「もしかしたら」「たぶん」「きっと」──推量を表わす副詞の程度 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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 テーマトピは下記。 
【「もしかしたら」「たぶん」「きっと」の違い】日本語しつもん箱 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=40393863 

 2009年03月04日に立ったトピック。 

 トピ主の「0」の抜粋。 
================================ 
 先日、中国人の日本語学習者さんから、以下のような質問を受けました。 
<質問> 
「もしかしたら」「たぶん」「きっと」の違いは何ですか? 

 <私が考えている回答> 
1)日本語辞書でそれぞれを調べてみました。 
「もしかしたら」ひょっとすると 
「たぶん」おそらく 
「きっと」まちがいなく 

2)天気予報の降水確率をヒントに例文を考えました。 
 もしかしたら、明日は雨が降るかもしれない。 
 たぶん、明日は雨が降るでしょう。 
 きっと、明日は雨が降る。 

<そこで私からの質問です> 
・それぞれの降水確率って何パーセントくらいなのでしょうか? 
 私は「もしかしたら→10%」「たぶん→50%」「きっと→90%」くらいかなと考えます。 
================================ 

【tobiクンのコメントの抜粋】================== 
 個人的には「きっと」のほうが「たぶん」より程度が強いのですから「客観的・論理的」だと思います。強く主張する気はありませんが。 

「きっと」は推量などを表わす副詞でしょうから、話し手(もしくは「書き手」)の主観を含むでしょう。 
 話し手にとって肯定的な事象(望ましいこと……「願望」といいかえてもいいかもしれません)に使える 
例:「きっと来てくれる」 
 話し手にとって否定的な事象(望ましくないこと……「戸惑い」とは限らないでしょう)に使える 
例:「きっと来てくれない」 
  
 つまり、「きっと」は話し手の(かなり強い)推量などを表わし、肯定にも否定にも使える。 
 それだけではないでしょうか。それが「願望」になるか「戸惑い」になるかは、文脈しだいだと思います。 


 元にもどってトピ主の質問に対する当方の考えを書きます。 
 たぶん、「1」のコメントと似た内容になると思います。 

>「もしかしたら」「たぶん」「きっと」の違いは何ですか? 

 いずれも話し手(もしくは「書き手」)の推量などを表わしますが、「程度や可能性」が違います。 
「1」や「5」 のコメントにあるように 

  もしかしたら<たぶん<きっと 

 でいいと思います。これを数値化するのはむずかしいのですが、あえて言うなら「1」のコメントにあるくらいでいいと思います。トピ主が最初に考えたものより、もう少し幅があると思います。あくまでも目安ですので、誤解のないように。 

 ちなみに当方の感覚だと不等号(「↓」で表わします)は以下のようになります。 
 これも目安でしかありません。たとえば、C群のなかでは、「きっと」は「程度や可能性」が少し低い気がします(正確には「程度」は「弱い」?)。 

A もしかしたら、もしかするとetc.…… 
   ↓ 
B たぶん、おそらくetc.…… 
   ↓ 
C きっと、間違いなく、必ず、絶対にetc.…… 

A群は、「かもしれない」などで受けるのが一般的です。 

B群は、「でしょう」などで受けても受けなくても間違いではありません。どちらかと言うと、受けるほうが一般的だと思います。 
○「たぶん、明日は雨が降るでしょう。」 
○「たぶん、明日は雨が降ります。」 

 C群も、「でしょう」などで受けても受けなくても間違いとは言えないと思います。ただ、個人的には受けません。「でしょう」などよりは「はず」などで受けるほうが自然だと思います。 
○or△「きっと、明日は雨が降るでしょう。」 
○「きっと、明日は雨が降ります。」 
○「きっと、明日は雨が降るはずです。」 

 こう書いてきて、天気の話だと「きっと、明日は雨が降ります。」「きっと、明日は雨が降るはずです。」はほんの少しヘンな気もします。理由はわかりません。おそらく、天気の予測を断定するのが不自然だから(です or でしょう)。 
「きっと、彼は来ます。」「きっと、彼は来るはずです。」なら問題を感じません。 

================================ 

 副詞のなかには、原則的に否定形の文末を伴うものがある。「決して」とか「めったに」とか。個人的には「全然」もそうだと思うが、諸説あって書きはじめると長くなる。 
【関連トピ紹介】11──全然+肯定形は是か非か 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=46001081 

  あるいは、肯定的なこと限定で使うもの(「幸いにも」とか)や否定的なこと限定で使うもの(「不幸にも」とか)もある。でも多くの副詞はそういう制約なしで使えるはず。数少ない制約に関しては辞書レベルに出ている。それ以上に制約をつけたり独自の意味やニュアンスをもたせたりするのは誤解の元だろう。 

「もしかしたら」「たぶん」「きっと」……いずれも推量を表わす副詞だから、話し手(もしくは「書き手」の主観が入るのは当然のこと。多くの副詞の場合、その主観が肯定的か否定的かは文脈しだい。 
  【例】遭難した兄を心配する妹の言葉。 
  1)もしかすると、生きているかもしれない 
  2)もしかすると、死んでいるかもしれない 
  3)たぶん、生きている 
  4)たぶん、死んでいる 
  5)きっと、生きている 
  6)きっと、死んでいる 
 1)~6)は全部成立する。 
 願望を表わすのか戸惑いを表わすのか◯◯を表わすのか△△を表わすのかは文脈しだい。それだけのことだろう。 
「も しかして」には「意外な結果」を含む場合があるのでは……というコメントがあった。当然だろう。推量でしかないから、「意外な結果」になることもある。「もしかして」は「程度や可能性」が一番低いから、当たらないことが多い。当たらないから「意外な結果」になることが多いってことだと思う。それは「もしかして」に「意外な結果」という含意があるのとは少し違うと思う。 
 そもそも、1)~6)を見てわかるように、「結果」でないことも多い。 


【続きは】↓ 
【きっと 必ず 絶対(に)】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2323.html 

 前に書いたとおり、「きっと」「必ず」「絶対(に)」は、いずれもかなり強い確信を表わす副詞。「願望(望ましいこと)」を表わすという説もあるが、違う気がする。 
「確信」の内容は、「願望」のこともあれば、「戸惑い(望ましくないこと)」のこともあり、文脈によってかわってくる(「戸惑い」より「困惑」「絶望」のほうがいいかも)。 
「確信」の度合いで言うと、「必ず」「絶対(に)」のほうが、「きっと」より強い傾向がある。「きっと」は文末に「だろう」がついたりするが、「必ず」「絶対(に)」にはつかないほうが自然。「間違いなく」あたりも「確信」の度合いが相当強くなる。 
 詳しくは下記をご参照ください。 
【参考サイト1/「きっと」の意味】 
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1180508871 
【参考サイト2/「絶対」と「必ず」の違い】 
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1281572462 
※なぜ削除される。バックアップは下記。 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2330.html 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1830929105&owner_id=5019671 

 今回は用法を見てみる。 

 こういうときの常道でgoo辞書の類語辞典をひく。 
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/4356/m0u/%E3%81%8D%E3%81%A3%E3%81%A8/ 
================================引用開始 
きっと/必ず(かならず)/絶対(に)(ぜったいに) 
[共通する意味] 
★間違いなくそうなると判断する、話し手の気持ちを表わす語。 
[英]certainly; surely 
[使い方] 
〔きっと〕(副) 
〔必ず〕(副) 
〔絶対(に)〕(副) 
[使い分け] 
【1】「きっと」は、推量の意味が強く、主観的な判断の場合にもよく用いる。 
【2】「必ず」「絶対(に)」は、「きっと」よりも心に強く定めて言い切る表現。客観的な判断に多く用い、例外はないとする語。 
【3】「必ず」が肯定の場合にだけ使われるのに対して、「絶対(に)」は肯定・否定いずれの場合にも使われる。 
[参照] 
絶対(に)⇒決して/断じて/絶対に 
[対比表] 
   この商品は あの人は… 彼女は…疲  筆記具を…  …うまく行くと  
   …売れる  行かないよ れたのだろう 持参すること は限らない   
きっと  ○    ○     ○      -      - 
必ず   ○    -     -      ○      ○ 
絶対(に)○    ○     -      △      ○ 
[分類コード] 
220-13→分類一覧 
================================引用終了 


【1】「必ず」の後ろは肯定形限定 
1)(この日のことはいつまでも){きっと/必ず/絶対(に)}忘れない 
2)(この日のことはいつまでも){きっと/必ず/絶対(に)}覚えている 

 ↑の類語辞典を見ると、〈「必ず」が肯定の場合にだけ使われる〉とある。たしかに、 
 1)2)なかで、1)の「必ず」には異和感がある。個人的にはちょっと違う考えをしているが、辞書にはさかわらないでおく。 


【2】現在/未来の話の形容詞に「必ず」はつきにくい 
【3】過去の話の形容詞に「きっと」はつきにくいことがある 
3)ここのカレーは{きっと/必ず/絶対(に)}おいしいよ 
4)子供の頃、母の作るカレーは{きっと/必ず/絶対(に)}おいしかった 

 現在や未来の話だと、「必ず+形容詞」には異和感がある。 
 これが過去の話だと、なぜか「きっと+形容詞」のほうが異和感が強くなる。  


【4】過去の話は「きっと」がつきにくいことがある 
5)誕生日には{きっと/必ず/絶対(に)}ケーキを食べた 
 過去の話で「きっとケーキを食べた」だと異和感がある。 

 【3】【4】を見ると、過去の話に「きっと」は使えない印象がある。 
 なんらかの制約があるってことだろう。下記の形だと自然になる。 
「きっとおいしかったに違いない」 
「(彼は)きっとケーキを食べたに違いない」 
 他者の主観などを推測する形なら使えるのかもしれない。 


■「必ず」の詳細分析(大きく出たもんだ) 
 基本的には【1】~【4】でいいと思う。 
 細かい例外をほじくってみる。まず「必ず」について。 
■Web辞書『大辞泉』から(『大辞林』もほぼ同じなので省略) 
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E5%BF%85%E3%81%9A&stype=0&dtype=0&dname=0na 
================================引用開始 
かならず【必ず】 
[副]《「かり(仮)ならず」の音変化》 

1 例外のないさま。きまって。いつでも。「毎朝―散歩する」「会えば―論争になる」 
2 確実な推量、または強い意志・要請を表す。まちがいなく。絶対に。きっと。「いつかそういう日が―来る」「―勝ってみせる」「印鑑を―持参すること」「―成功するとは限らない」 
3 (あとに打消しや禁止の語を伴って)決して。かならずしも。 
  「行幸といへど、―かうしもあらぬを」〈源・行幸〉 

[用 法] かならず・きっと――「この薬を飲めば必ず(きっと)病気が治る」「勉強すれば必ず(きっと)合格する」など、両語とも可能性の強い状態を表すが、「必ず」のほうが確率的により高い場合に使う。◇両語とも「この借りは必ず(きっと)返す」のように決意を表す語としても用いられる。◇「三に二をかけると必ず六になる」「太陽は必ず東から昇る」など、不変の真理を表す場合には「きっと」は使わない。逆に「彼はきっと帰ったんだろう」など、推量の気持ちの強いときには、「必ず」は使わない。 
================================引用終了 

「3」の記述に疑問を感じる。【1】で見たように〈「必ず」の後ろは肯定形限定〉だったのでは。 
 もう少しほじくると、肯定の前にあると「きまって。いつでも。」で、否定の前にあると「決して。かならずしも。」……これって結果的には同じことじゃないの? わざわざ別にする理由はあるの? 
 辞書の主張が真っ向から対立しているとき、当方の態度はだいたい決まっている。自分に都合のいいほうを選ぶ。都合の悪いほうにはふれない。あれ? 都合の悪いほうも書いちゃった……(泣)。 
 冗談はさておき。 
  おそらく、「絶対+否定形」がダメってことではないが、ほとんど使われない……ってことだと思う。この形は古文限定で現代語では使わない、という気もするが、当方は強力な例外を知っている。古いフォークソング(重言?)に「必ず忘れないでくれた」というのが出てくる。父から聞いた話なんで、このヒントだけ でわかった人は相当古い(笑)。 
 ちなみに、後ろが肯定形限定というのは珍しい気がする。 
 後ろが否定形限定の副詞はけっこうある。 
  決して/めったに/かならずしも……etc. 
 「全然」「まったく」「とても」の話を始めると長くなる。 
「全然」「まったく」「とても」知恵袋 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1641.html 


■「必ず」の詳細分析(大きく出たもんだ)2 
【2】現在/未来の話の形容詞に「必ず」はつきにくい、の例外。 
「必ず」と「おいしい」の組み合わせでも、下記なら異和感がない。 
6)必ずおいしくなる 
7)必ずおいしく食べられる 
8)必ずうまくいくから大丈夫 

 言うまでもないことだが、6)7)の「必ず」は「おいしく」にかかっているわけではない。だから異和感がないのだろう。 
 じゃあそれをちょっと省略した「必ずおいしい」が×になる説明を論理的にお願いします。少なくとも当方はお手上げ。 
 8)になると相当微妙。何も問題がない気もするが、この「大丈夫」の働きがわからない。「励ましの大丈夫」だろうな。「きやすめの大丈夫」「他人事の大丈夫」って気もするけど。 
294)【「大丈夫ですか」考 日本語】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1574884694&owner_id=5019671 
 これをちょっと省略して「必ず大丈夫」までいくとさすがに受け付けない。これだって×になる論理的な説明は相当むずかしいと思う。 


■「必ず」の詳細分析(大きく出たもんだ)3 
「詳細分析」1&2から予想できること。 
「いつも」の意味の「必ず」なら、制約がゆるくなるのでは。 
【1】「必ず」の後ろは肯定形限定 
1)この日のことはいつまでも必ず忘れない 
1)’祖母は毎朝僕を起こすことを必ず忘れないでくれた 
 1)’は「いつも」の意味なので異和感が薄れる。 

【2】現在/未来の話の形容詞に「必ず」はつきにくい 
3)ここのカレーは必ずおいしいよ 
3)’ここのカレーはいつ食べても必ずおいしいよ 

 念のためにgoo辞書の類語辞典の[対比表]を確認する。類語辞典の記述ではほとんどの説明ができないので、当方が補足する。 
   この商品は あの人は… 彼女は…疲  筆記具を…  …うまく行くと  
   …売れる  行かないよ れたのだろう 持参すること は限らない   
きっと  ○    ○     ○      -      - 
必ず   ○    -     -      ○      ○ 
絶対(に)○    ○     -      △      ○ 

あの人は必ずいかないよ→「必ず」の後ろは肯定形限定なので×。 
彼女は{必ず/絶対(に)}疲れたのだろう→強い確信の{必ず/絶対(に)}と「だろう」は相性が悪い。 
筆記具をきっと持参すること→命令形と「きっと」が相性がわるいのかもしれない。これが「筆記具をきっと持参するんだよ」のような話し言葉だと異和感がなくなる。「筆記具を絶対に持参すること」が△になる理由は不明。 
きっとうまく行くとは限らない→確信の度合いが弱い「きっと」と「限る/限らない」の相性が悪いのだろう。「{きっと/必ず/絶対(に)}うまく行くはずだ」なら異和感がない。 


■「絶対(に)」の詳細分析(大きく出たもんだ) 
 疲れたからまた今度ね。

 


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