腰痛の患者さんは非常に多く、治療する側も腰痛の勉強に多くの時間を割いています。
そこでよく「腰痛では脊柱起立筋のアプローチが大切。」ということを聞きくのですが、これには異論はありません。
しかし触診している部位を見ていると「そこだと多裂筋じゃないかな?」という方がおられます。
多裂筋は『固有背筋』ではあるのですが『脊柱起立筋』ではなくて『横突棘筋群』に分類されます。
また第3腰椎の高位だと、多裂筋と脊柱起立筋の断面積は同じくらいで、棘突起の両側は多裂筋、その外側が脊柱起立筋という位置関係になっています。
なぜ多裂筋が腰痛治療に大切かと言いますと、固有背筋は脊髄神経後枝に支配されます。
腰椎の脊髄神経後枝は、内側枝と外側枝に分かれて分布していくのですが、内側枝は腰椎の椎間関節や多裂筋に分布します。
そのため腰椎の椎間関節に何らかの障害が出ると、多裂筋の攣縮(『れんしゅく』と読み『筋スパズム』ということもあります。筋肉が持続的に緊張したり痙攣している状態をいいます。痛みを伴うことも多いです。)が発生するとも考えられているんですね。
上記の理由から、腰椎の運動と関係が深そうなのは、脊柱起立筋よりも多裂筋の可能性が高いと考えられるんですね。
長時間の座位によって前弯が減少していたり、良い姿勢にしようと腰を反りすぎている方などの慢性的な腰痛は、椎間関節の硬化や多裂筋の攣縮等を疑いながら触診や徒手検査を行うわけです。
施術者によっては『固有背筋=脊柱起立筋』のような覚え方をしている方も多いのですが、誤りです。
多裂筋は非常に大切な筋肉ですので、改めて固有背筋や横突棘筋群など、背部の筋肉に注目していただけると嬉しいです。