」「~をお願いいたします」でも何も問題がない。むしろそちらをおすすめする。 
「~をお願いした次第です」にすると、少しもったいをつけた感じになる。丁寧な印象になるとも言えるが、ジジムサイとも言える。 
 ちなみに、「~をお願いしたい……」でもいいのだが、こうすると「……」の部分が微妙になる。 
 外国人向けの日本語教育の教科書は、「~をお願いしたいです」を許容しているが、一般には避けたほうがいい。 
「お願いしとうございます」(正しい日本語だが、さすがに古臭い)。 
「お願いしたいと考え、連絡いたしました」……etc. などの表現もあるが、どうしても長くなる。 
「~をお願いします」もしくは、それより敬度が高い「~をお願いいたします」をおすすめする。 

「たい+です」に関して詳しくは下記参照。 
【この文章は文法的に正しいですか】 
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12099739837.html

 

 

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