マジすか学園episodeof欅坂 第71話 | 黒揚羽のAKB小説&マジすか学園小説ブログ

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マジすか学園の二次創作を書いています。マジすか学園を好きな方、又同じく二次創作を書いている人良かったら読んでください。






狂気を纏った拳が女達の顔面を打ち抜いていく。鮮血が舞い、女達が地面に転がっていく。ねるは口元を三日月に歪め、無言で女達へ肉薄し、拳や脚を振るい、沈めていく。


「何やってんだっ!!!相手は1人だぞ?さっさと潰せ」


次々とやられていく女達を見て、リーダー格の女が顔を険しくさせて叫ぶ。リーダー格の女は梨加の傍におり、ねるの位置からリーダー女の位置は約数メートルだ。しかし女達が立ち塞がり、行かせようとはしない。



ねるの拳が女の頰を突き抜けていき、続け放たれた右足が女の首筋を捉え、振り抜かれると女が肩から地面に倒れ込む。すると背後からねるを狙う者がいた。



「死ねやっ!!!」



角材を振り上げ、ねるの頭に叩きつけると鈍い音が辺りに響き渡り、衝撃で角材が折れ、ねるの体が崩れる。その隙を見逃さず、ねるの正面に立っていた女が腹部に膝蹴りを叩き込むと横合いから飛んできた拳が頰を打ち抜く。ねるの体がよろける。


「イヤ……」



「ははは、ざまーみろ」



梨加が口元を押さえながら小さな悲鳴を上げ、リーダーの女が歓喜の笑みを浮かべ、嘲る。ただ2人はまだ知らない。狂気の化身と化したねるの実力を。



「長濱っ!!!」


女が叫びながら追撃を仕掛けてくる。ねるは頭から流れてきた血で染まった顔に笑みを貼り付けたまま、床に落ちている角材を拾い、間合いを詰めてくる女の頰を殴り飛ばした。凄まじい音と衝撃が駆け抜け、角材が折れ、女の顔が弾け、鮮血が地面に散ると、女は横に滑り込むように倒れる。



「てめえっ!!!」



女が踏み込んで、左拳を放ってくる。ねるは腕を上げて防ぐと、素早く左腕を腋窩に挟み、拳を女の顔面に叩きつける。更にもう一発、二発と続けて拳を打ち込む。


だがそれで終わらず、4発目の拳が鼻柱を叩くと、鼻骨がミシッと軋み、女の顔が盛大に歪むと、ねるの笑みが色濃くなり、5発目の拳を寸分の狂いなぬ鼻柱にみまうと、女の顔が後方に弾け、鼻骨がバキッと折れる音が鳴り、女の悲鳴が轟く。


ねるは拳を開き、女の側頭部にあてがい、腋窩から左腕を解放させながら、横に投げ飛ばすと、女が倒れ、鼻を押さえ、両足をバタつかせ、もがく。



ねるは投げ倒した勢いそのまま、体を捻って、左足を振り上げると、呆けていた女の横顔を蹴り飛ばし、左足が着地するタイミングで踏み込み、右拳で1人を殴り倒し、続けて左拳で2人目を吹き飛ばし、3人目となる女の襟を両手で掴み、引き寄せながら左膝を叩き込み、地面に倒す。



ねるが頭から絶え間なく流れてくる血を手で拭う。掌にべったりと付着している血を見て、体を震わせ、唇を鋭角に吊り上げ、笑う。その顔は正に“狂戦士”そのもので、女達は震え上がる。



角材でねるを傷つけ、この戦いの主導権を握ったと思っていた。けど、流れが変わったのは一瞬だけで、すぐにねるが主導権を奪い取った。


梨加はその戦いぶりに言葉を失っていた。
助けられた時とは戦い方が少し違っているように見える。あの時の喧嘩は本当にアクション映画のワンシーンのようで、目を奪われたが、コレは違った。


鮮血が舞い散り、どこまでも暴力的に相手を叩き潰す。正に喧嘩、リアルファイトだ。


数では女達が勝っているのに、女達の動きが鈍くなっている。ねるの体から漂う狂気が女達の体を縛り付け、鈍らせていた。ねるはその機会を見逃さず、彼女の狂気の牙が女達を貪る。


翻る暗緑のスカジャン。飛び散る鮮血。
崩れ落ちていく女達。呻き、怒号。耳朶を打つ生々しい喧嘩の声に梨加はある言葉を思い出した。


『梨加。ラッパッパは最強なんだぜ?どんな相手だろうと勝っちまう』



ねるの喧嘩を見て、ラッパッパは本当に“最強”なんだと思う。尚更自分のような弱い存在が求めてはいけない気持ちが強くなる。それでも望んでしまう。自分も、ラッパッパに入りたいと。梨加は口元から手を下ろし、両手を握り、戦いの行方を見守る。



女の拳が腹部に叩き付けられ、胃液が込み上げてくるのを感じつつ、追撃で肩から突っ込まれ、体が吹き飛びそうになるが、何とか堪え、左膝を打ち上げ、女の顔面を膝頭で押し潰し、手が緩んだ所で、脇に手を当て、横に投げ倒す。



「ハア……ハア……」



流石のねると言えど30人以上の女達の戦うのは厳しいモノがあった。それでも10人以上は地面に倒しており、十二分に戦えている。女達もねるの強さにどうしたら良いのか分からず、顔から戦意が抜けていく。


この戦いの目的は梨加の救出だ。女達をどれだけ倒しても意味がない。梨加を救出しないととねるが口内に溜まっている血を吐き捨て、前に出た時だった。



「イヤっ!!!」



梨加の悲鳴が耳朶を打ったのは。ねるが目を凝らすと、リーダーの女が梨加を引き寄せ、背後から首元にナイフを押し当てていた。



「そこまでだ長濱〜手を出してみろ、コイツで抉るぜ?」


女が双眸を血走らせ、笑みを浮かべながらそう言った。ねるは顔を歪めた。彼女の体内に流れていたドス黒い感情が少し薄まる。何をしているんだと、己を叱りたくなる。


救出しに来ているのに、その対象者が人質にとられてどうするとねるは唇を噛む。抵抗すれば梨加の首を凶刃が襲う。


ねるの狂気と奮戦ぶりに戦意を失いかけていた女達が戦意を取り戻し、ねるを囲い、その内の1人がねるを羽交い締めにしようとする。ねるは抵抗したくても出来ないので、それを受け入れ、鋭い目でリーダーの女を睨み付ける。



「おー怖いなぁ。お前は少し調子に乗りすぎたな?やっちまえ!!!」



女が吠えた次の瞬間、全身を突き抜けていく鈍い衝撃の数々。視界が一瞬にして深紅に染まり、赤いカーテンがかかる。そのカーテンに皹が入り、それが少しずつ広がっていき、脳裏で割れる音がしたと思えば視界は霞んでいた。



「もうやめてっ!!!」



「うるせえ、殺すぞ?」



梨加が瞳に涙を滲ませて叫ぶも、ナイフの刃が首に突きつけられ、唇を噛んだ。滲んでいた涙が頰を伝い、自分の弱さ、不甲斐なさを憎んだ。どうして、どうして私はと内心で己を罵り、殴り、蹴られるねるをただ見ている事しか出来なかった。



その時、1人の少女が入ってくる。



「ねる……梨加……」



揺れるショートヘアーの黒髪。彼女の意思の強さを表すように双眸は輝いている。
ラッパッパ部長の平手友梨奈だ。


平手は倉庫内に入ると、まず状況を把握しようとする。10人以上の女達が倒れ、普段ねるが身につけている指輪とネックレスが転がっており、彼女が狂気を解放した事を情報として吸い上げ、そのねるが囲まれ、羽交い締めにされ、梨加が捕まり、ナイフを突きつけられているのを見た時、平手の心臓がドクンと大きく脈打った。




『やあ、よく来たね平手ちゃん。でも、遅かったよ』




「ハア……ハア……」



呼吸が荒くなり、体の中をドス黒い何かが駆け巡っていく。心臓は激しく律動を刻み、額から冷や汗が流れ、そのドス黒い何かは体内にあった怒りの気持ちを急速に冷やしていく。


脳裏に蘇る忌まわしき記憶。机に括り付けられ、ぐったりと頭を垂れる“親友”とその隣で狂気を放っている憎き女。その“親友”の姿と怯える梨加の姿が重なり、黒い感情が平手の中で叫び、瞬く間に平手を支配した。



「“ーー”」



平手が何かを呟くも、余りにも小さい声に誰も聞き取る事は出来なかった。ただそこに立っているのはいつもの平手ではなかった。




「……てち?」



背後で急速に大きくなっている士気を感じ取り、ねるが呟く。しかしその士気は酷く冷たかった。平手の士気にしては随分と違和感がある。平手の士気は瞳と連動しているのかと疑いたくなる程、眩しいものだ。
けれど、羽交い締めにされている状況では確認のしようがない。



「オイ、動くなっ!!!」



女が叫んだ。すると、平手の体が射出された弾丸のように弾け、ねるを取り囲っていた女達へ肉薄し、一瞬にして女達の体が四方へ弾け飛んだ。ねるも、梨加も、女も、何が起きたのか分からない。



「て……」



ねるが声をかけようとすると、平手がこちらを見た。その目を見た瞬間、ねるの体内にあった狂気が霧散し、正気に戻る。



「てち?」



名前を呼ぶ。平手の目は自分を映しているが、まるで自分になど興味がないような冷めた目をしている。それだけではなく、双眸に一切の感情がない。まるでロボットのように無機質で、どころまでも真っ暗な瞳だ。平手のこんな目を見るのは初めてだ。
いつだって平手は瞳に強い光を宿している。けれど今の平手の瞳にあるのは、その光すら飲み込んでしまう程の“闇”だ。



「てち……」



もう一度名前を呼ぶと、平手が右手で顔を覆った。



「ねる?」


「てち、良かった……」


「コレは?ねるがやったの?」



「え?」



平手が辺りを見回し、目を丸くしながら尋ねてくる。覚えてない?ねるが何て言おうか迷う。正直あの姿については何て言ったら良いのか分からず、考えてしまう。




「オイ、コイツが死……いてっ!!!」



女が声を張り上げ、何か言おうとするが、話の方に集中力が向いてしまい、梨加はその隙に女の腕に噛み付き、女は鋭い痛みに思わず手を離してしまう。その瞬間梨加が走る。



ーーもう、嫌だよ。強くなりたいーー



その瞳に決意の炎が再燃する。



「梨加ちゃんっ!!!」



ねるが激痛迸る体に鞭を打って、駆け出す。梨加はバランスを崩しながらも必死に向かってくる。そして躓き、倒れかけた梨加を間一髪で受け止めるねる。



「もう、大丈夫だよ」



優しい声音でそう言って、梨加を力強く抱き締めると、梨加が瞳から大粒の涙を零しながらごめんなさいと謝る。



「クソがっ!!!」



女が顔を真っ赤にして、叫ぶ。すると平手の体が揺れ、女との間合いを刹那の間でゼロにして、瞳に力強い光と、怒りの炎を携え、右腕を引き絞る。




「……お前、私の“仲間”に何をしたっ!!!」




その咆哮が倉庫内に轟き、放たれた右拳が大気を破砕しながい突き進み、女のこめかみを打ち抜くと、女の体が後方に吹き飛び、地面を勢いよく転がっていく。





「“仲間”……」



ねるに抱かれている梨加が呟く。平手が拳を引き戻すと、踵を返して、2人の所に歩いてくる。



「梨加……」



平手が名前を呼ぶと、ねるが抱擁を解いた。梨加がゆっくりと体を平手へと向ける。初めて平手と向き合う。平手が瞳に纏う光は梨加の中にある負の気持ちを消していく。



「梨加、ラッパッパに入らないか?」



「え?」







続く。


次回、ぺーちゃん編最終回。



次回予告。
平手からの誘い。梨加の出す答えとは。





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