マジすか学園episodeof欅坂 第52話 | 黒揚羽のAKB小説&マジすか学園小説ブログ

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マジすか学園の二次創作を書いています。マジすか学園を好きな方、又同じく二次創作を書いている人良かったら読んでください。






「……」



何て静かなのだろう。
どこかで鳴く虫の声が聞こえてくる。園内には押し潰されそうな程、重苦しい空気が流れていた。


ベンチで意識を失っている理佐が寝かされており、その左隣りのベンチに菅井と土生が腰をかけ、右隣りのベンチに平手が座っているのだが、誰も口を開かない。



結局今までのは何だったのだろうと菅井が考える。元々はねるが平手に恋をした事から始まり、理佐への牽制、疾風愚連隊及び辻風連合會潰し、そして今日の出来事。


随分と引っ掻き回され、終わりがああではどこか後味が悪い。ねるが平手達の前に姿を見せない、それは終わりとして良いと思う。だが、何とも言えない感情が胸中に流れている。


これで良かったのかと平手を見る。平手は死んだ魚のような目で前を見ていた。その横顔を見ているだけで、胸が痛くなる。
ここ1週間で見てきた顔より酷く、それはねるを誰かと重ね見ている事も一因としてはあるだろう。


声をかけたいが、何と声をかければ良いのか分からない。それに、声をかけたとしても何と言えば良いのか分からない。


こういう時理佐ならと彼女に目をやる。
理佐はしっかりしている。常に冷静に物事を見て、考え、動いている。


平手の事、ラッパッパの事、自チームのこと、葵のこと、それら全てをちゃんと見て、考えている。とても同い年には見えない。


理佐なら平手に声をかけ、何か言うのだろう。自分にはそれが出来ない。菅井はロザリオを握り、唇を噛む。


四天王として、平手を支える立場にありながら、それを全う出来ず、剰え2人に迷惑をかけた。義母の誇りも守り抜く事が出来ず、何が四天王だと、内心で自分を罵る菅井。すると、土生が肩に手を乗せ、首を横に振る。


元はと言えば自分がノコノコと罠に引っかからなければ、こうはなっていない。土生も負い目を感じているのだ。


「瑞……」


「姐さんっ!!!」



菅井が土生に声をかけようとした時、その声を遮り、重々しい空気をぶち破るような声が響き渡る。全員の視線がそこに集中する。


黒髪のツインテールに、首から桜色のヘッドフォンを下げ、中学校のブラウスを着用し、腰にショッキングピンクのカーディガンを巻いている。


童顔で、小柄、これで土生と同じ中学3年生なのだから世の中は広い。どこからどう見ても小学生だ。



「姐さん……」



原田葵が呟き、園内に入ってくる。ベンチで横たわる理佐を見るなり、眼光鋭く辺りを見て、土生が視界に入ると、


「お前がやったのか?」


土生に掴みかかる。見た目は小学生な葵だが、理佐の舎弟にして、渋谷最大のギャルサーPink Tiaraの副総長だ。スイッチが入ればヤンキーになる。


「いや、私はやってませんよ」


「嘘つけ、お前以外に誰がいるんだよ」


葵は土生が菅井の舎弟である事を知らない。そんな葵に問いたい、何故土生がやったと思うのかと。恐らく葵が知らない人間がこの中で土生で、背が高く、大人っぽく、そこに居るからだろう。


仮にそう思っていたとしたら葵は馬鹿である。理佐をやるような者が、菅井の横に大人しく座っている筈がないからだ。



「……うるさいよ、葵」



「姐さんっ!!!」



理佐が目を覚ますのと、土生の胸倉から手を離し、葵は弾かれたように理佐の元に向かう。理佐がいたたたと顔を顰めながら上体を起こす。


「……土生にやられた訳じゃないよ。ってか何でここに居るの?」


「姐さんが黙っていなくなるから、皆に聞いたんです。そしたらここにいるって」


嘘が下手だなと理佐は思う。葵は基本的に嘘がつけない。今だって、理佐はセゾン公園に行くとは誰にも言っていない。


きっと、街中を探し回ったのだろう。
その証拠に葵は大量の汗をかいている。


「……葵のクセに生意気言うな」


指で葵の額を弾くと、葵がむぅ〜と唸る。


「そんな事より早く戻りましょ?これじゃ入院期間が伸びちゃいますって」


「はいはい」



葵に促され、うるさいねと軽口を叩きながら理佐が立ち上がる。土生が姐さんもと言うと、菅井も立ち上がる。



「……気をつけてな」


平手がか細い声でそう言った時、理佐が振り返り、平手の方に向かっていき、その頰を平手で叩いた。菅井、土生、葵が目を丸くする。平手も目を見張っている。



「……そんな顔して人の心配している場合?あんたがやらなきゃいけないのは私達の心配じゃなくて、あの娘の事でしょ?あの娘は貴女を待ってるよ。


もしかして、私達を気にしてる?それも大切だと思うけど、ラッパッパの部長はてち、あんたなんだよ。あんたしかいないんだよ。やりたいようにやりなよ。私達は勝手についていく。


だって、あんたと見たいんだよ、“テッペン”。だから上手く言えないけど……あの娘の事は好きにしたらいいよ」



理佐が平手の両肩を掴み、真っ直ぐ平手の目を見たままそう言うと、フッと笑い、数回肩を叩いて、葵と共に公園から出ていく。


「……なら、私からも。上手くは言えませんが、てちさん私にはよく分かりません。
貴女が何を抱えているのか、長濱の事も。
けれど私は貴女を信じています。部長は貴女なんです。貴女だから私はラッパッパにいるんです。どんな決断をしようと、ついていきます。


貴女の“夢の終わり”まで」



次に菅井がごちゃごちゃの思考の中で何とか言葉を纏め、口にすると、土生に肩を借りて足早に公園から出ていく。


平手は胸を押さえる。自分は1人ではない。仲間がいる。その事が嬉しい。彼女達の言葉に、平手は涙を流す。



「ほら葵、謝って」


「……ごめんなさい」


「別に気にしてませんよ」


「良い娘、ウチのと交換しない?」


「断る。うるさいのは嫌いだ」


「……」


「何してんの?行くよ?葵」


「は、はい」






「……うぅ……」



平手は口元を押さえ、ボロボロと涙を零す。頰を伝って、地面に落ちる涙が土の上に模様を作っていく。


『ーーこれが“テッペン”からの景色か〜凄いねえ、てち』


『テッペンって、山じゃん』


『そう言う事言わない。いつか絶対に見るんだ。本物のテッペンからの景色を』



『じゃあ、一緒に見る?』


『そうだね、一緒に見よう』





「……私はどうしたい?どうすれば良かったの……」



夜の公園に1人の少女の涙が溢れた。
夜空に浮かぶ星は何も言わず、黙って平手を見ていた。彼女の涙が止まるまでーー。






続く。


葵ちゃんってこの小説だと小学生扱いを受けてますが、綺麗になりましたよね〜もう小学生じゃない(笑)


まあ、この小説では最後まで小学生イジリされるんでしょうけど……。


さてさて、ねるちゃん編も残り3話です。
ラストまで駆け足でいきましょう。


次回、夜が明け、新しい1日が始まる。
その時、ねるは1つの決断を下し、平手も決断する。


お楽しみに。





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