昨日は本社出向の日だった。
書類提出するフロアに着いてみると、共用の長いデスクの真ん中に、見慣れた後ろ姿が。
私が正直苦手としている同僚だった。
オフィス内には他にも多くの人が行き来しているし、別に声を掛けなくてもいいよね……
と、遠巻きにして私は書類提出を済ませて早々に本社を出た。
あっちも、日頃からお互いに暗黙の了解というかソリが合わないことは分かってる風なところがあるからか、特に話しかけてくることも無かった。
建物を出て時計を確認。17:10。
そこで、あれ? と思う。
あの同僚、今日は都内の他所の大学に出張な筈。勤務終了は18:00。
えっ、なんで今いたの? それとも他人の空似だったのに私が忌避し過ぎて勘違いした???
勿論、確かめに戻るようなことでもなく、若干悶々としたまま建物を離れた。
花園神社の近くの大きな交差点を渡って、伊勢丹の角にあるメトロの入り口を目指して歩いた。
東上線の定期を持っているので、JR新宿駅から池袋を経由して東上線に乗った方が節約になるのは分かっていたが、乗り換えが面倒だったので一本で帰れるメトロにしたのだ。
交差点を渡り終えた時、自分の前に杖をついた男性が来た。
左足が不自由なようだったけど、歩くのはそこそこ速い。おぉ、お元気だなぁ、と見ていてちょっと頼もしく思わされる後ろ姿だった。
彼を抜いてサッサッと通り過ぎて行く人も多かったが、私は「別に急がないしな」と彼の後ろについて歩いた。
私は歩くのが速い方なので、彼を抜いていった人達と本来同じくらいのスピードだと思う。
でも、その歩道は人通りも多いし、向かいから来る人々の動きを読むのが面倒だったというのもあって、その時は敢えてそうした。
彼は次の交差点で車道を渡って行ったので、ほんの数十メートル歩いた辺りで別々になった。
伊勢丹の角からメトロの入り口を降りて、これまた人のごった返す地下歩道に出た。
すると、警備員が両手を広げて、「失礼しまーす。失礼しまーす」と、私の前を過っていく。
何だろうと思っていると、その警備員の後ろに、恐らく先天的な奇形なのだろうが、足の不自由な男性が続いていた。
なるほど、雑踏の中を誘導しているのだなぁと思っていると、これまた方向が同じらしく、ついて歩く形になる。
「別に急がないしな」と思って、私はゆっくり歩いた。
一旦はエレベーターとエスカレーターで別れたが、改札を抜けてからまた合流し、ホームでも一緒に。
その後、彼は反対側の電車に乗り込んで行ったので、今度こそ別々になった。
似たようなことが続けてあるもんだなぁ……なんて事のない話だけど。
と思いつつ電光掲示板を見ると、お目当ての電車がドンピシャで数分後。
これはラッキー! と少しテンションが上がる。
というのは、そこは東京メトロ副都心線のホームで、「当駅止まりで回送」「西武線直通」が立て続いた後に10〜15分くらい待ってようやく「東上線直通」に出会えることが多いからだった。
そこで、ふと思った。
あー……もしかして、まったり歩いたから丁度いいタイミングでホームに着いたのかもなぁ、と。
いつも、実は、忙しなくし過ぎで精神的に損してるようなことが多いのかもしれないなぁ、と。
勉強になったわ……と思って、到着した電車の扉が開くのを待った。
プシューッとお馴染みの音を立てて、ホームドアと共に扉が開く。
ドッと人が流れ出てくるかもしれない……と無意識のうちに若干構えていたのだけれど、意外なことにそれが無い。
あれ? と思った。
そして、なるほど、と。
ドアの3分の2を埋める感じで、車椅子の女性が乗っていらっしゃった。
降りる利用客達は、その残りの空きスペースから整然とホームに降り立っていた。
それにしても、今日は身障者の方々とよく出会うなぁ。それでいて、まったりとした穏やかな気持ちにさせられることばかりだった。こういう日もあるんだなぁ。
などと考えながら、私は吊り革に掴まってスマホを取り出した。
そうだ、さっき思いついた呟怖を書こう。
自分で投下した13下り階段画像で、思いついたやつ。
↓
階段の前に立った時点でその人は既に死んでいて、見知ったようでいて見知らぬその駅の階段を降りて外に出たら、そこは地獄の一丁目なんだ。
主人公は、不慮の事故だか投身自殺だかで、電車に轢かれて死んでいる。
……そんなネタだった。
ネタは出来上がっていたので、あとは字数制限に合わせなければならない。
どこを削って、どんな表現にしようか……
うんうんと考えていたら、車内アナウンスが入った。
「只今入った情報によりますと、東武東上線○○○駅におきまして、人身事故が発生しました……」
○○○駅というのは、私の職場最寄り駅。
今日はメトロを使ってるし、今この電車まで影響は無いだろうけど……なんて日だ。
そう思った。
それが、昨日の、17時〜18時までの1時間の間に起こった出来事。
一つ一つはなんて事のない風景に過ぎないのかもしれないけど(勿論、人身事故は違いますが)……こう重なると、何だったんだ!? って思っちゃったので、まとめてみました。
