マジすか学園6 坂道譚 第14話 | 黒揚羽のAKB小説&マジすか学園小説ブログ

黒揚羽のAKB小説&マジすか学園小説ブログ

マジすか学園の二次創作を書いています。マジすか学園を好きな方、又同じく二次創作を書いている人良かったら読んでください。







砂塵が舞う校庭。
関有美子と分かれたひかるはマジ女の校門を跨ぐ。その瞬間、方々から視線を向けられる。




歓迎ではなく敵意。目を向ければ、焚かれたドラム缶を囲う女達が鋭く睨んでいる。ゆらゆらと紫煙が立ち昇っていた。



ひかるの方から視線を切って、歩いていく。
チッと舌を鳴らす音が聞こえたが、無視する。こちから喧嘩を吹っ掛ける理由がない。
ここで乱闘などすればひかるへの心証は更に悪くなる。




無益な喧嘩はしないに限ると、さらされる視線の中を進み、校舎の中に入っていく。清潔感の欠片もない校内にはあるべき下駄箱がなく、ひかるはスニーカーのまま廊下を歩いていく。




「オイ、見ろよ」



「チッ。よく学校に来れるよな」




睨まれ、陰口を叩かれてもひかるは気にしない。
“テッペン宣言”した事は間違っていないと思っているから。



“テッペン”からの景色を見る以上、どこかのタイミングで“テッペン宣言”する必要がある。つまり、早いか遅いかの違いしかない。



そう考えているひかるにとって、周りの声など雑音でしかない。雑音に耳を傾ける程、暇じゃないとズレたリュックを直し、毅然とした態度で廊下を進む。






1年C組。
昨日の今日で来るとは思っていなかったが、増本達にお礼する以上、避けては通れない。



「ふう〜」



小さく息を吐いてから、ドアに手をかける。心臓がドクン、ドクンと力強く脈打ち、拒絶されたらどうしようと不安が広がる。




『ーーまた来なよ。私達はそういうの気にしないから』



増本の言葉が脳裏に甦る。彼女は優しい。
見ず知らずの他人に肉を分け与えたり、誰もが忌避しているのを気にしなかったりと、数日で彼女の人となりが良く分かった。




(……大丈夫、何とかなる)




そう言い聞かせ、ひかるが勢いよく引き戸を開けると、中にいた生徒達の視線が一斉に集まるも、すぐに森田かよと、視線が霧散する。



(あれ、思ってたのと違う)




ひかるはもっとざわついたり、絡まれたりすると
思っていたが、現実は違い、特段ひかるを気にせず、思い思いに過ごしている生徒達。



気にしすぎていただけかと思いながら、中に入るも、増本達がいない事に気付く。ただいた痕跡がある。



彼女達は教室の1番奥を陣取っており、椅子の代わりとして雑誌を積み上げ、七輪を囲っている。
今は無人。七輪の上では焦げた肉が何枚も置いてある事から、つい何分か前までいた事が推測できる。




「あの子達は?」




ひかるが生徒達に問うと、途端にざわざわし始める。ひかると目を合わせようとせず、気まずそうな空気が立ち込む。




間違えなく何かあったんだとひかるが悟ると、2人の女生徒が意を決したように前に出る。




「増本達なら連れていかれたよ、生徒会に」



「生徒会?私のせいで?」



「違う!別件だ。アイツらカツアゲしたらしい。された奴が生徒会にチクったんだよ」



苦々しい顔で言う生徒。カツアゲ?とひかるが首を捻る。彼女達は焼肉している。少なくとも入学してから今日まで。


肉はそれなりの値段がする。5人で食べようものならその金額は10000円に届くかもしれない。費用を考えれば、増本達がカツアゲでそれを賄っていたとも考えられる。



だが、ひかるはそう思えなかった。出会って数日、彼女達の事なんて何も知らない。だけどハッキリと、増本達はカツアゲなんてしないと言い切れる。



根拠なんて何もない。単に彼女達はそんな事しないと思いたいだけなのかもしれない。



ただ……ただ……




『ほら、食えよ』



『ーー一緒に食べようよ』




他人に優しく出来る人達が、そんな事するとは思えない。



「どこに連れていかれたの?」




「……生徒会が誰かを“粛清”する時は決まって体育館倉庫を使う。あそこなら邪魔も入らねえし、人目にもつかねえ」




「体育館倉庫ね、ありがとう」



軽く微笑み、リュックサックを机の上に置いて、出ていこうとするひかるを生徒が呼び止める。




「まさか行くつもりか?やめとけ。あそこには副会長の高瀬もいる」



「だから?」



「無茶だって言ってんだよ」




怒気の孕んだ声で生徒が言うと、ひかるがあっと察した。彼女達も同じ気持ちなんだと。本当は助けに行きたい。だけどいけない。




(慕われてるんだね)



口角を吊り上げ、生徒達に背を向けて歩いていくひかる。引き戸の前で足を止め、生徒達の方に目を向ける。



「誰がいるとか関係ないよ。私はさ、受けた恩は必ず返すようにしてる。だからこれは私なりの“恩返し”なの」




燦然と、櫻色に輝く瞳に生徒達は言葉を失い、魅入る。ひかるが口角を更に深くすると、引き戸を開けて、飛び出したーー。







続く。