こんばんは。都議の栗下です。

 

 

長らく続きが書けなかったゲーム規制の歴史シリーズですが、今日は現在進行形のポリコレと家庭用ゲームにおける性表現の問題について書きたいと思います。

 

2017年にメディアでも大きく取り上げられた#MeToo運動について皆さん覚えておられるでしょうか。「セクハラや性的虐待を見て見ぬ振りをするのは終わり」するという趣旨で、多くのハリウッドスターも賛同しセクハラ事案の告発など、SNS等を通じて運動は日本にも伝わり、日本でも伊藤詩織氏が性暴力被害を告発する等といった時期とも重なりました。

 

今回は、その#MeToo運動の影響や、ゲーム動画配信が一般的となり国同士の垣根が無くなったこともあり、ソニーが主力ハードとしていたPS4において、独自の性表現規制を施した問題について取り上げます。

 

 

時は2018年秋、#MeToo運動が起こった翌年のことです。ゲーム中での女性描写などに対する規制をソニーが独自に行い始めているのでは、ということがネット上で指摘されました。この時期に発売されたゲーム「ノラと皇女と野良猫ハート」のPS4版において、性表現の含まれるCGについてNintedo Switch版などにはない、独自の修正が施されており、ファンからは「レーティングはCero:D(17歳以上)なのにおかしい」などの声が寄せられました。

 

 

引用元:「ノラと皇女と野良猫ハート」公式サイトより

 

https://togetter.com/li/1281069

 

 

2019年4月にはWALL STREET JOURNAL(以下WSJ)が、ソニーは近年の欧米で広まるポリコレの影響を受けて、独自の性表現規制を行なっていると報じ拡散、ソニーがネットメディアを通じて反論するという事態に発展しました。

 

https://jp.wsj.com/articles/SB10165846666491863960504585247494034261162

 

 

反論の中でソニーは独自の規制ガイドライン策定を行なっていることについては否定したものの、個別の作品について幹部が判断を下す可能性について示唆したため問題は更に大きくなりました。

 

 

2019年8月1日に発売されたオメガラビリンスシリーズの最新作、オメガラビリンス・ライフはPS4版にのみ性表現規制が入れられ、メーカーはSwitch版を「人の目は気にしない、達観バージョン!」PS4版を「人前で遊べる実家バージョン!」として売り出すこととなりました。このゲームについて人前や実家で遊ぶことはほとんど無いような気がしますし、メーカーによる苦肉の策であったように思われます。

 

 引用元:「オメガラビリンス」ツイッター公式アカウントより

 

 

実は、2016年4月よりプレイステーションのハード・ソフト事業を所掌するソニー・インタラクティブ・エンターテイメント(SIE)の本社機能はアメリカのカルフォルニアに移転しており、2017年から始まったポリコレの影響をより大きく受けることになったのではと言われています。

これらの規制は、創作活動の萎縮効果はもとより、ガイドラインに明記されているわけでは無いので、開発が進んだ後に問題が起こる。また、コアユーザーはこれらの表現規制に対してかなり敏感であるため売り上げにも大きな影響を及ぼすという経済的なダメージの問題もあり、ソフトウェアメーカーにとって大きな脅威としてみなされています。

 

 

Ceroレーティングには、18歳以上しか購入することのできないZ区分がありますが、流通などにも大幅な制約が課されるためにこの区分での発売をされるゲームはごく一握りです。ですので、メーカーはなんとかその一歩手前のCero:D基準に準拠して開発を行なっているという背景もあります。そこにソニーが独自基準、しかもはっきりしない基準を課すというのは相応しいとは思えません。

 

 

上述の事案がいわゆる炎上騒ぎになったことなどを受け、ソニーも性表現規制を軽々に行うことには抵抗を感じているようですが、この問題はPS5が発売された現在も続く、現在進行形の問題です。大手のハードウェアメーカーは実質的に独自の表現規制を行うことができる力さえも持っているということを理解しながら、ユーザーもそういった事案があった時にはしっかりリアクションしていくことが「なんとなく規制」の流れを作らないことに繋がる今日この頃です。