ワルツ・フォー・デビイ (Waltz for Debby ビル・エヴァンス 61年)
静かで抒情的なアルバムという印象が強かったアルバムですが、久しぶりに取り出して聞いてみて、結構スリリングなところもある丁々発止の音楽だったということにあらためて気づきました。
このLPをよくターンテーブルの載せていたのは、コルトレーンの後期やフリージャズの合間の箸休めという感じだったために、特にそう思い込んでいたのかもしれません。
しかしヴィレッジ・ヴァンガードで行ったライブの録音なので、ノリのいいところもやや派手に演出するところもあって当然でしょう。
特にスコット・ラファロのベース・ソロになると熱を帯びて聴衆を煽るような感じがあって、ピアノが中心となるメイン・パートとは客席の雰囲気もかなり変わっているようです。
今の我々は、この11日後に他界してしまう悲運のベーシストの最後の演奏として聞くことが多くなりますが、この時の当人や周りはそんなことを全く知る由もなかったはずなので、ある晩の普通の演奏として聞く方がその遺志に叶うのだと思います。
それにしても、ビル・エヴァンスのピアノの美しさは時を超えて変わることなく、特に5度の下降跳躍で始まる表題曲の魅力は褪せることがありません。