助詞の話──場所を示す「に」と「で」〈1〉〜〈4〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中) 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671 

mixi日記2010年04月18日から。 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1465269234&owner_id=5019671 

●助詞に関する話 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3159.html 

 テーマトピは下記。 
【「ここに」と「ここで」の違い】日本語しつもん箱 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=52300205 

「に」と「で」の話も過去に多くのトピで話題になっている。 
【助詞の話4「ニ」か「デ」か】 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=52303109 

 今回のテーマは、〈場所を示す「に」と「で」〉。 
 とりあえずWeb辞書(『大辞泉』)をひく。「に」は下記の「1」だろう(「3」という解釈も有力)。 
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=11 
  ↓ 
https://kotobank.jp/word/%E3%81%AB-590835#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88 
================================ 
に 
[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。 
1 動作・作用の行われる時・場所を表す。「三時―間に合わせる」「紙上―発表する」 
3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家―着く」「東―向かう」 
================================ 
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A7&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=14470012538000 
  ↓ 
https://kotobank.jp/word/%E3%81%A7-573220#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 
================================ 
で 
[格助]《格助詞「にて」の音変化》名詞、名詞的な語に付く。 
1 動作・作用の行われる場所・場面を表す。「家―勉強する」「委員会―可決する」「試験―合格点を取る」 
================================ 

 辞書で見る限り、「動作・作用の行われる場所」に関する「に」と「で」には違いがない。 
 こうなると話はややこしくなる(「おもしろくなる」とも言える)。 

 トピ主が書いた例文で考える(若干加工する)。 
================================ 
A-1 ここに書いてください(何かの書類を指さして) 
A-2 ここで書いてください(どこかの場所に案内されて) 

B-1 ここに車をとめてください(駐車場で警備員さんに言われ) 
B-2 ここで車をとめてください(教習所で教官に言われ) 
================================ 

 AとBでは微妙に違う。 
 Aから見ていく。 
 A-1の「に」は「書類の記入欄」などを指す。A-2は「会場」などを指す。トピ主の書いた〈「に」の方がより範囲が限定されたイメージがある〉のとおりだろう。 
「会議室で申し込み用紙に記入する」のような使い分けをするとわかると思う。ここまではさほどむずかしくない。 
 問題はBだ。 
 Bも、基本的にはAと同じような考え方ができる(ただし、状況設定に関してはトピ主の感覚とは逆の気もする)。 
 B-1の「に」は「駐車区画」などの限定的な場所。B-2は「駐車場全体」などの比較的広い場所を指す。 
「駐車場で柱の隣の区画に車をとめる」のような使い分けをするとわかるだろう。 

 基本はそれでいいと思う。これ以上の話をするとけっこうメンドーなことになる。そこまで説明する必要があるのだろうか。 
 まず、「ここ」を「駐車場」にかえてみる。ちょっとニュアンスがかわってくる(語尾をフツーの終止形にする)。 

C-1 駐車場に車をとめる 
C-2 駐車場で車をとめる 
 これが、リンク先のhttp://mixi.jp/view_bbs.pl?id=4444727などで話題になっている形。 
 この形だと、「に」は駐車場の外にいるニュアンスが強い。「で」はすでに駐車場の中にいるニュアンスが強い。あくまでもニュアンスのレベルで、絶対ではない。 
 この場合の「に」は『大辞泉』の「3」の「動作・作用の帰着点・方向を表す」と解釈するほうがわかりやすい気がする。 
 これがB-1&2の場合は「ここ」なので、すでに駐車場の中にいることになる。そう考えると、「で」のほうが自然なのかもしれない。 
(駐車場に向かう途中)駐車場に車をとめようとする 
(駐車場の入り口)柱の隣の区画に車をとめようとする 
(目的の区画で)ここで車をとめる 
 しかし、現実には「ここに車をとめる」でもおかしくはない。 
 先の「駐車場で柱の隣の区画に車をとめる」も、下記のどちらにもできると思う(「の」の3連発は相当美しくないけど)。 
「駐車場の柱の隣の区画で車をとめる」 
「駐車場の柱の隣の区画に車をとめる」 

 さらに話をメンドーにする。下記あたりまでキチンと説明するのは相当の難題。 
D-1 ここ(に/で)車から降りる→「に」はヘン 
D-2 ここ(に/で)車に乗る→「に」はヘン 
D-3 ここ(に/で)車をとめておく→「に」が自然 
 ※これはたぶん「~におく」のほうが「~でおく」より自然だから。 
D-4 ここ(に/で)車を乗り捨てる→どちらもアリ 
 D-1&2を見る限り、やはり「ここで車をとめる」のほうが自然なのだろうか。 


助詞の話──場所を示す「に」と「で」 
〈2〉「この電車は新宿〈に/で〉止まります」 

mixi日記2011年03月18日から 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1691634170&owner_id=5019671 

 テーマサイトは下記。 
【助詞の「に」と「で」について。】 
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1357726128 

 質問を一部加工して転載する。 
================================ 
「この電車は新宿に止まります。」と「この電車は新宿で止まります。」 
前者の方自然な感じに聞き取れますが、 
この二つにどう違いがありますか。 
================================ 

「に」と「で」の働きは、↑で見たものと同じと考えてよいだろう。 
 再掲する。 
================================ 
に 
[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。 
1 動作・作用の行われる時・場所を表す。「三時―間に合わせる」「紙上―発表する」 
3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家―着く」「東―向かう」 
================================ 
で 
[格助]《格助詞「にて」の音変化》名詞、名詞的な語に付く。 
1 動作・作用の行われる場所・場面を表す。「家―勉強する」「委員会―可決する」「試験―合格点を取る」 
================================ 
「新宿( )止まる」の場合は、うんとシンプルに考えていいだろう。 
「動作・作用の行われる時・場所を表す」のだから、「に」でも「で」でもOK。 
 これが「新宿( )行く」だと、「 動作・作用の帰着点・方向を表す」だから「に」になる。ここで「に」と「へ」の違いの話を始めると泥沼にはまる(笑)。 
【助詞の話──「へ」と「に」(仮) 独り言です44くらい】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-736.html 

 ↑の「ここに〈に/で〉書いてください」だと「ここ〈に/で〉車をとめてください」だと微妙な違いの説明ができたが、「この電車は新宿〈に/で〉止まります」だとうまくできそうにない。 
「に」のほうが自然という質問者の語感には賛成。でも「で」が不自然という理由も見当たらないorz。 


場所を示す「ニ」「デ」〈3〉 

mixi日記2011年07月15日から 

 テーマトピは下記。 
【「あそこに停めてください」「あそこで停めてください」】 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=63718241&comm_id=19124 

 同様のトピが過去にいくつも立っているのに、なんで誰も指摘しないんだろう。「検索」のしかたを知らなくて、「記憶」する力がないんだろうか。 
【助詞の話──場所を示す「に」と「で」】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1465269234&owner_id=5019671 
【助詞の話4「ニ」か「デ」か】 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=52303109 

 まあ、過去のトピを見てもよくわからない気もするけどさ。 
 まずトピ主の質問を一部加工して転載する。「違和感を感じる」は重言って話はパス。 
================================ 
例えば、駐車場の入口で係員の人が、空いているスペースを指差しながら 
「あそこに停めてください」 
 とは言いますが、 
「あそこで停めてください」 
 と言うとなんだか違和感を感じます。(例1) 


一方で、タクシーに乗りながら運転手さんに 
「あそこに停めてください」とも「あそこで停めてください」とも言えますよね?(例2) 


(例1)では何故「で」は使えないのでしょうか? 
同じ「停める」という動詞を使ってるけれど、厳密に言えば「駐車する」と「停車する」で助詞が変わってくるのでしょうか? 

もしかしたら(例1)で「で」を使うことに違和感を感じてるのは私だけかもしれませんが、お教え願えますか。 
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 (例1)で「デ」と言うか否か。 
 たしかに「ニ」のほうが自然だろう。でも「デ」が×とは言えないと思う。 
「そこのバス停の手前{デ/ニ}とめてください」なら、「デ」のほうが自然だろう。ニが×ってことはないと思うが。 
「あそこ{デ/ニ}車から降りてください」なら、さすがに「ニ」は×だろう。 
「あそこ{デ/ニ}停めて車から降りてください」だとどっちもアリだろう。 
 これは〈1〉のD-1~4で見たことにも通じる。なぜそうなるのかは言葉の神様に訊いてください。 
================================ 
 さらに話をメンドーにする。下記あたりまでキチンと説明するのは相当の難題。 
D-1 ここ(に/で)車から降りる→「に」はヘン 
D-2 ここ(に/で)車に乗る→「に」はヘン 
D-3 ここ(に/で)車をとめておく→「に」が自然 
 ※これはたぶん「~におく」のほうが「~でおく」より自然だから。 
D-4 ここ(に/で)車を乗り捨てる→どちらもアリ 
 D-1&2を見る限り、やはり「ここで車をとめる」のほうが自然なのだろうか。 
================================ 

「駐車する」と「停車する」で助詞がかわる……そんなことはないだろう。 

 で、コメントを見る。 
 ヤバ。ほとんど何が書いてあるのかわからない。暑さのせいで読解機能が壊れた? 
「1」……意味不明。 
「3」……意味不明。何が「だから」なんだろう。 
「4」……意味不明。 
「5」……意味不明。 
「6」。よかった。やっと意味がわかるコメントがあった。ただ、意味はわかっても〈移動先、設置場所や方向・帰着点を表す「に」〉か否かは微妙(後述)。 
「7」……意味不明。「5」「6」と「ほぼ同じ意見」って、「5」と「6」の意見は違うのでは。 
「8」……トピ主の結論は、主として「6」の影響かな。〈「あそこ“に行って”停めてください」という意味(或いは略?)で、やはり方向を表す“に”〉と考えると、「デ」の働きとの対比がしにくのでは。「デ」は「あそこ“に行って”“そこで”停めてください」の略なのかな。 
 仮に〈「あそこ“に行って”停めてください」という意味(或いは略?)で、やはり方向を表す“に”〉だとする。じゃあ「ここニ停めてください」はどう説明するの? 
「9」……意味不明。なんかスゴい説が。〈助詞の「ゴミ箱」〉ですか。どこまで信用できるのかは、あの書き方では判断できない。 
  
 〈1〉で見た辞書を再掲する。 
■Web辞書(『大辞泉』から) 
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=11 
================================ 
に 
[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。 
1 動作・作用の行われる時・場所を表す。「三時―間に合わせる」「紙上―発表する」 
2 人・事物の存在や出現する場所を表す。「庭―池がある」「右―見えるのが国会議事堂です」 
3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家―着く」「東―向かう」 
================================ 

「~ニ車を停める」は「動作・作用の行われる時・場所」と考えるのが自然では。 
「存在や出現する場所」は「○○ニ{ある/いる}」など、動詞が限られる。 
「あそこ(の場所)ニ行ってください」なら帰着点だろう。 
「ニ」と「デ」の問題は、助詞の使い分けとしては簡単なほうだと思うがやはり難解。〈1〉で見たような大枠だけ示して、細かいことはスルーするべきだろう。 
 どちらも「動作・作用の行われる時・場所」を表わすが、「デ」は比較的広い範囲を指す傾向があり、「ニ」は比較的狭い範囲を指す傾向がある。 

 Wikipediaでは下記のように逃げている。 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A9%E8%A9%9E 
================================ 
日本語の助詞の使い分けには曖昧さがあり、例としては、「海に行く」と「海へ行く」の「に」「へ」や「日本でただ一つの」と「日本にただ一つの」の「で」「に」や「目の悪い人」や「目が悪い人」の「の」「が」、「本当は明日なんだけど」「お言葉ですが」「さっき言ったのに」「終わるの早いし」に見られる終助詞的な接続助詞の使用などが挙げられる。 
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場所を示す「ニ」「デ」〈4〉 日本語教師 

mixi日記2011年07月22日から 

 下記の続き? 
【助詞の話──場所を示す「に」と「で」〈1〉】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1465269234&owner_id=5019671 
【助詞の話──場所を示す「に」と「で」〈2〉「この電車は新宿〈に/で〉止まります」】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1691634170&owner_id=5019671 
【場所を示す「ニ」「デ」〈3〉 日本語教師】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1750477541&owner_id=5019671 

 テーマトピは下記。 
【「あそこに停めてください」「あそこで停めてください」】 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=63718241&comm_id=19124 


 トピ主は逃げてしまったのに、コメントは入りつづけている。「ニ」は「帰着点」なのか「存在」なのか、2派に分かれた様子。当方が本線と考えている「動作・作用の行われる時・場所」って意見はないのか。それは困った。 
 こういう展開になるとトピ主はつらいよな。いろんな人がいろいろ書いているけど、何をどこまで信用していいのかサッパリわからない。どれが信用できるか判断できる人なら、通常こういう質問はしないだろう。真剣に読めば読むほど迷路に入っていく。 
 妙なことを断言している人もいる。もしスッキリとした使い分けのルールがあるのなら、とっくに誰かが発表しているんじゃないかな。無理に理由づけしても例外を多すぎると思う。 
「駐車はニで、停車はデ」……。それはトピ主が「0」でふれていた説ですね。趣旨はわからなくはないけど、さすがに違うんじゃないかな。電車で考えるとどうなる? 電車は駐車しないから、「ニ」は使えないのかな。 

 あまり役に立たないことを承知で『goo類語辞書』をひいておく。 
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/17117/m1u/%E3%81%AB/ 
================================ 
で/に/を 
[共通する意味] 
★動きの場所を表わす。 
[使い方] 
〔で〕▽図書館で勉強した▽東シナ海で台風が発生した▽解説欄で詳しく説明する 
〔に〕▽カバは動物園にいます▽新製品に欠陥が見つかった 
〔を〕▽飛行機が空を飛んでいる▽瀬戸大橋を通って四国に行った▽家を出る 
[使い分け] 
【1】「で」「に」「を」は、具体的あるいは抽象的な場所を表わす名詞(もしくは名詞句)につく。これらは、結びつく動詞の性質や種類によって意味に違いがある。 
【2】「で」は、動作・出来事の起こる場所を表わす。動作を表わす動詞には、ほとんどつくことができる。 
【3】「に」は、ものの存在する場所を表わす。「に」と結びつく動詞は、「ある」「いる」「住む」「勤める」「座る」「立つ」「泊まる」「止まる」など。 
【4】「を」は、移動するときの経路の場所を表わす。「を」と結びつく動詞は、「歩く」「走る」「泳ぐ」「飛ぶ」「渡る」「通る」など。 
【5】「で」は、「に」あるいは「を」とも組み合わせて用いることができる。この場合、「で」の方がより広い範囲の場所を表わす。「東京でホテルに泊まった」「高速道路で追い抜き車線を走った」 
[参照] 
で⇒が/で/に/から/の・において/にあって/で/にあたって/に際し(て)/(の)折に・で/から・で/から/に・によって/で/でもって/をもって/を通して・に/で・で・で/をもって/でもって に⇒が/で/に/から/の・を/が/に・と/に/まで・から/に・に/へ/まで・で/から/に・に/から・に・に/で・と/に/や/とか/だの/やら/か/なり・ため(に)/のに/に を→を/が/に・から/を 
[対比表] 
  校庭…遊ぶ  椅子いす…座る  校庭…走りまわる  橋…渡る 
で   ○        -      △        - 
に   -        ○      -        - 
を   -        -      ○        ○ 
================================ 

 根本的な問題として、「デ」と比較される「ニ」の働きは「動きの場所を表わす」。そりゃそうだろう。 
「ニ」の解説を見ると、以下のとおり。 
================================ 
【3】「に」は、ものの存在する場所を表わす。「に」と結びつく動詞は、「ある」「いる」「住む」「勤める」「座る」「立つ」「泊まる」「止まる」など。 
================================ 
  
 そうか。「存在」に関しても「存在するという動作が行なわれる場所」と考えればいいのか。微妙だけど、そのほうが分類が少なくなるからそうしておこう。 
 この用法で結びつく動詞は、「ある」「いる」が典型。このほかに「住む」「勤める」「座る」「立つ」「泊まる」「止まる」などがあるらしい。たしかにそのあたりの動詞だと「存在」のイメージがあるかもしれない。じゃあ「ここニ書く」「皿ニ盛る」あたりはどう考えるの? 
「書いたもの」も「盛ったもの」も「存在する」と言えなくはないってことなのかな。 
 じゃあ、2つを合わせて考えよう。「ニ」は「動作・作用の行われる時・場所」を表わし、「存在」に関係する動詞と結びつくことが多い。「ある」「いる」「住む」「勤める」「座る」「立つ」「泊まる」「止まる」などのほか、「書く」「盛る」などとも結びつく。その程度で許してもらえないかな。 
 〈1〉~〈3〉で「デ」と「ニ」は〈どちらも「動作・作用の行われる時・場所」を表わすが、「デ」は比較的広い範囲を指す傾向があり、「ニ」は比較的狭い範囲を指す傾向がある〉などと書いた。この点について『goo類語辞書』は下記のように書いている。まあ、そういうことだろう。 
================================ 
【5】「で」は、「に」あるいは「を」とも組み合わせて用いることができる。この場合、「で」の方がより広い範囲の場所を表わす。「東京でホテルに泊まった」「高速道路で追い抜き車線を走った」 
================================ 

 さすがに辞書はムチャなことは書かずに無難にまとめているけど、[対比表]の部分はいただけない。 
「校庭ニ遊ぶ」って×? 古風だけど間違いではないだろ。せめて△にしてもらえないかな(後述)。 
「椅子デ座る」って×? せめて△にしてもらえないかな。これが「公園のベンチ( )座る」だと相当微妙になる。椅子よりもベンチのほうが広いからだろうか。「喫煙席( )座る」だと「デ」もOKだろ。もっと広くなるから? 「芝生( )座る」だとどちらもアリだろうな。理由はわかりません。これが「寝転がる」「寝る」「横になる」あたりだと「デ」のほうが自然な気さえしてくる。理由はわかりません。 
 ついでにインネンをつけると、例文の「新製品に欠陥が見つかった」って例文としてちょっと不適切じゃないかな。「新製品に欠陥があるのが見つかった」の略ってこと? 「新製品の欠陥が見つかった」のほうが素直な日本語って気がする。通常「○○に見つかる」は別の意味で、○○に入るのは人物とかだろ。もう少しフツーの例文にすればいいのに。 

 辞書の話は別として、気になっているのは「停める」と「停まる」のニュアンスの違い。 
  あそこ{ニ/ヘ/デ}停める 
  あそこ{ニ/ヘ/デ}停まる 
 個人的な語感だと、イヤな感じがするのは「あそこニ停まる」「あそこヘ停まる」。理由はわかりません。 

 さてとこむずかしい話に飽きたんでヨタ話に走る。 
「校庭ニ遊ぶ」の類いは昔の文章ではよく見た気がする。そのせいか、文語調と相性がいい。 
『阿寒に果つ』って渡辺淳一の作品があった。これはフツーの言葉にすると、「阿寒で果てる」だよな(マヌケだな)。 
 西部警察の最終回は「大門死す! 男達よ永遠に…」──。あれ? 「大門、暁に死す!」だとばかり思い込んでいたけど違ったorz。相当にヨタってるな。 
「暁に 死す」で検索するとゾロゾロ引っかかってくる。精密機器のような記憶力が狂ったのはそのせいか……うるさいわ。 
 余計なことだけど、「阿寒ニ」の「ニ」と、「暁ニ」の「ニ」は意味合いが違う。 
「阿寒ニ」の「ニ」は古風なニュアンスのある「ニ」。現代の日本語なら「阿寒デ」がフツーだろう。「阿寒ニ行く」の場合は到達点だからまた別の話。このあたりをちゃんと説明するのはとってもむずかしいのでパス。うんと乱暴に書くと、「ヘ」と互換性があるのが帰着点の「ニ」の可能性が高い。「動作が行なわれる場所」を表わす「ニ」は、「デ」と互換性がある場合とない場合がある。↑で見たとおり、「あそこ{ニ/ヘ/デ}停める」のように、3つが使える場合もある。 
 一方「暁ニ」の「ニ」はいまでもフツーに使う。かと言って「夕刻ニ死す」「午後3時ニ死す」だと相当珍妙。どこかで「阿寒ニ」の「ニ」と混用されたのだろうか。

 

※場所を示す以外の「ニ」の働きに関しては下記参照。

場所を表わすニの働き 二の特殊用法?】2016-05-22

 

 

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