春川で新作の撮影があり、誕生日前の一週間、長期で留守することになった。
出掛ける前の夜、カラダを繋げながら俺が耐えうるギリギリまでソギに血を与えた。
唇を離したソギがペロリと舌で唇に僅かに着いた俺の血を舐め取った。
「もっと吸え。これ位じゃ一週間保たないだろ?」
「大丈夫だよ。いざとなったら誰かの血を頂くまでだし。」
「……。それが嫌だからこうして血を吸わせてるんだろ?」
俺の嫉妬心を煽るようなことを言うソギの腰を掴み、少し乱暴に揺すってやった。
「あんっ…やめろよ!」
甘い嬌声とともに睨まれても、返って愛しさが増すだけだった。繋がったまま抱き締めていたソギをベッドに再び押し倒した。
押し倒されたくせに、挑むような誘惑の眼差しで俺を見るソギに欲望を掻き立てられた。激情にまかせて激しく楔を打ち込むと背中を仰け反らせてソギは喘いだ。
冷んやりとしたソギの肌が熱を帯びてくる。冷たい肌と裏腹な熱いソギの中を俺は心ゆくまま楽しんだ。
結局、日が昇るころまで俺はソギのカラダを離せずにいた。
俺に抱かれ色窶れしたソギにベッドから見送られ、後ろ髪を引かれながら春川に出発したのが一週間前の朝だ。
本当は今日、誕生日の朝には家に帰れて、二人でささやかなディナーに出掛ける予定だった。そんな甘い計画も、撮影が延び、家に着いたのは夜10時を回っていた。
「ソギ!!」
玄関の扉を開けるや否や、すぐさま呼びかけた。
真っ暗な部屋に人の気配はない。慌てて部屋の明かりをつける。
ソギはまるで棺の中の死人のような青白い顔でソファに横たわっていた。
近寄ると僅かに胸が上下しているのがわかった。
ソギの命が永遠なのはわかっているのに、その儚げな様を見ているといつも不安になり、ついついこんなことがあるたびに、ソギが生きているのかと確認してしまう。
ホッとしてソファの傍らに跪くと眠るソギを抱き寄せた。
けれども、ソギは目覚めない。
「…やっぱり……無理にでも早く帰ってくればよかった。」
思わず後悔の言葉が唇から零れた。
目覚めないソギが不安で、俺は軽くソギの青白い頬を叩いた。
「…うん……」
眠り姫さながら、ソギはゆっくりと目蓋を開けた。ソギの茶色の瞳の中に俺が写っていた。
「…帰ったんだね…おかえり……」
まだぼんやりとしながら呟いたソギは俺に凭れ、また目蓋を閉じようとしている。
俺はソギを揺り動かした。
明らかに元気がないソギが心配で俺は自分の首すじにソギの顔を引き寄せ言った。
「とりあえず俺の血を吸え。」
腕の中のソギを覚醒させようとしても、ソギのカラダは脱力したままだ。
「ん?大丈夫だよ…お腹空いてない。」
俺の肩に凭れたソギが呟く。
「嘘つけ。こんなにも青白い顔して…」
ソギの白い頬を指でなぞった。いくら吸血鬼とはいえ一週間も血を吸わなければ飢餓感を覚えるはずだ。
呪わしい永遠の命は、ソギを殺さないでいてくれるが、その分苦しみを与える。
俺の心配を知らないソギはまた眠りに堕ちようとしていた。
「このまま抱いていて。何だか眠い……」
まるで永遠の眠りについてしまいそうなソギに不安が更に募る。
血より眠りが優先されるほど、本当に腹が減ってないのか?
そんな考えが浮かんだ時、ふと思った。
「まさか…誰かの血を吸ったのか?」
血を吸わないソギへの疑念が口を突いて出た。
一週間も離れていたのは俺だ。ソギが我慢出来なかったとしても文句は言えない。燃え上がりそうな嫉妬の焔を無理矢理抑え込みソギの顔を覗き込んだ。
俺の声の調子が険のあるものなのを感じ取ったのか、ソギは眠たげな目蓋を開けるとやんわりとした笑みを浮かべた。
俺の頬を宥めるように両手で包み込むと、そのまま啄ばむようなキスをくれた。
「ふふ…心配するなよ。誰の血も吸ってない。アンタの血だけで我慢しようと思ったからずっと寝てたんだ。
こうやって寝てばかりだったからなかなか覚醒できなくて…。」
そう呟いたソギは目の前にある俺の首すじに口付け、舌を這わす。
艶めかしい愛撫を感じながらも、つまらない嫉妬をしてしまった己れの愚かさに後悔していると、舌を這わせながらだんだんと覚醒して来たソギが俺の腕をすり抜けキッチンに行ってしまった。



